第10話 亀の恩返し
「あー今日も平和だなぁ」
「なぁチュウ外に…」
その言葉を聞いた瞬間チュウは床に置きっぱなしにしてあった布団の中にもぐりこんだ
「…っておーい!なにやってんだ?」
「この平和が失われると思ってにげた」
「大丈夫だ、だだ外に亀が歩いているだけだ」
「あーあ聞いちゃった聞いちゃった、関わらなくちゃあならんやつだ」
そういうといやいや布団の中から出て窓の外を見ると
たしかにバカの言ったとおり亀がどんくさくのっそのっそと歩いていた
「都会に迷い込んだって感じか、よし蜘蛛の糸よろしく善行を積むといたしますか」
そう言うとチュウはやけくそ気味に外に出て亀の近くまで寄る
「しっかしさすが大都会東京誰一人気にかけないみて見ぬふりだ
もしくはスマホに夢中できずいてすらいない」
「しかしかなりでかいな」
いつの間にかバカも近くにいた
するとチュウが突然亀に向かって話かける
「おーい大丈夫かって亀が話せるわけねーよな」
「いえ、話せますよ」
「…なっ、バカ。日常ってのは簡単に崩れちまうものなんだ」
「いやーどうも誰も気にしない中気にしていただいてありがとやんす」
「ははは、お茶です」
「こりゃどうも」
うまいこと平らな二本の手の平で湯呑を器用にもって飲む
「あのどうですか?」
「いやちょうどいい暑さでよく亀のことわかってますなぁ」
「そんで、なにしてたんですか?」
質問を投げかける
「ちょっと探し人をな」
「よかったらその探し人探しましょうか?」
「ええんかならたのぬむわ」
「おいチュウ」 バカがチュウを呼ぶ
「なんだ」 答えるチュウ
「珍しいな人助けの精神にでも目覚めたか?」
「まぁそんなところだ」
(しゃべる亀など珍しすぎるだろ動画を撮って動物マニアに売りつければ大儲けだ)
頭の中でよこしまなことを考える男T、もともとしゃべる亀を外国に売り飛ばそうとか考えていたころに比べればまだましだが(5分前)
「私が探しとるのはのは裏島田 太郎という人物や。申し遅れたが私
カメ太郎って言うんや」
「裏島田・・・・まさか浦島太郎のことか」
「そうやねん、裏島はんが病気で亡くなるという予言をイソギンチャクの祐二から聞いてやってきたんや」
「うらしまたろうは実在したか…おもしろいな」
イソギンチャクの予言には誰にも触れず話は進む
「私は彼を竜宮城に連れて行った亀 カメ 上野介の子孫やねん
私は彼に忘れ物を届けに来たんや、ついたところは大阪の道頓堀で周りの口調が
うつってもうた」
「だからコナンとかこち亀とかに出てくる関西人みたいな話かたなのか」
「その忘れ物ってなんです」
ナナシが質問するとカメ太郎は甲羅の一部を取り外し、その中から箱を取り出した。その箱は弁当箱サイズのもので開け口は紐でちょうちょ結びされており、
漆塗りの黒ベースで波模様が入っていたなかなか豪華な箱だった
「これは、玉手箱?」
「そうやでもあの年とるやつじゃあらへんで、むしろ若返るんや」
「???どういうことだ」
「あれエビフライさんいつの間に?」
「玉手箱を開けた瞬間裏島はんが一気に年をとってしまったことは知っとるな、
あの箱の中には彼が竜宮城で過ごした時間が入っていたんや。そしてその時の若さを玉手箱いや正確には中に入っていたもやが奪い取ったんや、そのモヤがここに入っておるんや」
「つまりこの中のモヤをあびれば裏島は」
「若返る…」
今更ながら不思議な話だ、昔話の世界に入ってしまったような
「で裏島はいまどこに」
「予言によるとこのあたりの病院にいるらしいんですが」
「この辺だと普通病院しかないですよ」
「一番近いのはあそこだな、次の問題はどうやって亀を病院に入れるかだな」
「お届け物でーす」
「はーいどう重っ!」
「なんか置物みたいですよ~ありがとうございました」
「無事奴は潜入できたな」
「あとは私達がどうやって入るかですね」
「闇夜は男のテリトリーよ」
「女は?」「知らん」
