第2話 告白

翌日

-7:30- 自宅

私は目をこすりながら起きる。

鏡をみると私の目は腫れていた。


あかり「腫れちゃってるな…」


昨日は夕食も食べずにずっと部屋にこもって泣いていた。そして泣き疲れたのか寝てしまったらしい。気づいた時にはもう朝になっていた。

今日は学校だ。本当は休みたいが、そんな事をしたら友達に心配をかけてしまう。

重い足を無理矢理動かし、私は家をでた。




-8:00- 学校

学校へ着き、下駄箱で靴から上履きに履き替え3階の自分の教室へ向かう。その途中彼をみかけた。

彼は私とは違い満面の笑みで笑っていた。


(一番みたくなかった顔だな)


そして教室に着く。

自分の席につくと隣の席で仲良くしている安川ゆうかが明るい声で挨拶をしてくる。


ゆうか「おはよ!あかり!」

あかり「おはよ、ゆうかは朝から元気だね」

ゆうか「そんなあかりは少し元気ないね」


そう言うとゆうかは私の顔を覗き込む。

そして驚いた顔をして聞いてきた。


ゆうか「どうしたの!?その目!」

あかり「昨日ずっと泣いてたから腫れたの」

ゆうか「え、なにかあったの?」

あかり「まあ、いろいろ…」


今はその事についてあまり話したくなかった。

私の頭の中ではまだ整理ついてない事だったからだ。

ゆうかは私を心配そうにみているが、ゆうかにはちゃんと整理できてから話そうと決めていたので、今は話すのをやめた。


あかり「ほら、先生きちゃうし早く準備させて」

ゆうか「あ、うん。わかった。でも、無理しちゃダメだからね」

あかり「うん、ありがとう」


ゆうかは席につき今日までの提出課題をやり始めた。彼女はいつも朝は私より早く来て、締め切りギリギリの提出課題をやってる。その光景をみることは私にとってはもう日課のようになっていた。




-12:30- 昼

チャイムが鳴り、やっとお昼になった。

隣の席のゆうかが「お昼だー!」と言いながら伸びをしている。


「あかり!ゆうか!」


突然私達の名前が呼ばれたので教室の扉の方をみると、隣のクラスの橘つばさと西園寺ひなこことひーちゃんがいた。


ゆうか「わー!つばさとひーちゃん!」


そう言いながらゆうかは2人のもとまで走りつばさに抱きつく。

私はゆうかの鞄からお弁当をだし、彼女達のもとへ行く。


つばさ「もう、ゆうか!突然抱きつくのやめてって言ってるじゃん」

ゆうか「ごめん、ごめん!」

ひなこ「ゆうかちゃんは本当につばさちゃんのこと大好きだよね」

ゆうか「何言ってるの!ひーちゃん!私はつばさだけじゃなくて、ひーちゃんとあかりのことも大好きだよー!!」


と言ってまたつばさに抱きついては怒られていた。




中庭

私達はいつもこの中庭で4人で昼食を食べる。

彼女達とは1年の時に同じクラスで席も近くですぐに意気投合した。2年になってからクラスは離れたが、お昼はこうして4人で集まり食べている。


つばさ「そういえば、あかり今日なんか目腫れてない?」


つばさが一番聞かれたくない質問をしてくる。

私はつい黙ってしまい、4人の間に沈黙が流れる。


ゆうか「えっと… つばさ「あの!」


私の言葉がゆうかの言葉を遮る。

本当は気持ちの整理ができてから話そうと思ってたが、話さないでいるのはそれはそれで苦しくなっていた。


あかり「あのね、昨日彼氏と別れたの」


私は俯きながらゆっくりと昨日のことを話した。

時折、涙が溢れそうになるがそれを堪えながら話していた。全て話終わると私は俯いていた顔をあげ、彼女達をみる。

そして私は驚いた。なぜなら、彼女達は怒っていたからだ。


つばさ「なんかひどくない?あかりと付き合っていながら1週間他の女と仲良くしてるとか」

ゆうか「ほんとそれな!というかメールでの別れもむかつく!」

ひなこ「そういう大事な事はやっぱり直接言ってほしいよね」


つばさが口を開くと、ゆうかもいつもおっとりしていておだやかなひーちゃんまで怒りを口にしていた。


あかり「みんな怒ってくれるのはいいけど、もう終わった話だし…」

つばさ「終わった話でも、私とゆうかとひなこは許せないよ!あんなにあかりは彼氏のこと大切にしていたのに、それがこんな形で終わるなんてひどすぎる!!」


つばさはカンカンに怒っていた。「殴ってこようか」と立ったつばさをひーちゃんを必死にとめていた。


ひなこ「そういえば、その彼と仲良くしていた女の子ってどんな子だったの?」


ひーちゃんがつばさをとめながら私に聞いてくる。

「そういえば」と思いだしてみる。何度か彼の教室は行ったことがあるが、見たことが無い人だった。

その事を告げると「もしかして」とゆうかがいい突然4階に行こうと言いだす。

私は行きたくはなかったが、ゆうかに手を掴まれてしまい断るタイミングを失った。




4階

つばさ「確か彼のクラスってここだよね?」


つばさが聞きいてきた。ゆうかは教室を覗いていた。

そして「あっ!」というとゆうかが左手で私の手を引き、右手である人物に指をさした。


ゆうか「あの子じゃない?」


そう聞くゆうかの指の先をみると、昨日彼と手を繋いでいた女の子だった。驚きながらも頷くとつばさとひーちゃんも教室を覗く。そして2人は「なるほど」と呟きながら頷いていた。


