第1話 錬金術と少年

首都 クラーク。

その中にひときわ目立つ工房がある。ルーン工房。人はここを何でも屋と呼ぶ。

ここには、一人の老人と弟子がいる。

弟子の名はリンファイ。数年前、弟子入りしてからは、家事を仕事の主とし過ごしてきた。

老人の名前はクラフト。工房を数年前までは一人で切り盛りしてきたが、リンファイが弟子入りしてからは、寝ること 食べること 散歩をすること そして少しの仕事をすることが彼の日常だ。


「あーもう!我慢ならねえ。じじいの世話はもう勘弁だ!」


リンは大声をあげて嘆く。


「うるせえ。くそガキ!!それよりこのランプだ。なんだこれは!」


そこには、先日クラフトが依頼を受けたランプがあった。依頼をしたのは隣町にあるパン屋の老夫婦で気のいい人たちだ。

ここ数日、急に夜が更けるが早くなりランプが必要になったのだ。

そこで、散歩で隣町まで来ていたクラフトが、”うちに売れ残りのランプがあるから”とたくさんのパンと引き換えに受けてきた依頼だ。

そこには、きれいな金と鳥の装飾がきらめくランプがある。


「これは、じじいが仕事をしないから俺がやったんだろうが。」

「いいか、よく見ろ。このランプの鳥は何から作った。」

「ルイ材を使って合成率70パーセントの金を作ってそれを鳥に加工したんだ。」

「合成するときに何を接着材にした。」

「え…それは、今、隣国のロストア国から貿易船が来ていて安く手に入ったソトノ葉を…」


そこでクラフトがため息をつく。


「このランプを使うのはだれだ。老人だろう。ソトノ葉は外来種の葉だ。それが含まれていると長年、ここに住んでいる人に対してアレルギー反応が出るかもしれない。」

「そうはいったって…。ここいらで手に入るのは高級な接着材だし…」

リンは何か言いたそうにクラフトを見る。クラフトは落ち着いた声で

「リン、何度も言うが科学の基本はヒトが便利になるための、あくまでのツールだ。それで商売をさせてもらっているなら儲けさせてもらおうなんて考えるんじゃねえ。しかも、俺たちゃ、錬金術をありがたいことに使わせてもらっている。そのことを忘れるな。」


そういうと、金で装飾された部分を暖炉の火にあてて溶かしていく。じゅうっ…という音とともに紫色の煙とわずかな黄緑色の煙が立った。

それをみてリンはさらにぐっと唇をかみしめる。


「ほら、言わんこっちゃない。材料がかみ合ったときは素材を火にくべたとき、単色の煙を吐くのに、お前さんのは色が混じり切れていない。」


クラフトはこちらを見ずに話す。リンは耐えられなくなったのか、上着を持って部屋をでた。

クラフトは気づかずに装飾部分を火にくべ続ける。


「しかし、お前は、動物の形にするのはうまいなあ…。ってあれ?」


クラフトは振り返ったが、そこには誰もいなかった。

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