第2話 チョコオランジェ

何の進展もないままバレンタイン当日がやってきた。

「悠貴、くん。おはよう。あのね、これ・・・。」

家の門のかげから一人の女の子がおずおず現れ恥ずかしそうに薄ピンクの用紙に包まれた箱を取り出した。この寒空の中早朝から待っていてくれたのか。なんというかけなげで可愛い。

「おはよ、お前いつから待ってたんだよ。鼻の頭真っ赤だぞ。」

「えぇ!?あ、や、私、そんなに・・・ひゃっ!?」

箱を差し出すその腕を軽く引き寄せて抱きしめる。

「これでちょっと温まるだろ。」

飛びだしそうなほど鼓動が高まっているだろうか。身じろぎひとつせず腕の中に収まっている。その勢いでキスまで持ち込むのはこの子にとってハードすぎるだろうから息がかかりそうなほど近距離で見つめるまでにとどめておいた。

「チョコありがとな。」

「は、はい。」

真っ赤な顔して可愛いなぁ。麻咲もこんなふうにわらってくれたら、っておい、自分のことを好きって言ってくれてる女の子の前で違う女の子の考えるのはダメだろ。


と、まぁプレイボーイ全開で学校へ向かう俺。

マンガでよくありそうな下駄箱に大量にチョコレートが入っているシーン。あれにも憧れるんだけれど、俺の学校は土足上等を掲げているためそのシュチュエーションはない。というか、靴と一緒に食べ物を入れるのは包まれているとはいえどうなんだ。


「悠貴、おはー。机の上ものすごいことになってるよ。」

クラスメイトの言葉通り机の上にうずたかく積まれたチョコレートの数々。みかねた誰かがデカイ紙袋を恵んでくれたらしくなんとかその中におさまっているといった状態であった。

包み紙の大半はピンク、たまに金色や黒色。柄物もあればご丁寧なお手紙つきもある。手作り感満載のプラリネに高級ブランドチョコレート、ショコラマカロン、チョココルネ、おいおいブランデーボンボンは高校に持ってくるもんじゃねーだろ。


一時間目が過ぎ、2時間目、昼休みが終わって、やっと、授業が終わる時がきた。

休みのたびに増えていくチョコレート。だけど、俺が一番欲しいチョコレートはまだ届かない。

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