あかり「どうしてわかったの?」


ゆうかに聞いてみるとゆうかは呆れたような表情で口を開く。


ゆうか「あかり知らないの?1週間ぐらい前に3年に超絶美少女が転入してきたって学校中話題になってたんだよ」

あかり「その話題の子って…」

ゆうか「そう、あの子。結構話題になってたし知ってるかと思ってたんだけど…」

あかり「そういう話題興味ないし…、私、部活とかも入ってないから」


私以外の3人は部活に入っているため、先輩などの話から知っていたらしい。

確かに話題になると聞いて納得するぐらい、その子はとても可愛くて綺麗だった。「美少女」という言葉はまるで彼女のためにあるんじゃないかと思ってしまうぐらいに。


つばさ「もう教室帰らないとやばくない?お昼もうすぐ終わるし」


そのつばさの言葉に私は腕時計をみる。

あと5分ほどでお昼休憩が終わるところだった。


ひなこ「そうだね。つばさちゃん、早く戻らないと次、私達移動教室だよ」


ひーちゃんがつばさに伝えると「え、嘘!?」と驚き、「先に教室戻るね!」とつばさとひーちゃんはいってしまった。


ゆうか「私達も早く戻らないと」


そう言ってゆうかが歩き始めるので私はゆうかのあとを追っかけるように歩く。


「あの」


後ろから声をかけられる。誰かと思い振り返ると、そこには私よりも少し身長が高い男の子がいた。どこかでみたことあると考えていると、ゆうかが「あ、委員長じゃん!」といい私はその男の子が同じクラスの学級委員の男の子と知る。名前何だったかなと考えていると彼が口を開いた。


「あの…今日の放課後、話があるので教室に残っててもらえますか?」


彼は私から目を離さず返答をまっている。

思いもよらぬ言葉に私は目を見開いてしまった。

話したことは数回しかないし、名前も覚えてない彼からそんな事を言われるとは思わなかった。

でも何故か私は頷いてしまった。

そして彼は「じゃあ、お願いします」というと私の横を通り過ぎて階段を降りていってしまった。


ゆうか「あかりと委員長が話してるところ初めて見た」

あかり「そんなに話した事ないし、あの人が委員長って初めて知った」

ゆうか「え!?あかり委員長って知らずに話してたの?」

あかり「うん、ゆうかが委員長って言ってて初めて知った」

ゆうか「まあクラスの男子とあかりそんな話さないもんね」


私はそんな事よりも委員長の言葉が気になっていた。

いったい放課後私に何の話をしようというのか。

その事が気になって授業にあまり集中出来ないまま放課後が来てしまった。




放課後

-15:00-

ゆうか「あかり、じゃあ私部活いくね!また明日!」

あかり「うん、また明日!」


挨拶を終えるとゆうかは教室から出て行ってしまった。

教室を見渡すと委員長はいないが、荷物は置いてある。私は教室で人がいなくなるのを待っていた。




-15:45- 教室

やっと人がいなくなったと思うと委員長が教室に戻ってきた。


委員長「ごめんね待たせちゃって。ちょっと職員室に行ってたんだ。日直だったから」

あかり「そっか、それで話ってなに?」


彼に問うと彼は少し話しづらそうな様子だったがすぐに顔をあげ、私の目を見る。


委員長「えっと…多分あまり話したこともないし、僕のことも知らないと思うんだけど…」

あかり「うん」

委員長「僕、1年の時から白井さんの事が好きなんです」

あかり「えっ」


いきなりの告白で驚いて固まってしまった。

そんな私をよそに彼は恥ずかしそうに右手で頭を掻いていた。


あかり「えっと…あの…」

委員長「あ、突然こんなこと言ってごめん。冬休み前の今しかないと思って。返事とかはできれば あかり「ごめんなさい!」


私は彼の言葉を遮って言葉を続ける。


あかり「私、昨日彼氏と別れたばかりなの。まだ気持ちの整理もついてないし、今は恋愛とか興味ないの。それにあなたの名前もわからないし…」

委員長「僕の名前は田村なおとです」


彼は自分の名前を名乗る。


あかり「なおとくん?」

なおと「はい、あ、なんかそう呼ばれると照れますね…。いつも委員長って呼ばれてるから…」


照れながら言う彼は突然真面目な顔をして私の目を見る。


なおと「だめなのはわかりました。でも友達からっていうのはどうですか?」


彼は私に問う。


なおと「友達として白井さんと」

あかり「あかりでいいよ」

なおと「あ、あかりさんと付き合いたいです。それでいつかは好きになってもらいたいです」


なおとくんは私に真剣な表情で言ってきた。

でも、私の中で答えはもうとっくに決まっていた。


あかり「気持ちはとても嬉しいの。友達っていうのもいい。でも私はあなたの事は好きにはならない」

なおと「どうして?」

あかり「私は決めたから。もう恋をしないって。恋愛は卒業したの。だから、なおとくんとは普通の友達としてこれから先、付き合っていきたい」

なおと「あかりさん…」

あかり「ごめんね、私もう帰るね。じゃあまた明日ね」


私はその場から逃げるように去った。

最後に私の名前を呼んだ彼の表情はまるで昨日の私のようにみえて胸が痛んだ。


あかり「はぁ… 帰ろう」




教室

なおと「あーあ、振られちゃったな…」


逃げるように去っていった彼女の後ろ姿を思いだす。その後ろ姿は、追いかけてこないでと言われてる気がして追うことができなかった。


なおと「恋をしないか…。完全に脈ナシじゃん」


そう呟き窓をみると、さっきまで一緒の教室にいた彼女が歩いてるのがみえた。

その姿はなんだか寂しそうな、悲しそうなそんな感じがしたのは気のせいだろうか。

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