第2章

前編

第9話 2月

2月

-12:00- 学校

今日から2月です。

しんじくんとゆうかが付き合い出してから、もうすぐ1ヶ月が経つ。

付き合ったからといって、そんなに変化はしてないがやはり一緒にいる時間は増えた気がする。しんじくんとゆうかが付き合った事により隣のクラスの清水くんと石野くんとも自然と交流する機会が増えた。お昼も前はつばさとひーちゃんとゆうかの4人で食べていたが、いつのまにかそこにしんじくんとなおとくん、清水くんに石野くんも混ざって8人で食べるようになった。そして今日もこれからお昼を食べるところだ。


ゆうか「お腹すいたー」


4限目が終わるとゆうかは決まってその台詞を言う。


しんじ「早く食べようぜー。今日はどこで食べる?」

なおと「流石に外は寒いし…、屋上前の階段も暖かくないからな…。教室かな?4組メンバー呼んでこっちで食べよう」

ゆうか「賛成!」

あかり「じゃあ私、呼んでくるよ!」

なおと「いや、僕が行くよ!」

あかり「ううん、いいの!大丈夫!ありがとう!」


そう言い、私は隣の4組の教室へ向かう。

4組を覗くとちょうどつばさ達もお昼を準備していた。つばさが私に気づくとひーちゃんや清水くんと石野くんに声をかけ、私の方にきた。


つばさ「今日どこで食べる?」

あかり「寒いから教室で食べようって!だからお迎えに来たよー!」

つばさ「ありがとう!」


つばさが教室から出ると、私とひーちゃんはつばさの後を追うように歩き始めようとした時、後ろから声をかけられた。


かずき「白井さんって俺らのことなおととしんじと違って苗字呼びだよな」

たくみ「あー確かに!俺らも白井さんのこと苗字で呼んでるしなー」

かずき「せっかく仲良くなったんだし、下の名前で呼ぼうぜ!」

あかり「え、あ、うん。じゃあかずきくんとたくみくんって呼ぶね!」

かずき「おう!俺らはあかりって呼ばしてもらうわ!んじゃあ、早く行こうぜ!」


突然の提案で驚いたが、男子から下の名前で呼び捨てされたのは元彼以外にいなかったのでとても新鮮だ。

教室に戻るともうみんなお弁当を広げてそれぞれ話していた。


かずき「そういえばさっきあかりと話してて思ったんだけど、もうみんな名前呼び捨てでいいんじゃね?」

つばさ「あー、確かに。私も気軽に呼び捨てでいいよ!」

たくみ「俺も!」


こうして皆それぞれ下の名前を呼び捨てで呼ぶことにした。でも、ひーちゃんに関してはお嬢様ということもあり男子達は呼び捨てでは呼びづらそうだった。

お昼が終わると4組メンバーは教室に戻り、5限目のチャイムが鳴り授業が始まった。この充実した生活がずっと続けばなーと思っていた時だった。ゆうかが5限目が終わると話しかけてきた。


ゆうか「明日、放課後時間ある?」

あかり「え、あるよ。ゆうかは部活いいの?」

ゆうか「うん、明日は休みなの!ひーちゃんも部活休みって言ってたし、久しぶりに4人で女子会しよ!」

あかり「いいけど…しんじくんはいいの?」

しんじ「俺、明日部活だし。まあたまには女子会もいいんじゃねーの?」

ゆうか「ね?こう言ってるし!」

あかり「わかった、空けとくね」

ゆうか「ありがと!」


それからチャイムと共にHRが始まり、「ゆうかの話ってなんだろ」と考えている間にいつの間にか終わってた。ゆうかとしんじくんは部活なので2人とも早々に教室を出てしまった。4組メンバーもみんな部活に入ってるので、いつも帰るのは何も部活に入ってないなおとくんとだ。あれから特に気まずいということもなく、普通に雑談しながら帰るのが日課になっている。


なおと「あかりさん帰ろっか!」

あかり「うん!」


スクールバッグを持ち、彼の背中を追いかけて教室を出る。「そういえば」と思い彼に話しかける。


あかり「なおとくん、さっき私の事あかりさん、って呼んだけどみんなあかりって呼ぶことになったし、なおとくんも呼んでいいよ?」

なおと「え!?」

あかり「まあしんじくんは元から白井って呼んでるから、そっちの方が呼びやすいみたいだからそう呼んでくるけど、なおとくんはずっとさんって付けて呼んでるから。別に気軽に呼んでもらって私はいいよ」


そこまで私が言うと、なおとくんは何故か顔を赤くしていた。


あかり「どうしたの?もしかして…嫌、とか…?」

なおと「いやぁ!それは違う!ただ…ちょっと恥ずかしいなって…。女の子のこと名前を呼び捨てで呼ぶことそんなにないから…。実際のところ安川さん達もちょっと呼びづらくて…」