そろそろ読者の為の説明タイムに入るとしよう
先ほどの宅配便はもちろんチュウ。彼が病院に届けたのは亀のはく製=
カメ太郎である。とりあえず彼には先に潜入してもらうことにしたのだ。
その後2人がなんらかの方法で病院に侵入し、カメ太郎と合流する
「これぞ作戦 Kだ。あっ作戦KのKは亀のKですよ」
「そういうのは説明しなくていいよ」
今現在二人は病院の駐車場にいる
ここからどう進むかはノープランである
「よし窓ガラスを割ってカギを外して中に入ろう」
「それただの泥棒ですやん」
「馬鹿野郎、現代版サンタクロースと呼びなさい」
「というかお前の神拳でうまいこと入れるのないの」
チュウの頭の電球が輝く、どうやらその選択肢はなかったらしい
「それもそうだ、よし!自分流神拳奥義「緊急テレポート」!!」
そういうとチュウの姿がバカの前から消えた どうやら技名のとおりテレポートする技だったらしい。しかしバカはテレポートできていない 置き去りである
「おいおいおい、どーすんのよ」
しゃべりながらおそらくチュウが内部へと潜入した病院へと近づくすると
バカの近くの窓ガラスがガラッと開いた。その開いた窓からは
「おまたせ」 チュウが出てきた
「結局窓開けるのね」
「さてあのカメ公はどこかな」ぐしゃ…
なにかがつぶれた音が足元からした
「なんかふんだな~なんだ?」
暗闇の中なのでよく見えない、と二人は思っていたのだがそれは光を帯びていた
「卵だな」「卵ですね」
そしてさらに不思議なのがその光る卵が自分たちの眼先にずらーっとならんでいるのだ
「ヘンゼルとグレーテルのパン屑みたいなやつか、おそらくこれをたどれば奴がいるな、いくぞ」
「というか今アイツの家族お亡くなりになったけどよかったのか」
「オラなんもしらねーだぁ」「こいつ」
屑一人バカ一人暗闇の病院を歩く
静かなこの世界では二人の足の音の余韻しか残らない
するとチュウが急に歩を休める
「ん?ここか」
卵が病室の前に落ちていた、そこの先の道には卵は落ちていない
「じゃまするぜ」
「おまちしておりました」
「おっ口調もこっちの感じになってきたな」
カメ太郎のいる場所の奥、そこに彼の探していた人がいる
「それじゃあ話かけるか」
「ちょっといいかカメ太郎」
バカが割ってはいる
「なんでしょうか?」
「ここにくるまで落ちていた卵あれ全部お前のというか産んだの?」
そうここまでくることができたのは卵があったおかげである
もしそうなら彼の息子娘…というか太郎なのにメスなのかという疑問まで生まれる
「どうなんだ」
「あああれは私の友達の嫁が生んだ卵の殻を接着したものです。卵パズルってのがうちのほうじゃ流行ってるんですってあれ」
カメ太郎が見たのはずっこける二人の姿だった
「そうかそれはよかった?よ、うん」
「誰じゃ一体こんな時間に騒がしくしておるのは」
これだけ騒がしくしていればそりゃ起きる
「ん?お前は?」
「!!覚えていますか昔あなたが海辺で助けた」
「・・・・・・・ああ覚えておるよ、乙姫様の次にじゃがな」
(よかった誰だっけとかゆうお決まりのぼけに入らなくて)
「でなにしにきてくれたんじゃ?このじじいを見送りに来てくれたのかぇ?」
「いえこれをあなたの時間です。お返しに上がりました」
「これはあの時の…そうか、いやいらんよ」
「なぜです!!」
「もういいんじゃよぉこれであの時のお話はあれで終わったんじゃよ。もういいんじゃ、ありがとうなぁこんな老いぼれんとこまでわざわざ来てくれて」
「裏島さん、、、」
その日は月がとてもきれいだったという
もちろん海に映る月も同じく
「なーんかいいことしたって感じで変な気分だなぁ」
「いいじゃねぇかよ、それより黙って出てきてよかったのか」
「いいんだよ俺ああいうの苦手だからあーあ月がきれいだなちくしょー」
つづく
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