第6話 変化
安川ゆうかが俺を好き…?
そんなバカみたいなことがあるのか…?
俺は驚いたまま固まってると、彼女は笑いだした。
ゆうか「いやいや、そんな驚かなくても」
しんじ「普通驚くだろ…」
ゆうか「それが理由」
しんじ「え?」
彼女は真剣な顔になり、俺をみた。
ゆうか「私がなおとくんを応援する理由はそれ。あたりまえじゃん。好きな人に好きな人がいたらそれ阻止するじゃん」
彼女とは白井と一緒で席も近いのでよく話すが、こんな真剣な表情はみたことない。
しんじ「答えとか、いる?」
ゆうか「いらない。わかってるし…。ただ、あかりに対して本気なら私はそれを阻止していくよ。あかりとはなおとくんとくっついてもらいたいし」
しんじ「安川は、あんまり敵にしたくなかったなー。いつも白井の行動とか左右するのお前だし」
ゆうか「えへっ!」
彼女は悪戯に微笑んだ。
ゆうか「じゃあ、私教室戻るね!」
そう言うと彼女は走って教室へと戻っていった。
はぁ、なんていうやつを敵にまわしたんだ。そんなことを思っているとなぜか彼女がこちらに戻ってきた。
しんじ「まだなにか用事か?」
ゆうか「そういえば今日席替えだね!席離れちゃうから悲しいなぁ!」
しんじ「悲しいって言いながら笑ってるじゃねーか」
ゆうか「まあまた近くなれたらいいね、お互いに」
それだけ言い彼女は走って教室へと戻っていった。
俺も早く教室行くかと思い、教室へと足を進めた。
教室
そういえば、今日は席替えだ。
ゆうかとしんじくんと席が離れてしまう。話せる相手が周りにいないのは嫌だから、席替えはなんとなく嫌なイベントだ。
なおとくんと席近くなったらどうしよ…。そんな事が頭によぎるがしんじくんに朝相談して少しすっきりしたし、きっと大丈夫、と思っていた。
先生「じゃあ、席替えするから順番にくじ引けよ」
くじを引き番号をみて、黒板で席を確かめる。私は窓際の後ろから2番目というなかなかにいい席だった。
ゆうか「あかりどこの席になったー?」
あかり「窓側の後ろから2番目」
ゆうか「嘘!?私、あかりの隣の列の1番後ろ!」
あかり「てことは、私の斜め後ろか!ちょっと話しづらいけど近くでよかった!」
ゆうかが近くの席で安心する。
話せる人が近くでよかった。しばらくの間はなんとかやっていけそうだ。
そして、席へ移動が始まり後ろと隣の席に私は驚いた。
あかり「あれ?2人はそこなの?」
しんじ「そうそう、俺また白井の後ろかー」
なおと「うん、もしかしてあかりさんここ?」
なおとくんは私の席に指をさす。
あかり「そうだよ」
少し苦笑いになってしまった。
ゆうかとしんじくんが近いことはいいが、まさかなおとくんと隣の席とは…。
ゆうか「あれー?なおとくん私の前の席なの?げっ」
しんじ「げっ」
ゆうかとしんじくんはそれだけ言うと睨んでるようなお互いに嫌そうな顔をしていた。
私は席につき少しため息をついてしまった。
なんかこれから凄いことになりそうな、そんな予感がした。
昼休み
ゆうか「やっと昼休みだー!」
そう言ったゆうかからお腹の音が聞こえ、ゆうかは机に伏せた。
それと同時に廊下からつばさとひーちゃんが私たちに声をかけた。
つばさ、ひなこ「2人とも早く!」
あかり「うん!ほら、ゆうか早く行かないと昼休み終わっちゃう。」
机に伏せていたゆうかに声をかけると、ゆうかは顔をあげ鞄の中からお弁当箱をだす。
???「なおとー、しんじー!食おうぜー!」
その声が聞こえた途端、クラスの女子が少しだけざわっとした。
私もついその声の主をみると、隣のクラスの
清水かずきくんだった。なるほど、それで女子がざわざわしてるわけだ。
なおと「しんじ、早く行こ」
しんじ「眠いし今日はここで食おうぜ」
そんな会話を横目で見ながら、私はつばさとひーちゃんのもとへ行く。
つばさ「こないだの話、聞かせてよね!」
あかり「うん、ちゃんと話すよ」
中庭
つばさ「えー!?田村に告られてたのー!?」
あかり「ちょっと!声が大きいって!!」
つばさ「しかも冬休み前とか…。まあクリパのときにたくみが言ってたからなんとなくわかってたけど、まさか1年の時からあかりのこと好きだったとはね」
つばさは凄く驚いていた。
確かに私も1年の頃からというのは驚いた。1年の時、彼とは面識なかったしどのタイミングで好きになったのか凄く気になる。
ゆうか「でも、あかりは告白受ける気ないんでしょ?」
あかり「うん、もう傷つくのは嫌だし…」
つばさ「なら、別に友達でいいと思うけどなあ」
