第17話 崩れた幸せ
あかり「誰かいませんか?」
誰も手を挙げることなく、私から目を逸らすクラスメイト達。
時は遡ること10分前
私は委員会で配られたプリントのクラスで決めないといけないことを、みんなに説明した。
ただ、みんな受験生でもあるのでめんどくさい事はやりたくないのか説明してる時点でほとんどやる気ゼロという感じだった。
その決めないという事というのは、クラスで1人団長を決めないといけないのだ。
私達の学校では組ごとに競うのだ。
だから、私達3年2組は2年2組、1年2組とも同じ色になる。団長をなぜめんどくさがるかというと、まとめたり前にでたりするのがめんどくさいという人が多いのだ。
しかも、色ごとの団体競技では種目長もやらないといけない。
意外とやることがいっぱいある種目長。私ならやらない。ただ、実行委員になった限りは嫌でも決めなければならない。
あかり「めんどくさいとか思うかもしれませんが、どうしてもクラスで1人決めないといけないんです。どなたかお願いします!」
頭を下げてお願いするが、みんなは私から目を逸らしたまま。
たまたま目が合ったゆうかは「がんばれ」と口パクで言うだけ。
「はぁ…」とため息が出ようとした時だ。
1つ手が挙がる。見るとなおとくんがあげてる。
あかり「なおとくんやってくれるの?」
なおと「あ、僕は学級委員の仕事があるからできないんだ」
あかり「え、じゃあなんで?」
なおと「推薦とかってあり?」
あかり「え、あ、もちろん!それで誰を推薦するの?」
なおと「しんじとかどうかな?」
と、なおとくんがいうとみんなの目線はしんじくんに。当の本人は夢の中だった。
あかり「えっと…理由とかあれば…」
なおと「こいついつも寝てばかりだし、たまにはこういうのやらせてみるのもいいんじゃないかなって」
みんなはざわざわしだす。
「まあいいんじゃない?」という声もあれば「平気かな?」と不安の声もある。
あかり「とりあえず寝ている本人を放ったらかしで勝手に決めることはできないし、一応聞いてから…」
ゆうか「でもしんじだったら断るんじゃない?みんなが嫌がることなんだし、しんじだって嫌でしょうよ。それに決めるって言ったのに寝ているやつが悪い。よって、もう仕方ないよ。一応多数決だけとって決めたら?」
あかり「あ、でも…」
私は流石にまずいんじゃないかと思ったが、このままだと一切決まらないと思い、渋々多数決を取ることにした。
あかり「えっと、それじゃあうちのクラスの団長が木村しんじくんでいい人手をあげてください」
クラスの大半の人が手を挙げた。
あかり「じゃあ団長は木村しんじくんに決定しました。帰りに残っていただいてありがとうございました。解散で大丈夫です」
と言うと、皆は席を立ち始め各々部活や帰る準備を始めた。
そして数分後眠りから目覚めたしんじくんは黒板をみて唖然としていた。
しんじ「は?どういうこと?」
ゆうか「だから、しんじがうちのクラスの団長!」
しんじ「だからどうしてそうなったんだよ!!」
なおと「僕が推薦したんだよ、皆は賛成してくれたし」
しんじくんはサッと振り向き、私を見る。
ちょっと怖い目をしてるのは気のせいだろうか?
しんじ「白井、最終的にまとめるのってお前の役目だよな?」
あかり「ま、まあそうだけど…。私は悪いなって思ったけど、あの時はもうしょうがなかったの!しんじくんお願い!団長やって!もう先生に決まりましたって言っちゃったの!」
しんじ「はぁ…」
しんじくんはため息をつきながら頭をかく。
しんじ「わかったよ、やってやるよ!俺がこのクラスを優勝に導いてやる!」
ゆうか「おぉ!しんじかっこいい!」
しんじ「まじで?」
ゆうか「じゃあ、私部活だから!ばいばい!」
しんじ「ちょっと、おい!ゆうか!」
ゆうかは教室から逃げる様に去り、その後ろをしんじくんが追いかけて行った。
あかり「私達も帰ろっか?」
なおと「そうだね」
机に置いた鞄を取り、教室を出ようとした時だ。
立花さん「あら、なおとくんに白井さん!」
振り返ると立花さんと島谷くんがいる。
昨日のことを思い出し、苦笑いをしてしまう。
立花さん「なおとくん、お話したい事があるから、一緒に帰らない?」
なおと「え、えっと…」
なおとくんは困った顔で私の顔をみる。
私は笑を浮かべ「大丈夫だよ」と伝えると、なおとくんは立花さんと一緒に帰ってしまった。
島谷「いいの?」
あかり「え?」
島谷「あやかは田村のこと好きだよ」
あかり「うん、なんとなくわかってた」
島谷「今日、告白しようと思ってると思うよ。1度振られてるのによくやるよね。田村と付き合ってるなら止める権利はあったと思うよ?」
あかり「うん、私も今なんか後悔してる。一緒に帰らせちゃったこと。でも、私はなおとくんを信じてるから」
そう、私は彼を信じてる。
もう恋をしないと決めた私をずっとずっと好きでいてくれて、笑ってくれていた。
きっといっぱい傷つけたのにそれでも傍にいてくれた。だから、私は彼を信じる。信じてる。
あかり「私も帰るね、島谷くんは部活だよね?」
島谷「うん」
あかり「じゃあ、またね!」
私は島谷くんとわかれ、家路につく。
島谷「大丈夫、かな…。」
その島谷くんの声は私には聞こえなかった。
立花さん「一緒に帰るのって結構久しぶりよね?」
なおと「確かに、去年の秋らへんぶりだよね」
立花さん「何度かお誘いしようとは思ってたけど、白井さんがいらしたから悪いかなって思って」
なおと「あ、いや、あかりはそういうのあんまり気にしないみたいだから平気だと思うよ」
立花さん「気にしない?」
なおと「嫌だったら、止めると思うし」
立花さん「あら、もしかして白井さんと付き合ってるの?」
なおと「ま、まあね、先日ぐらいから」
立花さん「そうだったの?そしたら今日は悪い事してしまったかしら?」
なおと「いや、あかりがいいよって言ってたし大丈夫だよ」
立花さん「そう、白井さんって私も委員会でお話させて頂いてるけど、とても優しい方よね」
なおと「うん、僕もそう思うよ」
立花さん「それじゃあきっと優しいから私がなおとくんのことお慕いしてると言っても許してくれるわよね?」
なおと「え」
立花さん「あの時からまだお気持ちは変わってないです。田村なおとくん、私、あなたのことをお慕いしてますの」
なおと「え、た、立花さん」
私は彼の事を信じてる。いや、もうきっと信じてたになってしまうかもしれない。
先に帰っていたはずの2人にいつの間にか私は追いついていた。そして、私は見てしまった。
立花さんとなおとくんがキスをしてるところを。幸せは一瞬にして砕けた。
私はその場を逃げる様に去った。一瞬だけ、ほんの一瞬だけなおとくんと目があった気がしたのは気のせいだろうか?
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