第14話 告白時々カップケーキ
教室 -8:20-
いつもならこの時間にはなおとくんは席に座っているが、まだ風邪が治ってないのか彼は学校に来ていなかった。
私は早く着きすぎて彼と話すのはなんとなく嫌だったので、今日は遅めに家を出たためこの時間に着いた。
ゆうか「今日はあかり遅めだね、珍しい」
あかり「寝坊しちゃってね、ギリギリだった」
もうすぐチャイムがなる時刻になるという時に教室の扉が勢いよく開く。
みるとそこにはなおとくんがいた。
なおと「おはよ」
ゆうか「あぶなー!ギリギリセーフ!」
しんじ「風邪治ったか?」
なおと「うん!もうすっかりだよ!あかりも昨日ありがとね!」
あかり「あ、うん」
昨日のことがなかったかのようになおとくんはいつもとかわらず話しかけてきた。
その様子に私はため息をつきそうになった。
(恋愛って難しいな…。)
そう思ってるとゆうかが話しかけてきた。
ゆうか「あかり!今日家庭科調理実習だよ!」
あかり「だからそんなに元気なんだね」
しんじ「そういえば今日だったか。何作るんだ?」
ゆうか「教えないもん!」
うちの高校はなぜか男子と女子で調理実習の日にちが違う。毎回女子が先で男子が後という感じになっている。
あかり「男子は明日なんだっけ?」
しんじ「そうそう」
なおと「男女で日にち違うって珍しいよね」
ゆうか「ね!」
ゆうかがこんなにテンションが高いのは調理実習ということだけではない。作ったものをきっとしんじくんに渡そうと思ってるからだ。男女で作るものも違うためお互いが何作るかは知らない。いや、知らないというよりみんな言わない。それは、好きな人や付き合ってる人にプレゼントなんてことを考えている人が多いからだ。まあ私は「言ってもかわらないのでは?」と思っているがなおとくんのことを好きと確信した今、ちょっとわかる気がする。サプライズ感というか渡すまではお楽しみにしておきたいとは思う。
そうこうしているうちに調理実習の時間になった。
今回私たちが作るのはカップケーキ。
みんなプレゼント用にラッピングももってきている。先生が作り方などを説明して早速作業に取り掛かる。
あかり「みんな気合い入ってるね」
ゆうか「そりゃあそうでしょ!」
あかり「え?」
ゆうか「好きな人に渡すものだもん!綺麗で可愛いものあげたいじゃん!あかりも彼氏いたからわかるでしょ?」
あかり「あ…そこまで考えたことはなかったかな。実際調理実習で作ったもの1度も渡したことなかったし」
ゆうか「え、そうだったの?」
あかり「そうそう」
ゆうか「じゃあ今回は渡してみたら?」
あかり「え?誰に?」
ゆうか「なおとくん!最近いい感じだし!それともなんかあった?」
あかり「え?」
ゆうかはどうやら私の様子がちょっとおかしいことに気づいていたらしい。
あかり「恋をしないと決めたのに…。恋をやめようと思ったのに…。また、好きになっちゃったの。恋しちゃったの」
そう言いゆうかをみると、手を止めニヤニヤ笑っている。
あかり「ちょっと手は動かして!」
ゆうか「はいはい!いやー、でもあかりからこういう話は聞いたことなかったからなんか新鮮でいいなって!でも、ぷぷ」
あかり「ちょっとゆうか!笑うなんてひどい!」
ゆうか「可愛いなって思ってね!なおとくんいいなー!こんな可愛い彼女もてるなんて!」
「彼女」という言葉に反応してしまう。
もし、なおとくんと恋人関係になったら私は彼の「彼女」になる。考えただけで顔が熱くなる。
ゆうか「なになに、もしかして今ちょっと考えちゃった?」
あかり「もう!これ以上は怒るよ!」
ゆうか「ごめんって!いっその事告白したら?カップケーキ渡す時」
あかり「え!?いやそれは無理」
ゆうか「だって今なんか気まずいんでしょ?」
あかり「なんでそれを…」
いつのまにかなおとくんとの関係が気まずくなってるということまで気づかれていた。
恋をしてること以外にこれまで気づかれていたとは…。
ゆうか「みてればわかるよ。あかりちょっと変だなってのはすぐわかったけど、なおとくんとの接し方もなんかおかしかったからね。まあなおとくんもちょっとおかしかったけど」
