月迷町奇談

白Ⅱ

第1話月迷町へようこそ

 この町には日は昇らない。空には星が無く、ただ月だけが浮かんでいる。しかしこの月は酒にでも酔っぱらったのか、ふらふらとアチコチに滅茶苦茶に動き回る。

 ある時は突然三日月が南の空へ。

 そう思うと西の空に満月があったりする。

 そんなわけで一日中夜のこの町は長い長い夜更かしの町だ。

 夜更かしの間この町の住人たちはなにをするか?それは読書だ。

 この町は読書家に愛された本の町。

 様々な本当に様々な本がこの町にやってくる。中には魔法を宿した魔法の本なんかも書棚に並ぶ。

 そんな本を求めて、魔法使いたちもこの町に多く訪れるという。

 今日も希少な本を求めて、或いは夜が明けないこの町で本を読み続けるために、読書家たちがこの町に訪れる。

 かつてこの町に訪れた詩人がこんな詩を詠んだ。それを書いてこの町の説明を締めくくりとしよう。

 「月が迷って夜が明けない。誰が読んだか月迷町(げつめいちょう)」

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