第16話 幸せ
放課後
体育祭実行委員の集まりがあるため私は残っていた。
集合場所に行くと、1組の実行委員の島谷くんと3組の実行委員の立花さんが先に座っていた。立花さんが私に気づくと席を立ち、私に話しかける。
立花さん「白井さん!クラスの順番で座るみたいで、白井さんの席はここよ」
と、立花さんが案内してくれた席は2人の間にぽつんと空いてる席だった。
(なんか緊張するな…)
先生「よし、全員いるか?第1回体育祭実行委員会を始める。今日は体育祭実行委員長と副委員長を決めてもらう。委員長は3年から1名、副委員長は3年から1名、2年から1名だ」
実行委員長…。
そこまでは考えていなかったので、なる気はなかった。ふと、隣に座っていた島谷くんが手をあげる。
島谷「俺、委員長やります」
先生「おお、そうか。じゃあ頼むぞ」
島谷「はい、あの、副委員長の3年俺が選んでもいいですか?」
先生「推薦したいやつがいるならいいぞ、他のやつらが納得するならな」
島谷「ありがとうございます。そしたら、白井さんどうかな?」
皆の目線が私にむかう。
島谷くんはニコッと笑いながら私をみてくる。
あかり「いや、私委員やるのとか初めてだし、副委員長とかそんな大役…」
立花さん「いいんじゃないかしら?」
あかり「え?」
立花さん「白井さんが副委員長、私は賛成ですよ。白井さんとてもしっかりしてますし、挑戦するのもいいことかと。皆さんも賛成ですよね?」
他の委員の子達は少し戸惑いながらも頷いていた。
立花さん「それじゃあ、決まりね!」
あかり「あ、はい。よろしくお願いします」
半ば強制的になった感じもあるが、立花さんの言うとおり挑戦するのもいいことだと思うので引き受けることにした。
2年の副委員長も島谷くんが選び、これからの事を話し合いそのまま解散となった。
立花さん「白井さん」
あかり「はい、なんですか?」
立花さん「もしかして、嫌だったかしら?副委員長」
あかり「あ、いや、なんていうかそこまでは考えていなかったので…」
立花さん「迷惑だったならごめんなさいね」
あかり「あ、迷惑とかではないです!立花さんの言う通り挑戦するのもいいかなって思ったので」
立花さん「そう、それならよかったわ!」
島谷「白井さん」
あかり「あ、島谷くん」
島谷「今後のことでちょっと話したい事あるから少しだけいいかな?」
あかり「あ、うん」
立花さん「それじゃあ、私はお先に失礼するわね」
立花さんはひらりと手を振り教室へ戻って行った。
島谷「ごめんね、残らせちゃって」
あかり「ううん、大丈夫。それで今後の事って?」
島谷「白井さんこういうの初めてみたいだし、なんかあったら俺にいつでも相談してくれていいからってだけ伝えたくて」
あかり「あ、ありがとう。すごい嬉しいよ。助かります」
島谷「うん、それじゃあ俺らも教室戻ろっか」
あかり「うん!」
かずきくんとつばさは島谷くんのこと女の子絡みで噂が多いとか、まるで私が狙われるみたいな感じで言ってたけどとても優しいし、頼り甲斐もある。噂は所詮噂だなと思った。
2組の教室の前まで着くと、なおとくんがちょうど帰ろうと廊下にでてきた時だった。
あかり「なおとく「なおとくん!」
私の声を遮るようになおとくんの名前を呼んだのは、3組の教室からでてきた立花さんだった。
立花さん「これから帰りなの?」
なおと「そうだよ、立花さんも?」
立花さん「そうなの」
なおと「て、ことは委員会もう終わったってことか。集まりの教室って会議室だっけ?」
立花さん「うん、あ、でもりょうが白井さんに用事があったみたいでまだ残ってると思うわよ」
なおと「そっか、ありがとう!じゃあ僕」
なおとくんが行こうとした瞬間、立花さんがなおとくんの腕を掴む。
立花さん「私と一緒に今日は帰らない?」
なおと「え」
ズキッ
今日の朝と同じ、胸の奥で何かが痛んだ。
島谷「白井さん?」
あかり「あ、えっと」
島谷「教室戻らないの?」
あかり「あ、ううん、早く帰ろっか!」
私は笑いながら島谷くんに話していたが、うまく笑えてただろうか。
教室に近づくと2人私達の存在に気づく。
立花さん「あら、用事終わったの?」
島谷「大したことじゃなかったしな」
立花さん「そう」
島谷「帰るぞ」
立花さん「待って、なおとくんも一緒に帰らないってお誘いしてたの。ねぇ、どうかな?」
立花さんは私の前だというのにまだなおとくんの腕を掴んでいた。
(付き合ってることしらないし、仕方ないよね)
胸の奥がどんどん痛くなる。
嫌だなって思う気持ちが大きくなってく。
(やばい、泣いちゃうかも…)
なおと「ごめん、僕、白井さんと帰るから」
立花さん「それなら、せっかくだから4人で!」
なおと「ごめんね、今日は寄るところあるから無理なんだ。また今度ね。いこ?」
あかり「あ、うん」
私は急いで教室の中へ入り鞄を取る。
なおと「じゃあ2人共またね!」
それだけ言うと、私の腕を掴みいつもよりも少し早足で学校を出る。
さっきの胸の痛みは消え、なんだか不思議と笑浮かんでしまう。
一歩先へ歩いていた彼の歩調が少しずつゆっくりになり私のほうをみる。
なおと「なんで笑ってるの?」
あかり「え!?」
顔にでてしまってたらしい。
「恥ずかしいな」と思ったが同時に幸せでいっぱいになった。
あかり「別になんでもないよ!」
私の腕を掴んでいたいたなおとくんの手は、いつの間にか私の手を握っていた。
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