第2話語られる始まり
その空間だけ、まるで美しい絵画のように
存在していた。
花が咲き乱れた庭に置かれたガーデンテーブルとガーデンチェア。
優しい風に靡く美しいブロンドヘアーをした
二人の女性が向かい合わせに腰を掛けた。
アンティーク調のポットからハーブティーの
香りが漂う。
「今朝、摘んだものよ」
優しく笑う女性の顔はとても美しい。
この庭に見合うにはこの容姿でなければいけないのではないか、それほどまでに幻想的な姿をしている。
「あなたがここに来てから、もう一ヶ月経つのかしらね」
まだ幼さの残る顔をした少女のティーカップにハーブティーを注ぐ。
「ありがとうございます。
この香り…落ち着きます」
少女は微笑むが、その笑顔には寂しさすらも
感じさせた。
「今日は暖かいわね。
どうかしら、お話しましょうか」
「話? 何の話ですか」
「シンシアクルス、あなた自身の話が
聞きたいわね」
女性はシンシアと呼ばれた少女の顔を見て
意地悪げに微笑む。
困るシンシアの表情が、そんな笑顔にしてしまう。
「私の話なんて、何を話していいのか」
「そうね…、生まれはどこなのかしら?」
「生まれ…、生まれはサントルヴィルです」
「あら、随分な都会なのね」
「そこで暮らしたのは五年ほどで
私が病弱なこともあって引っ越したんです」
風が吹き揺れる草木の音がシンシアから言葉を紡ぎ出してゆく。
あの日、あの時、何があったのか。
その時まで幸せだった事が今では胸を締め付ける思い出にしかならない。
それでも、彼女になら話せるのかもしれない。
彼女と私は同じなのだから…。
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