あかり「なおとくんもおかしかった?」
ゆうか「あかりに対してはなんかね、無理してるって感じた。昨日何があったの?なおとくんの家に行ってその時、気まずくなるようなこと、あったんでしょ?」
ゆうかは珍しく真剣な表情で私に問いかける。作業の手を一度止め、昨日のことを思いだす。それからゆうかに昨日のことその前のこと全部話した。
ゆうか「なるほどね…。あかりはちょっと奥手になりすぎてない?」
あかり「そうなのかな…?」
ゆうか「だって自分の気持ちに気づいてたけど、気づかないふりしたりとか。まだ恋に臆病になってるところもあるかもしれないけど、もう好きって気づいたなら恋してるならちゃんとその気持ち伝えないとなおとくんとこのまま気まずい関係のまま卒業しちゃうよ?それでもいいの?」
あかり「嫌だ!」
私は即答してしまった。
ゆうかは驚いた顔をしたがすぐに笑顔になる。
ゆうか「もうあかりは大丈夫だよ。カップケーキ渡しな!それで気持ちちゃんと伝えてこい!」
あかり「うん、うん!そうする!ありがとう!」
ゆうか「お礼はいらないよ。お返しだから」
あかり「お返し?」
ゆうか「しんじと付き合う時、いろいろ力になってもらったから今度は私があかりの力になりたい。しんじも頼って平気だから!」
あかり「ありがとう!よし、じゃあオーブン入れちゃおっか!」
-20分後-
調理室内には甘い香りが漂っていた。
焼けたものをオーブンからだすと綺麗なカップケーキができていた。
ゆうか「やばい!これは今食べたくなる!!」
確かにこれは今すぐ食べたいがこの後はお昼なので今食べるとお昼ご飯が食べれなくなるので我慢する。
冷めてからみんな各々にラッピングをし始める。
あかり「ゆうかの可愛いね!きっとしんじくんも喜ぶね!」
ゆうか「一応甘さ控えめだし…貰ってくれると嬉しいんだけどね…」
あかり「ゆうかが作ったものだもん。きっと喜んで受け取ってくれるよ!さあ、早く教室戻ろ!」
教室に戻ると男子がお弁当箱を広げ始めていた。
なおと「あ、おかえり!」
ゆうか「ただいまー!お昼にしよ!」
最近は1組のメンバーは1組で、2組のメンバーは2組でと自分達の教室で食べることが多くなった。なぜなら、つばさとかずきくんが付き合うことになったらしい。それに8人という結構な人数なので机を繋げたり椅子をもってくるのがめんどうという理由もある。
ゆうか「あ、ねえ、しんじ」
しんじ「なんだ?」
ゆうか「私今日水筒忘れちゃってさ、自販機買いに行くから付き合ってよ!」
しんじ「えー、めんどい。1人で行けよー」
ゆうかがもっているものをみて私は察した。きっとしんじくんもなんとなく気づいているだろう。1人で行けと言いながらしんじくんは席を立つ。
しんじ「いくぞ!」
ゆうか「うん!」
あかり「頑張って!」
私は小声でガッツポーズしながら言った。
ゆうかはガッツポーズをし「ありがとう」と言ってしんじくんの背中を追っていった。
そして私は、なおとくんと2人きりになった。チラッと横をみるとお弁当箱を広げて食べようとしていた。
深呼吸をし、勇気を振り絞りなおとくんの名前を呼ぶ。
「なおとくん」
その声は私ではなく、教室の外にいる女の子の声だった。あの子は確か3組の子だった。立花さんといって学年で結構可愛いと言われてる有名な子だ。
なおと「立花さんどうしたの?」
彼は彼女の方へ行ってしまった。
そして立花さんが手に持ってるものを私は見逃さなかった。今日の調理実習は3組と合同で行われていた。
私は考えていなかった。私の他にも彼にプレゼントする人がいるということを。
まだ、彼の名前を呼べば気づいてくれる距離だったが、私はそんな勇気もなくただ彼の背中を見送った。
しばらくするとなおとくんが帰ってきた。とっさにゆうかにメールを送る。
「ちょっと教室からでるね、頑張ってくる」
携帯をしまいなおとくんをみる。
彼は手に何も持っていなかった。
ちょっと驚きながらも、なおとくんを誘う。
