第11話 気づいた気持ち

はやと「あかりじゃん!久しぶり!」

あかり「え、どうして…ここに…?」

はやと「俺、推薦で大学は受かったし、受験終わった奴らと思い出作り!あかりは?」

あかり「私は…」


なんて答えたらいいか迷ってしまい、ついなおとくんのほうをみてしまった。


はやと「あぁ、デート?あかり彼氏できたんだね」

あかり「いや、彼氏じゃないよ!ゆうかの付き添い」


しんじくんとゆうかの付き添いってことは間違いではないが、彼氏ではないと否定したことには少し胸が痛んだ。確かに彼氏ではない。でも、今この状況はどう見てもデートだ。突然の出来事で頭が追いつかない。


はやと「あ、俺もういくな。あいつら待ってるし」

あかり「うん」

はやと「あかり」


私の名前を呼ぶと、私を引き寄せ耳元で言う。


はやと「まだ俺のアドレス消してない?」


私はその問いに素直に頷いてしまった。

何となく消すことが出来なくて放置していた。


はやと「また、連絡するかもだからとっておいて」

あかり「え?」

はやと「じゃあな!」


はやとはそれだけ言うと、去ってしまった。

「また、連絡するかもだから」とはするということなのか?私の頭の中はキャパオーバーしていた。


なおと「あかり?」


なおとくんの声で落ち着いた。


あかり「あ、ごめん。えっと…」

なおと「元彼?」

あかり「え」


今までなおとくんはあまり踏み切った質問はしてこなかった。きっと私が嫌がると思ってそういう事はしないようにしてくれてたのだろう。でも、今回はなんだか違う。なにがと聞かれると答えられないが、なんか怒ってるようなそうじゃないような…。


なおと「いや、そうなのかな?って思っただけだから無理に答えなくていいよ」

あかり「元彼だよ。12月に別れたばかりの。まさかサラッと声かけられるとは思わなかったけどね」

なおと「そっか」


なぜかなおとくんの様子が少しおかしい気もするが、私にはそれを聞くことは出来なかった。そうこうしていると、なおとくんの携帯にしんじくんから電話が来て合流することになった。


しんじ「悪いな、突然別行動して」

なおと「全然いいよ!」

ゆうか「良くない!私はあかりに会いたかったー!!」


言いながらゆうかは私に抱き着いてくる。

しんじくんの顔をみると「満足」というような顔をしていた。きっと2人でイチャイチャしたのだろう。

それからはまたいろんなアトラクションにのり、夕方になったのでそのまま解散となった。しんじくんはゆうかを家まで送ろうとしたが、ゆうかは私と帰りたいの一点張りだったので仕方がなく今日は女子と男子わかれて帰ることになった。


ゆうか「今日は楽しかったよ!ありがとね!」

あかり「私も楽しかった!」

ゆうか「途中別行動させられるとは思わなかったよ」

あかり「どうせその間にイチャイチャしてたんじゃないの?」

ゆうか「はぁ!?え!!いや、ないない!」


顔を真っ赤にしながら言うのでバレバレだった。つい笑ってしまうと少し怒ってしまったので宥めているとゆうかが突然「あっ」と何かを思い出したのか私を見てきた。


ゆうか「そういえば遊園地であかり達と合流する途中にあかりの元彼みたよ。声はかけられなかったけど、あっちも私に気づいたのか手を振って来たからさ。まあお辞儀だけしたんだけどね。憎たらしくて嫌だったけど!!」