あかり「でもなんか気まづくてさ…。諦めないって言われちゃったし…」
つばさ「そこまで!?」
つばさは信じられないという表情をしていた。一般的に、告白して振られたら諦めるという事の方が多い。でも、なおとくんは誰とも付き合う気もないし、もう恋愛をしないと言った私に諦めないと言った。つばさの反応はあたりまえな反応だろう。
あかり「しかも運悪く今日席替えしたら、席隣」
ひなこ「うっ…それは運悪いね…」
つばさ「ゆうかはどこなの?」
ゆうか「私はあかりの斜め後ろだよ!近いけど、嫌なやつと隣になって私も最悪なんだよね」
私は驚いてゆうかのほうをみてしまった。
あかり「ゆうか、しんじくんのこと嫌いなの?」
ゆうかは苦笑いしながら答えた。
ゆうか「ちょっとね…あはは」
今日のゆうかはしんじくんのことを何故か嫌がっていた。クリパの時はしんじくんと話してる様子はなかったし、席替え前の席もそんなに話してるところはみたことなかった。そんなに接点がないのになんで嫌いなんだろ…?ゆうかはよっぽどのことが無い限り、人のことを嫌ったりはしないし…。なにか理由があるのか気になったが、ゆうかはこれ以上は聞かれたくない様子だったので聞けなかった。
ひなこ「みんな食べ終わったし、教室戻ろっか!」
ゆうか「あー、ひーちゃん!こないだ借りた漫画返すから私の教室よって!」
ひなこ「あ、うん!わかった!」
教室
つばさ「うわ…最悪だね…」
つばさと言う通り最悪だった。
私の席とゆうかの席には隣のクラスの清水くんと石野くんが座っていた。そういえばしんじくんが眠いから教室で食べようと言ってたのを思いだす。
つばさ「私が言おうか?」
あかり「え」
つばさ「あかりもゆうかもそんなにあの2人と仲いいわけじゃないし、たくみのこと苦手でしょ?」
あかり「いや、いいよいいよ!確かに石野くんのことは苦手だけど…」
私とつばさが話していると、ゆうかが自分の席へ向かって歩いていった。
ゆうかと私達に気づいたしんじくんと石野くんと目が合う。
2人が遠くをみてる視線に気づき清水くんとなおとくんも私達のほうをみた。
かずき「あ、ごめん。安川さん。俺どこうか?」
ゆうか「いいよ、鞄から本だすだけだし。ひーちゃん全巻返すからかなり重いかも」
ひなこ「え!?全巻持ってきたの!?」
そう言うと、ひーちゃんはゆうかの方へ小走りでいった。私とつばさもその後を追い掛けるように教室に入る。
ひなこ「わー!10巻以上あるのによくもってこれたね」
つばさ「ひなこ、今日部活あるなら一緒に持って帰るの手伝うよ」
ひなこ「あー、私今日部活ないんだ。でも、大丈夫だよ!ゆうかちゃんが1人で持ってこれたんだし、私だって持って帰れるよ!」
つばさ「ゆうかと違ってひなこそんなに力ないし、1人は難しいんじゃない?」
あかり「私が手伝うよ。私は部活やってないし」
しんじ「んじゃ、俺も手伝うよ」
あかり「え」
私達の話にしんじくんが入ってきた。
ゆうか「あんたはダメ!」
しんじ「は?」
ゆうか「だーめーなーのー!」
しんじ「なんでだよ!」
やっぱりゆうかは今日の席替えの時からしんじくんを嫌っている。
どうしてだろう、と考えているとなおとくんが口を開いた。
なおと「僕も手伝おうか?帰り道一緒じゃなくても持つの大変なら手伝うよ」
ゆうか「なおとくんがいるならいいけど!」
つばさ「元はといえば全巻いっぺんに持ってきたゆうかが原因でしょ!」
ゆうかはてへっと誤魔化していた。
かずき「俺とたくみも大変なら手伝うけど、男2人いれば足りるか。それに俺ら今日部活だし」
たくみ「しんじも今日部活じゃねーか!」
しんじくんはめんどくさいという顔をしていた。
ひなこ「え、じゃあいいよ木村くんは!」
しんじ「めんどいからでないから平気平気」
たくみ「めんどいってだめだぞ!ちゃんとでろよ!ってことで俺らからはなおとしかいけないけど、まあなおと力持ちだから平気だよ」
そういい親指をたててグーとやってきた。
ひーちゃんがいるから、なおとくんと2人きりになるのは阻止されたことに安堵した。
チャイムがなり、つばさ達は隣のクラスに戻っていった。やはり、隣の席になおとくんがいることは少し気まづかった。でも、席替えはしばらくないためこの席に早く慣れるように頑張るしかない。
放課後
HRが終わり、携帯をみるとひーちゃんからメールが来てた。
ごめん!車で迎えに来てくれるって言ってたから大丈夫!せっかく手伝うって言ってくれたのにごめんね!
