第5話 気持ち
1月 学校
あっという間に年も開け冬休みも終わり、学校が始まる。冬休みは夏休みよりとても短い。寒いのが嫌いな私はとても学校に行くことが憂鬱だった。
今日は始業式で午前中に終わる予定だ。家に帰ったらすぐに寝ちゃおうかな、と考えていたらいつの間にか教室の前まで来ていた。
(入りにくい)
クリスマスパーティーのあの日から、なおとくんとは会っていない。話すらもしていない。携帯のメルアドを交換してるわけではないので、会うことは普通に考えて難しいだろう。扉の前に立っている時、後ろから声をかけられた。
「白井、入らねーの?」
振り返るとその声の主はしんじくんだった。
あかり「あ、しんじくんおはよ!先にどうぞ」
しんじ「おはよ、いいよ、白井先に入れよ」
あかり「え、あー、いや…」
しんじ「ちょっとこい」
あかり「え」
しんじくんは私の様子をみてなんとなく察したのか、私の手を引き屋上へと続く階段にきた。
あかり「どうしたの?」
しんじ「なおとと会うの気まずい?」
あかり「え、いや、そういうわけじゃ…」
しんじ「クリパの時、お前らが買い出しから帰ってきた時、なんとなく雰囲気変だなって感じたんだけど俺の気のせいかなー」
普段はボケーッとしている事が多いが、こういう事に関してはとても鋭い。しんじくんは私が唯一クラスで気を遣わず話す男子だし、なおとくんとも仲がいい。彼には正直に話してみよう。
あかり「買い出しの時のことは、お互いにあの場から逃げたかったの」
しんじ「まあ、あの空気はお前らには耐えられなかったよな」
あかり「その時に話しがあるって言われて」
ふと思い出してしまう。あの時の彼の表情を。彼の目を…。
なおと「白井?」
あかり「私ね、初恋だったんだよね。だから告白されて付き合えて嬉しかったの。でも、呆気なく終わっちゃって…。普通ならまた次の恋をしようって思うんだろうけど、私にとって恋は苦しいものになったの。だから恋をしないって決めたの。なおとくんにもそう伝えた。でも、なおとくんは諦めないって言ってきた。なんでって聞いた。私はなおとくんのこと好きにならないのに、なんで諦めないのって聞いたら…初恋だからって…。その時のなおとくんの表情が…目が…とても魅力的で…引き込まれて…。」
あの時のなおとくんの目を思い出し、しんじくんに何故か全て話してしまった。いっぺんに話したせいか少し息が切れていた。でも、落ち着いてきたら恥ずかしくなってきて、今すぐ逃げたくなる。
あかり「あ、えっと…、あの…」
しんじ「プッ」
私が恥ずかしがって何も言えないでいると、しんじくんが笑いだした。そして私をじっとみて、口を開く。
しんじ「なおともやるなー。まあ白井はとりあえず落ち着けよ。なおとに会いづらいのも避けた態度とるのも無理はないけど、あいつはただお前に気持ち寄せてるだけなんだからよ。まあなんつーかさ、あいつはなおとはいい奴だから、気持ちは受け取れなくても友達として付き合ってやってよ」
笑顔でしんじくんは私にいう。
彼の笑顔とその言葉で戸惑いや不安が落ち着く。
あかり「うん、ありがとう。少し落ち着いた。ずっともやもやしたり不安とか戸惑いとかあったから」
しんじ「また何かあれば相談しろよ。席近いし」
あかり「うん!あ、でも、どうせならメルアド交換しようよ!結構今頃感あるけど!」
しんじ「まあ、その方が連絡とりやすいしな!」
あかり「うん!あ、私今日日直だから先行くね!じゃあまた教室でね!」
しんじ「おう!」
私はしんじくんとメルアドを交換し、日誌を取りに職員室へ向かう。その時の私は気づいてなかった。しんじくんの気持ちも、私としんじくんの話をこっそり聞いていたゆうかの気持ちも…。
しんじ「ほーんと、なおとやるよなー。告白までしちゃって、諦めない宣言までしちゃうとはなー」
???「それを言うなら君もやるねー」
誰もいない場所から声が聞こえたと思い、ビクッとするとその声の主があらわれる。先程まで話していた、白井あかりの隣の席で仲がいい、安川ゆうかだった。
しんじ「盗み聞きとは趣味がわりーなー」
笑い混じりに言うが、彼女の目が真剣に俺をみてきたのでこちらも無表情になる。
ゆうか「木村くん、あかりのこと好きなんだね」
目を見開き、何も言葉がでなくなった。まさか誰にも気づかれていないことを言われるとは…。
ゆうか「その様子だと、頑張って隠せてたと思ってたでしょ?私はあかりとずっと一緒にいたからなんとなく気づいてたよ」
しんじ「まじかよ…察しいいのな」
苦笑いになる。絶対に気づかれていないと思っていた。安川ゆうかはそういう事には疎いと思い、彼女にも気づかれてないと思っていた。
しんじ「それで、白井に言うの?」
ゆうか「言わないよ。そのかわりにこれからどうするか教えて」
しんじ「どうするって?」
ゆうか「なおとくんみたいにあかりに告白する、とか」
しんじ「あー、そうだなー。でも白井にとって今の俺は男子の中では1番話しやすい男子ポジだし、それを保ちたいけど今の現状だとなおとのほうが俺より上だしなー。まあそろそろ俺も本気だそうかなーとか考え中かな」
そう俺が答えると、彼女はニヤリと笑い口を開く。
ゆうか「なら、私はそれをとめないとね」
しんじ「味方してくれないのかよ」
ゆうか「あたりまえじゃん。私はなおとくんを応援してるんだから」
俺の気持ちを白井に言わないというから、てっきり味方してくれると思ったら違うのか。そして彼女から衝撃的な言葉がでてきた。
ゆうか「だってさ、私、木村くんのこと好きなんだもん」
しんじ「は?」
安川ゆうかが俺を好き…?
彼女は満面の笑みで俺に告白をしてきた。
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