あかり「うん、しってる」

ゆうか「え!?」

あかり「声かけられたから」

ゆうか「はぁ!?なにそれ馴れ馴れしすぎない?もしかして彼女とデートできてて、みせつけとか?」

あかり「そんなんじゃないみたいだったよ。友達と思い出作りって言ってたよ」

ゆうか「そっか。まあもうあっち卒業するんだし、校内で会うこともないっしょ」

あかり「そうだね」


最後に言われたことはなんとなくゆうかには言いづらくて言えなかった。

そしてその後のなおとくんの事も…。


ゆうか「あ、私お母さんから買い物頼まれてるからここで!」

あかり「うん」

ゆうか「今日は付き合ってくれてありがとう!ばいばい!」

あかり「ばいばい」


ゆうかと別れ、もう少しで家に着くというところで携帯が鳴る。誰かと思うとはやとからのメールだった。


「今日は久しぶりに会えて嬉しかった!また、学校とかで会ったらよろしくな!」


たったそれだけのメールだった。と、思ったらまだメールには続きがあるようだった。スクロールを一番下まですると、最後にこう書いてあった。


「月曜日の放課後、話があるから教室きて」


なんとなく期待してしまう。もう別れたのに…。彼のせいで恋愛が嫌いになったのに…。走って家に帰り、部屋に入る。そしてメールに返事をする。


「私も会えて嬉しかったよ。月曜日いきます」


これでいいのか、私にはわからなくなっていた。




月曜日

-15:00- 教室

放課後のことで頭がいっぱいだった私は、今日の授業は上の空だった。そしていつの間にか放課後になっていた。携帯が鳴りみるとはやとからメールが来てた。


「HR終わってたら俺の教室来てくれ」


ふーっと深呼吸し、鞄を持ち教室を出ようとしたときだった。


なおと「あかり」


なおとくんに声をかけられた。毎日帰りはなおとくんと帰っているし、今日もいつもみたいに声かけてくれたのだろう。


なおと「一緒に帰ろ?」

あかり「ごめん、今日は…用事あって…」

なおと「元彼…」

あかり「え?」

なおと「元彼のところにもし行くなら…、行くなよ」

あかり「なおとくん…?」

なおと「行くなよ」


彼は私の腕を掴む。そして携帯も鳴っている。でも、彼の手を振り払う事は私にはできない。


あかり「わかった、帰ろう」

なおと「え」

あかり「今日は断っておくから、早く帰ろ!」


私ははやとに断りのメールを送り、なおとくんと学校を出た。いつもは話が弾み、お互いに笑いながら下校しているが今日は沈黙が続いてる。それと同時に私の心臓はさっきからずっとドキドキしていた。なおとくんが私に「行くなよ」と言ったあの時から…。


なおと「わがまま言ってごめんね」

あかり「え、ううん。私もなんで会いに行こうとしてたんだろうってなんか我に返ったし、止めてくれてありがとう」


私が笑顔でなおとくんにお礼を言うと彼は「はっー」っと深いため息をつき、歩みを止める。


なおと「こないだからなんかヤキモチ妬いてた。彼氏でもないのに気持ち悪いよね。ごめんね。次は元彼のところ行ってもいいよ。嫌だなって思うけど、あかりの気持ち大切にしたいから」


気づいたら私は彼を抱きしめていた。


なおと「えっと…あ、あかり…?」

あかり「え、わぁ、わー!ごめんなさい!!」

なおと「いや、全然大丈夫だけど…」

あかり「ごめんなさい、今日はここで帰るね!バイバイ!」


私は走って逃げるように帰る。心臓のドキドキがさっきよりも速くなる。顔も赤い気がする。なにしてるんだろ私。頭の中は真っ白だ。家に着き部屋の中でさっきの出来事を思い出す。恥ずかしくてたまらなくなりまた顔が暑くなる。この感情を私は知っている。去年初めて知った感情だ。

携帯をみると、はやとからメールの返事がきていた。


「わかった。また空いてる日あったら言って!合わせるから」


それだけだった。はやとがなんの話をしようとしてたか私は期待してた。でも、今は違う。私も彼に話さなければいけないことができた。


「明日なら空いてます。私も話したいことがあるから会いたいです」


数分して彼から「わかった」と一言だけ返事がきた。



翌日

-15:00- 教室

昨日と同じ時刻にHRが終わり、はやとに会いに行く前になおとくんに声をかけようとしたが、今日はずっとお互いに避けて話しかけられなかった。なんとかHR終わった後に話そうと思ってたがなおとくんは委員会に行ってしまって結局話せなかった。鞄は置いてってたのですぐ終わるのだろう。後ろの席でのんびり帰る支度をしているしんじくんに声をかける。


あかり「しんじくん、今日部活ある?」

しんじ「ないよー。これから帰るところ」

あかり「ちょっと頼み事してもいいかな?」

しんじ「なに?」




-15:15- 教室

委員会がすぐ終わったので、教室に鞄を取りに行く。あかりとは今日1日お互いに避けてしまい1度も話してない。昨日のあれはなんだったのか聞きたいが、恥ずかしくて聞けないでいる。教室をみるとしんじがまだ残っていた。


しんじ「よお!」

なおと「帰ったかと思ってた。今日部活休みだろ?」

しんじ「まあなー。早く帰ろうとしたけど、恩人からの頼み事は断れなくてな」

なおと「恩人?」

しんじ「白井から伝言。昇降口で待ってて。だとよ!」

なおと「あ、うん。ありがとう」

しんじ「んじゃ、俺帰るから。がんばれよ!」

なおと「おう!」


しんじを見送り、鞄を持ち昇降口へ向かう。昇降口にはちらほら帰宅しようとする生徒がいた。壁に寄りかかり待っていると、見覚えのある顔の人が近づいてくる。あかりの元彼だ。


