第3章

第15話 予感

なおと「まだ夢を見ているような感じがする」


私はいつもと同じくなおとくんと一緒に下校する。ただ1つ違うのは私達の距離が前よりも近いということ。

そう、私達は付き合うことになったのだ。

あれから教室に帰って、しんじくんとゆうかに告げてもなおとくんはずっとさっきの言葉を繰り返してる。その度に私は「夢じゃないよ」と言ってるが今は頭の中が混乱状態なのか私の言葉は聞こえてないようだった。

いつもと距離をつめて歩いているが、彼は恥ずかしいのか少しだけ距離をとる。そして、私がまた距離をつめると、彼はまた私から距離をとるのだ。


あかり「なんで離れるの?」

なおと「いや、だって、そんなにくっついたら嫌でしょ?」

あかり「嫌じゃないからくっついてるのに!」

なおと「いや…でも…」

あかり「昼休みの時はあんなに積極的だったのに」


そう言うとなおとくんの顔は一気に真っ赤になる。


なおと「もうやめて…!」


私が告白した時の彼と同一人物か疑うほど、昼休みの時とは大違いだ。

そうこうしているうちに私の家に着いた。


あかり「せっかくだからあがってく?」

なおと「いや、平気。今日はもうキャパオーバーっていうか…」

あかり「冗談だよ。じゃあまた明日ね」

なおと「うん、ばいばい」


私が家に入ろうとした時だ。

後ろから手を引かれる。振り返ると彼が何か言いたそうにこちらをみている。


あかり「どうしたの?」

なおと「まだ、実感とかわかないし今でも夢みたいと思うけど、ぼ、僕と付き合ってくれてありがとう」


彼は笑顔でお礼を言ってきた。


あかり「私も、ありがとう」


私も笑顔で返した。




家に入りカレンダーをみると1ヵ月後体育祭だった。


あかり「もうすぐか…」


うちの高校は行事に関しては特に力を入れてるので、体育祭も卒業生を呼んだりして派手にやる。


あかり「今年は何か委員でもやろうかな」




翌日

-8:30- 学校

先生「1ヵ月後に体育祭がある。クラスに1人体育祭実行委員を決めないといけない。誰かやりたいやついるか?」


みんなめんどくさいことはやりたくないのか、先生から一斉に顔を逸らす。


先生「はぁ…、仕方ない。田村、学級委員だしお前誰か推薦しろ」

なおと「えぇ!?」


突然の指名になおとくんはとても驚いていた。ちょうど私はやろうかと考えていたので手をあげようとした時だった。


なおと「し、白井さんとかどうですか?」


なおとくんが私を推薦してきた。

私はつい驚いてしまった。なおとくんは「ごめん」というポーズをしていたが、私は「平気」と返した。


先生「どうだ?」

あかり「私でよければ」

先生「よし、決まりだな!とりあえずこれでHRは終わりにする。白井は今日放課後集まりあるから頼むぞ」

あかり「あ、はい」


HRが終わるとなおとくんが話しかけてきた。


なおと「押し付けて本当にごめん!僕に手伝えることがあったら何でもするから!」

あかり「ちょうどやりたいなって思ってたし平気だよ!」

ゆうか「あかりがそういう系やりたいと思うの珍しいね」


ゆうかが話に割り込んできた。確かにゆうかの言う通り、1年の頃から委員会などはやってこなかったのできっとクラスの何人かの人は驚いただろう。




あかり「あ、じゃあ今日一緒に帰れないね」

なおと「あ、そうだね…。まあ僕も委員会あるから時間があえばって感じかな」


「なおと!あかり!」


廊下から聞き覚えのある声が聞こえる。

みると1組のかずきくんとつばさがいた。


なおと「かずきにつばさ!どうしたの?」

かずき「お前らが付き合ったってきいて茶化しにきたんだよ!」

なおと「そういうお前らもだろ」

つばさ「あかり!」


つばさは私の名前を呼ぶといつものゆうかのようにぎゅっと抱き着いてきた。


あかり「え、つばさ?どうしたの?」

つばさ「なんかゆうかみたいにあかりに抱きつきたくなった」

あかり「そっか。ひーちゃんとたくみくんは?」

かずき「教室で話してたぞ!お邪魔しちゃ悪いから呼ばなかったけど」

つばさ「あの2人も何だかんだくっつくのも時間の問題かもね」

かずき「なおとよりも先かなーって思ってたけどな」

なおと「そんなに前からいい感じだったの?」

かずき「まあ、付き合ってもいいだろこの2人、とは思える感じ。あ、てか、普通に要件あったんだわ」

なおと「なに?」

かずき「そっちのクラスの体育祭実行委員誰?」

あかり「私だよ」

つばさ「え、あかりなの!?」


つばさもやはり驚いた。珍しいからと言ってそんなに驚かなくてもって思ったが2人の表情が少し曇った気がした。


つばさ「かずきもしかしたらちょっとやばいんじゃない?」

かずき「ああ」

なおと「なんだよ2人とも」

かずき「俺のクラスの実行委員あいつなんだよ」


かずきくんが指をさす方向をみるとそこには立花さんと名前は知らないが学年では結構有名な男の子がいた。


つばさ「島谷っていう、女絡みで噂多いやつ。しかも可愛い子狙いだし、同じ委員になったらちょこちょこ顔合わすこと多いと思うしあかり気をつけなね」

あかり「でも立花さんと仲良さげに話してるけど」

つばさ「あー、あの2人幼馴染みだからね」

あかり「なるほど」


2人のことをみていると、立花さんが私達の方に気づき島谷くんと一緒に近寄ってくる。


立花さん「あ、なおとくん!ねぇ、2組の体育祭実行委員は誰になったの?」

なおと「え、あ、ここにいるあか、えっと白井さんだけど」


ズキッ

何かが私の奥で痛んだ。


立花さんは私の方に視線をうつすと私に近寄る。


立花さん「初めまして、白井さん。立花みかと申します。噂通り可愛らしい方ね」

あかり「え、あ、ありがとうございます。白井あかりです」

立花さん「実はね、私も3組の実行委員なの。あ、隣にいる島谷りょうも1組の実行委員なのよ。仲良くしてね」

島谷「よろしく、白井さん」

あかり「は、はい。よろしくお願いします」


2人は笑顔だけど、その笑顔に何かがありそうで私は少しだけ怖くなった。

そしてこの体育祭期間なにか悪い出来事が起きそうな、そんな予感もしたのだった。

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