第5話 探索

地獄の朝は朝ではなかった。一日中空は赤く、黒の雲がふよふよと浮いている。

もちろん地獄には夜もない。

ここで暮らしている人たちは時計だけが頼りでみんな肌身離さず常に持っている。

朝のはずなのに気持ちよくない。

夜のはずなのに眠くならない。

こっちに来て1日目でもう太陽と月が恋しくなってきた。

時計を見ると9時だった。

「確か、11時に門の前集合だったな。」

今日は早速俺達と同じようにアウトヘルの人達を探しに行くらしい。灯の他にもあと3人いるそうで今日が初対面になる。

「なんか、緊張するなぁ。」

俺は約束の時間までぼーっとしていた。






「一真!こっちだよ〜!」

「ごめん、ちょっと遅れた!」

「ううん、私達も今来たとこなの。」

初デートの待ち合わせか!とツッコミそうになったがぐっと堪えた。

「この子が昨日言ってた子ね。」

「そう!一真、3人を紹介するね!」

「頼むよ。」

「じゃぁ、まずは〜成海から!」

そう言って、真ん中のショートカットで眼鏡の女の人が一歩前に出た。


成海なるみよ。よろしくね。」


「よろしく。」

物静かそうで上品な顔立ちにキリッとした目をしていた。いかにも生徒会長やってました!って感じがする。ていうか、胸が大きい。なんて素晴らしいんだ!形も完璧じゃないか!

灯のとは比べもんにならないな。

「一真〜。」

「え?」

『バチッ!』

デジャヴだ…。

真っ赤になった頬を撫でているともう1人の女の子が声をかけてきた。

「大丈夫ですか?」

「あ、大丈夫だよ」

「良かったです!灯ちゃん怒らずと怖いんで気よつけ下さいね。」

「確かに…。これからは気よつけるよ。」


「はい!私、かえでって言います!よろしくお願いしますね!」


茶髪のロングヘアーをポニーテールでくくっている。

顔はおっとりとした顔でなんて言うのだろう。萌えって感じの顔だ。

そして、すごい巨乳だ。(灯の方は見ないでおこう…)

ここで誤解を生むかもしれないので先に言っておくと、俺は貧乳が嫌いなわけではない。もちろん貧乳にも良いところはたくさんあるのだが、巨乳と貧乳を並べられると男という生物は大体巨乳に行ってしまうものだと思っている。


「俺は貫太かんたや!よろしくな!一真!」


「あぁ、よろし…」

「いや〜、ほんまよかったで!今まで男1人で寂しかったんや!いや、ハーレム状態やったからそれは悪なかってんけどな?やっぱ、ちょっとアウェイ感あるやん?お前が来たって聞いた時、俺めっちゃ嬉しかってん!」

このおしゃべりの関西人はとりあえず黄色にツンツンの超目立つ髪型をしている。

瞳も薄黄色で耳が少し尖っている。

人間じゃないみたいだ。

「さ、自己紹介も終わったことだし早速探索に行こっか。」

灯がそう言うと急に空気が変わり場が引き締まった。

「久々の探索やなぁ、楽しみやわ!」

「貫太さん前みたいに無茶しないでくださいよ?」

「大丈夫やで楓!毎日修行してんねんから前の俺とはちゃうんや!」

「それいつも言ってるじゃない。」

「今回はちゃうんや!」

「はーい、そこまでにしようね。一真ここから先は獄獣ごくじゅうが出るから気よつけてね。」

「獄獣?」

「ここで説明するよりまだ見て確認した方が早いで一真!」

「それもそうだね〜。」

おいおい、目で見るよりも先にせつめいしてくれなきゃ、心の準備が…。

「一真さん!大丈夫ですよ、獄獣が出て来ても私たちで守りますから!」

よく見るとみんなの腰のあたりに何かあった。

「みんな〜、当たり前だと思うけど閻獄器えんごくきの確認はした?」

「あたりまえや!」

「できています!」

「準備完了よ。」

灯は弓と矢を入れる袋。

貫太と成美は刀。

楓は…小刀を2本。

全ての色は黒で染まっておりそれぞれの違う場所にドクロのマークがある。なんて厨二心をくすぐられる造形なんだ。

… てか、本当にこの世界は獄って言葉が好きだな。


「よし、じゃぁ行くよ!一真、私達から絶対離れないでね。じゃないと死ぬからね!」

おいおい、随分と簡単に言ってくれるな。

しかも死ぬって、もう死んでんだから。



『ギイィィィィ…』


扉が開き俺たちはヘルヘブンの中から外に出た。

この先で何が待っていて何が起こるかなんて俺にはわからないが多分他の4人はわかっているのだろう。


『バタンッ!』


重い扉が閉まる音がした。

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