はやと「あ、こないだ遊園地であかりと一緒にいた…」

なおと「その節はどうも」

はやと「おう!いやー、はじめみた時は彼氏かと思ったけど否定したからさ思わずホッとしてな」

なおと「え」

はやと「あかりのこと好きだろ?」

なおと「あ、はい…」

はやと「いけるかなーと思ったけど、まあがんばれよ!じゃあな!」


僕とは正反対な性格でかずきに少し似てるような、でも似てないようなそんな人だった。


あかり「なおとくん」

なおと「わっ!?」


いつの間にかあかりが後ろにいた。驚いて変な声が出てしまった。


あかり「ぷっ、変な声」

なおと「あ、はは。遅かったけど用事?」

あかり「うん、ちゃんと話してきた」

なおと「うん」

あかり「とりあえず靴履いて帰りましょ!話はそれからね!」


彼女は僕より1歩先に歩いている。軽い足取りでスキップしてしまいそうなぐらいだ。


あかり「ちゃんと話したんだ」

なおと「え」

あかり「はやとと。寄りを戻したいって言われた。でも、私は今頃またはやとと付き合いたいとは思わない。もう好きじゃないから」

なおと「そっか」


ついホッとしてしまい笑顔になってしまう。僕はあかりのことが本気で好きだ。だからこそ、元彼のもとへはいってほしくなかった。


なおと「よかった」

あかり「え?」

なおと「僕はあかりのことが好きだからね」

あかり「なおとくん…」

なおと「なーんて、知ってるよね?改めて言うとやっぱり恥ずか…あかり…?」


あかりが突然歩みを止めるので、彼女のほうへ向くと俯いている。思いの外、顔も赤い気がする。こないだから僕の心の中には疑問がある。でももしかしたら僕の勘違いという可能性もある。確証もない。でも、僕は彼女のこの様子を見るたびに疑問を消すことは出来ない。それと同時に期待もしてしまうんだ。だから調子にのってしまったんだろう。気づいたら彼女は僕の腕の中にいた。

今度は僕が彼女を抱きしめていた。


あかり「なおと…くん…?」

なおと「聞きたいことあるんだ」

あかり「なに…?」

なおと「あかり、僕のこと…」




友達に「暇か?」とメールを送る。

何人かのヤツらが「暇」と返してきたので、ゲーセンで遊ぶことになった。


友達「お、はやと、よっ!あかりちゃんとはどーだったか?」

はやと「あ、あー。呆気なく振られました」

友達「えー。寄り戻せそうな雰囲気あったんじゃねーの?」

はやと「まあな、でも振られたんだわ」

友達「まじかー。まあ俺らもうすぐ卒業だし、また新しい出会いに期待しよーぜ!」

はやと「おう!」


寄りを戻せそうな、そんな雰囲気は確かにあった。でも、今日会ったあかりは違かった。最初から俺の話すことを予想してたかのように、何かを決心したような雰囲気だった。




-15:05- 屋上前階段

あかり「昨日はごめんね。ドタキャンしちゃって」

はやと「いや、いいよ。気にすんな。それで話って?」

あかり「うん。私、好きな人ができたかもしれないの」

はやと「できたかもって?」

あかり「わからないの。断言はできない。でも多分好きなんだと思う…。だから、こうしてはやとともう会うことはしない。彼を傷つけたくないから。連絡先ももう消した。これが本当に最後したい」

はやと「はぁ…。俺の話すことわかってたのか聞きたいぐらいだわー。寄り戻したいって思ってたんだけどなー。」

あかり「え」

はやと「あかり、わかったよ。もう俺もこうして会わないし、連絡先も消す」

あかり「ありがとう」

はやと「早くそいつのほう言ってやれよ。言っとくけどな、3年生は受験やらでろくに恋愛してる暇ねーから今のうちにちゃんと気持ち伝えろよ」

あかり「うん、はやとほんとにありがとね」

はやと「おう、じゃあな!」


俺はその場を立ち去る。今頃虫が良すぎたんだ。寄りを戻そうだなんて。でも、寄りを戻したいと思ってしまうくらい、遊園地で見かけた時のあかりの笑顔は可愛かったんだ。


はやと「あかりのことをあんな笑顔に、俺はできないなー」


それだけ呟き、俺は歩みをすすめた。

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