第5話 夕暮れと私

 彼女はやはり積極的な人だった。

どうやら男たちの中ではかなり人気の女性らしい。どうしてこうもラベリングが必要なのか。不思議でたまらなくなるが、男たちといると楽だ。少なくとも私と同じ体をしている人たちといるよりはね。彼女たちといると心底申し訳なくなる。理由はわからない。ただ、私は貴方達が思っているようなことをしないし考えたこともないから。或いは考えてもしない。自立しているといえば聞こえがいいが、裏を返せば孤立しているのだから。それが好きなのだから。憐れみを受ける筋合いはないよ。

 そんなことも御構い無しなのが彼女だ。ゆるくウェーブがかかった髪が揺れるほど沢山のことを私に話す。実のところ私も決しておとなしい方ではないしむしろ口数は並より多いと自覚している。私がたくさん話すのは男達といる時それと最近になってからは彼女の前。音楽のことから、ファッションについてまで彼女は私についてなんでも興味を示してくれた。本当は私も彼女について知っておくべきことが山ほどあるというのに別れ際にはすっかり気取ったままの私だ。

 



「どんな人が好きなの?」

 私の視覚は見慣れ初めていた手の震えをとらえた。

 鼓膜が彼女の熱を感じている。

 頭が熱い。いや。ダメよ。これ以上は。

 認めたくない感情がすぐそこまで来ている。

 背に受けた橙が痛いほどに私を離さない。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る