嘘でしょ…。
私の顔はきっと今真っ青だと思う。
なおと「あかりさん。西園寺さんのクラス行かないと」
あかり「あー、えーっと…なんか車で迎えに来てくれるらしくて、私達必要ないみたい。そのまま帰って平気だよ」
なんとなく苦笑いになってしまった。
ゆうかとしんじくんはもう部活に行ってしまって助けを求めることは出来ない。
すぐにこの場から逃げたくて、私は帰ることを告げて教室からでようとしたその時腕を掴まれた。
あかり「え」
ものすごく逃げたいが腕を掴む手が少し力が強くて、何故か払えなかった。
なおと「一緒に…帰らない?」
1番言われたくない言葉だった。
でも、なぜか断れなくて頷いてしまった。
2人きりになるのはクリパの買い出しの時ぶりだ。
なおと「家、学校から近いよね」
あかり「え」
なおと「クリパの時、学校からも駅からも近くていいなーって思って」
あかり「あ、うん。なおとくんはどこら辺なの?」
なおと「僕は電車乗って1駅かな、まあまあ近いって感じ」
あかり「そっか」
会話が続かないでいた。もうすぐ私の家にも着いてしまう。この気まずい空間もあともうちょいで終わる、と思っているとなおとくんが口を開いた。
なおと「そういえば、駅の方にクレープ屋さん新しく出来たんだって!男1人だと買いづらいから一緒に来てもらってもいいかな?奢るし!」
あかり「クレープ屋!!」
甘いものが大好きな私はつられてしまいそうになる。早くこの場から逃げたいが、クレープも食べたい…。私の中で葛藤の末、クレープが勝った。
あかり「奢らなくていいよ。私も食べたいし、行こ!」
私はつい彼の腕を掴んでクレープ屋まで走っていった。
あかり「美味しい!幸せ~」
なおと「あかりさんは甘いもの好物なの?」
あかり「うん!美味しい、食べるともう幸せ!!え、でもどうしてわかったの?」
なおと「クリパの時、ドーナツあげたら喜んでたからそうかなーって。僕も甘いもの好きだからさ」
あかり「そっか!」
クレープを食べていたら気まずさはもう無くなっていた。甘いものさえあれば彼とはなんとかやっていけそうだ。そんな時、しんじくんが朝言ってくれた言葉を思いだした。なおとくんはただ私に気持ちを寄せてくれてるだけ、こういう態度は失礼かもしれない。好きにはなれないけど、なおとくんは私のことを友達として普通に接してくれてるなら私も同じようにしよう。
あかり「あの、さ」
なおと「なに?」
あかり「いろいろ避けててごめんね。その…失礼だったよね私」
なおと「いや、全然。僕もなんかいろいろごめん」
あかり「なおとくんは謝らなくていいの。あの…なおとくんのこと好きになる事はない。けど、友達としてならなおとくんのこともっと知りたいかな」
なおと「え」
あかり「だめ、かな?」
なおと「全然いい!僕もあかりさんのこともっと知っていきたい」
あかり「うん!」
お互いに緊張していたのか、空気が抜けたかのように笑ってしまった。
なおと「早速なんだけど、質問してもいいかな?」
あかり「うん、なに?」
なおと「しんじのことどう思ってる?」
あかり「しんじくん?」
いきなりしんじくんの名前がでてきて驚いた。しかも、どう思ってると聞かれ質問の意味がよくわからなかった。
なおと「あの、今日1日思った事があって…」
あかり「なに?」
なおと「安川さんとしんじあんなにお互いの事嫌ってるぐらい話してるところみたことないなって…」
あかり「私も今日それずっと思ってたんだ。席替えの時とか睨み合ってたし」
なおと「それで、一つ心当たりがあるんだけど…」
あかり「なに?」
なおと「1年の最後の方の一時期ね、安川さんがしんじのこと好きなんじゃないかってそんな噂が一部で流れてたのを聞いてさ」
あかり「え!?そんな噂あったの?」
なおと「それで…」
そこからなおとくんは少し話しづらそうにしていた。
あかり「言っちゃまずい事なら言わなくてもいいよ…?」
なおと「噂だから僕も本気にはしてないんだけど…その安川さんの噂が流てる時にもう1つ噂があって、しんじも安川さんが好きだって噂があって…」
あかり「え?」
ただの噂だとわかってはいたが、驚きを隠せなかった。
それと同時に全然話してもいなかった2人が短期間で仲が悪くなったことも気になっていた。私の知らないところで少しずつ皆の関係が変化していた。
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