確かになおとくんはゆうかのことも「安川さん」と呼び捨てせずに呼んでいる。同じようにひーちゃんのこともつばさのこと呼び捨てはしていない。


あかり「最初は難しいかもしれないけど、私はあかりって呼ばれた方が嬉しいかな。距離縮まった感じするし!」

なおと「え、うん。わかった。あかりって呼べるように頑張ってみる」

あかり「うん!」


下校中のこんな些細な会話が毎日とても楽しくて、私はこの時間が好きになっていた。

でも、話に夢中になってるとすぐ家に着いてしまうのでなぜか少し寂しくなる。


あかり「じゃあここで」

なおと「あ、うん。ここで」

あかり「あ、そういえば!明日はゆうか達と約束あって…」

なおと「教室で話してたの、だよね?安川さん声大きいから聞こえちゃった」

あかり「ごめんね、ありがとう!じゃあ明日ね!」

なおと「うん、明日!」


いつものように別れの挨拶をし、家に入る。

2階の自分の部屋にバッグを置くとふとカレンダーに目がいった。

そういえばもう2月だ。そしてある文字をみて私はゆうかの誘いを思いだす。


あかり「なるほどね、バレンタインデーか」




翌日

-16:30- 放課後

ゆうか「あぁ!!もうどうしよ!!」

つばさ「静かにしなさい!」


お店の中というのに、大きい声をだすゆうかにつばさは注意していた。


ひなこ「バレンタインデーかー。ゆうかちゃんお菓子作り上手だし、きっとしんじくんは何をもらっても喜んでくれそうだけどね」

ゆうか「まあお菓子作りは好きなんだけど、その…甘い物好きじゃないみたいで…」

つばさ「うわっ、それは悩むね」

ゆうか「だからどうしようかと…」

ひなこ「抹茶とかは?抹茶のチョコとかクッキーなら甘くないのあるし!」

ゆうか「そういうのもダメなんだよね…」


その場が一気にシーンとする。

甘い物が苦手となるとこれはかなり難題になる。あげないという選択肢もあるが、付き合った以上ゆうかのことだからカップルイベントはちゃんとしたいのだろう。


つばさ「なんか普通にお菓子じゃなくて物でもいいんじゃない?」

ゆうか「物?」

つばさ「そうそう、物だったら形に残るしいいじゃん!」

ゆうか「でも何あげればいいのかわからなくて…」

つばさ「そこか…」


つばさの物という提案で私の頭の中にふと案が浮かぶ。


あかり「なにあげていいかわからないなら、時間あげたら?」

ゆうか「時間?」

あかり「デートってこと」


その単語を聞いた途端ゆうかの顔が真っ赤になる。

そして…


ゆうか「無理!!!!!」


と、いいながらテーブルに顔をふせた。

あぁ、そういえばデートはまだ1度もした事がなかったのか。付き合ってるというのに、全然そんな感じがしないと思ったらデートの話を聞いてなかったからだ。


ゆうか「2人では無理」

ひなこ「でもデートって2人でするものだよ?」

ゆうか「無理無理!」


ゆうかは無理の一点張り。

どうしようかと考えてると携帯がバイブした。みると、しんじくんからメールだ。


「14日あいてるか?」


なぜこれをゆうかじゃなくて私に?

疑問に思いながらもメールを返す。


「空いてるけど、ゆうかには言わなくていいの?」


少し経ち、返事がくる。


「世間では逆チョコというものが流行ってるらしいので(かずき情報)俺の時間をあげようと!でも、2人だけでデートは難易度高いしダブルデートならと思ってな」


なんとも素直なメールだった。

しんじくんもゆうかもお互い考えてることは同じみたいだ。でも、ダブルデートといってもあと1人は誰なんだろ。


「わかった。でも、あと1人男子誰なの?」


それだけ返すと、またすぐに返事がきた。


「それは当日まで秘密だ!」


と、だけ返ってきた。

「気になるなー」と思ってるとゆうかの携帯が鳴った。メールだったようで、ゆうかが中身を確認していた。

私は大方誰が送ったのかわかっていた。


ゆうか「ダブルデート、しないかだって…」

つばさ「おお!いいじゃん!しかも、相手からくるとはね!」

ひなこ「ダブルだったら2人だけじゃないから、緊張しすぎないんじゃないかな?」

ゆうか「うん、OKって送っとく!あ、あかりは14日空いてる?」


さっきは彼氏のほうで、今度は彼女のほうが誘ってきた。


あかり「空いてるよ。一緒にいくよ」

ゆうか「わーい!ありがとう!!」


とりあえず一件落着という感じになった。

男子の1人が気になるが、秘密と言われた以上当日まで待つしかない。しんじくんのことだから、きっとなおとくん、かずきくん、たくみくんの中の1人だろ。

ふと、なおとくんがいいなーと思ってしまう。なんでだろうと思う前につばさが「帰ろう」と席を立ったのでバッグを持ち私もつづく。

とりあえずしんじくんとゆうかのデートがうまくいってほしいと願った。

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