第19話 理由(前)
キーンコーンカーンコーン
4限目のチャイムが鳴り、授業の終わりをつげる。先生が「今日はここまで」と言うと一気にクラスが騒がしくなる。
(昼休みがきてしまった…)
心の中で呟きながら、授業の片付けをしていた。
立花「白井さん」
聞いたことのある声が廊下からする。
私が恐れていた時間がきてしまった。
しんじ「立花がお前のこと呼ぶとか珍しいな」
後ろの席のしんじくんが私が私に声をかける。なおとくんのことがなければ絶対に関わらないと思っていた人だ。
ゆうか「あかり、今日は一緒に食べれなさそう?」
あかり「あ…多分委員会のことについてだと思うから、先に食べてて!あとから行く」
ゆうか「わかった!」
ゆうかと話し終わった後、なおとくんと目が合ったがわかりやすいほどに目を逸らしてしまった。彼とは今は話したくない。
あかり「お待たせ」
立花「じゃあ、行きましょうか」
彼女はくるっとまわり行き先も言わず、歩き出す。どこへ向かっているのかと思ったら、視聴覚室に着いた。
立花「委員会のことについてやりたいことがあるので、という理由で昼休みはまるまるお借りしましたの。でも、手短に話しますわね。お互いお昼もまだですし」
あかり「はい」
立花「あまり話を濁すのもあれだから、単刀直入にいうと、私、なおとくんのことお慕いしてますの」
あかり「はい…」
私はただ返事をすることしかできなかった。だけど、ずっと思ってたことだが、いざ言葉にだされるときつい。辛くて苦しい。
立花「ここからが本題になるのだけど、昨日のアレ、みてたよね?」
ドキッとする。
立花「なおとくんが慌てて私のこと突き飛ばして、あなたが走ってる後ろ姿を追いかけていったの」
あかり「え」
立花「びっくりしちゃった。私は1人置いてけぼりよ。だから、今日は謝罪をしようと思って」
私はなおとくんが追いかけてくれたことに驚いたが、同時に立花さんに腹が立った。
あかり「ふざけないで。謝罪って…。それで許すわけないじゃん。あなたは私の彼氏を横取りしようとしたの。それに今日だって一緒に帰ろうと誘ったって」
立花「ちゃんと謝ってほしいって言われたの。今後一切関わることもやめてほしいって」
あかり「え」
立花「なおとくんのことは諦めたくないわ。でも、あなたのことを深く傷つけてしまったから、ちゃんと謝ってほしいし、もう関わらないでって。そこまでいわれちゃったから。私も昨日のことはとても反省してます。悔しかったの。だからどうしてもなおとくんを振り向かせたかったけど、もう無理ね。白井さん委員が終わるまでは話すこともあると思うけど、それが終わったら話しかけるのもやめるわ。本当にごめんなさい」
立花さんは私に頭をさげて謝っている。とても申し訳なさそうにして。さっきの怒りがなくなってしまった私はどうしていいかわからず、ただ同級生にこのまま頭をさげられた状態も嫌なので立花さんの肩をおこす。
あかり「もう、いいから。わかったから。立花さんの気持ちもわかるし。私も体育祭が終わったら関わる気はないと思う。だからそれまではよろしくね」
立花「はい、本当にごめんなさい」
あかり「うん。じゃあ教室戻るね」
嫌な予感がしたが、全然そういう訳でもなくただ謝罪されただけだった。なおとくんが関わらないでというほどだから、よっぽど怒ったのだろう。でも、このまま元の関係に戻れるかはまた別だ。どうしようか考えながら私は教室へ戻る。
島谷「流石にキスはやばいだろ」
立花「自分でも昨日のことはやりすぎたと思ってるわよ。でも、なおとくん、白井さんの話ばかりするんだもの。悔しいじゃない」
島谷「お前がうまくいけば、俺、白井さん狙ってたのに」
立花「無理よ。だって、あんなに怒ったなおとくんみたことないもの」
教室に戻るとゆうかとしんじくんとなおとくんが話しながらお昼を食べていた。なおとくんは少し元気がなさそうにみえる。きっと私が原因だ。
ゆうかが私に気づき、席を立つとぎゅっと抱きしめてきた。いつも飛びついてくるのに珍しいなと思っていると、しんじくんと目が合い私のことを心配してたんだとわかった。
あかり「ゆうか」
ゆうか「なに?」
あかり「なおとくんと今日は二人で食べてもいい?」
ゆうか「もちろん!」
なおと「え」
私とゆうかの会話を聞いていたなおとくんが驚いた顔で私の顔をみる。
あかり「よし、じゃあお弁当箱持って移動しようか」
なおと「え、まって、ちょっと」
なおとくんの腕を掴み、私は教室をでる。
ゆうか「いってらっしゃーい!」
ゆうかとしんじくんは手を見送ってくれた。
なおと「あかり、どこに」
あかり「ここまでくればわかるでしょ?」
なおと「あ」
そこは私たちが彼氏と彼女になった場所。
あかり「話そっか。いろいろ、あの日の事」
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