あかり「ちょっと渡したいものがあるから着いてきてもらってもいい?教室じゃなんか恥ずかしいから」
なおと「え、うん」
どこがいいかと迷い、人がこない場所がいいと思った結果屋上前の階段にきた。
私は手を後ろにした状態だ。もちろんその手には調理実習で作ったカップケーキをもっている。一応1番綺麗なものを選び、可愛くラッピングしたつもりだ。
なおと「それで、どうしたの?」
あかり「えっとね、その…」
経った二文字「好き」といい、これを渡すだけ。でも、心臓がドキドキしていて言葉がつまる。目を閉じ、深呼吸をして落ち着かせてから目を開き彼をみる。勇気をだして言う。
あかり「好きです。これ、調理実習で作ったカップケーキ、なおとくんに受け取ってほしい」
恥ずかしくて目を閉じてしまった。今、彼がどんな表情してるのかわからない。しばらく経ってもなにも返事がないので恐る恐る目を開く。なおとくんは私が今までみたことない表情をしていた。
あかり「なおとくん?」
なおと「あ、えっと…ごめん頭の中が真っ白になっちゃって…。こんなの嘘みたいで…」
あかり「嘘じゃない」
なおと「え」
あかり「嘘じゃない。ほんとに私はなおとくんが好きなの。ごめんね。遠回りしすぎた。本当は自分でも好きなこと気づいてたのに気づいてないふりしてた。だから意識だってするよ。それで顔赤くなるよ。だって好きなんだもん」
最後まで言い切るに彼は私を抱きしめた。
なおと「そういう事言われると、また期待しちゃうじゃん。僕、一度振られてるんだよ?あかり恋しないって言ってたじゃん」
あかり「しないつもりだったのに、なおとくんが私のこと諦めてくれないから」
なおと「でも、逃げたじゃん」
あかり「だって、それは…」
私が全部言葉を言い切る前に、私は彼の口で塞がれた。
なおと「もうそれはいいよ。あかりもいっぱいいっぱいだったんだもんね」
私は驚きすぎて腰が抜けてしまい、座り込んでしまう所を彼に支えられる。
あかり「あ、ごめん」
なおと「僕こそごめん。大丈夫?腰抜けちゃった?」
あかり「うん、ちょっと驚いちゃって、ひゃ」
彼は私のおでこに彼のおでこをコツンとぶつけてくる。次から次へと彼は私にいろいろ仕掛けてくるので、私の心臓は追いつかない。
なおと「大事なこと言ってなかった」
あかり「な、なに?」
なおと「僕と付き合ってください」
あかり「あ」
思わず涙が溢れそうになる。告白はされた事あるのに、こんなに嬉しいと思ったのは初めてかもしれない。
あかり「はい」
私は笑顔で答える。
なんとか立っていられる状態になったので手に持ってるものを渡す。
あかり「これ、もらってくれる?」
なおと「もちろん」
あかり「あ、やっぱりだめ」
なおと「え」
なおとくんはとても驚いているが、私はさっきから気になっていることがある。
あかり「立花さんにさっき呼ばれてたじゃん。もしかしてカップケーキもらったんでしょ?」
なおと「あ、あー、えっとね…」
あかり「手に持ってなかったってことは、その場で食べたのかなって思って、どうなの?」
私は少しだけ怒り口調で問う。
少しだけ間があいた後彼はふきだすように笑うので「もう!」と言って怒ると「ごめん、ごめん」と正直に答えてくれた。
なおと「あれはちゃんと断ったよ。ついでに告白もされちゃったけど、好きな人がいるからその人以外からはもらえないって言って丁寧にお断りしました」
それを聞き、少しだけホッとする。
なおと「もしかしてヤキモチやいてくれた?」
「ヤキモチ」という言葉に反応して恥ずかしくて俯く。
なおと「あかり可愛い」
あかり「も、もうこれ以上は心臓もたないからやめて!」
あまりにもドキドキしすぎて息するのがやっとだった。同時に顔も熱い。
そしてまたなおとくんは私のおでこに自分のおでこをコツンとする。
なおと「もう一度キスしていい?」
あかり「え」
私は一瞬迷ったがゆっくり頷くと彼はまた私の口を塞ぐ。
キスをしながら私はなおとくんのことが本当に好きなんだなと強く思った。
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