第4話 判決

どのくらい時間が経っただろうか。

灯に抱えられながら俺は若干気を失っていた。

「ほら!起きて!」

「う…ん……」

「あそこが閻魔様のいるお城 -獄城-ごくじょう よ。」

「獄城ね、なんかそのままつけた感じだな。」

「昔からその名前だったらしいからね〜」

「名前つけた人の顔が見て見たいよ。」

城の扉の前に着くと灯の翼はみるみる小さくなり背中の中に入って行った。

それにしても服は破けないのか?どうゆう素材の服なんだよ。

「さ、着いたよ。早速閻魔様のいる最上階まで行きましょ。」

「今更なんだけど、ちょっと緊張してきたなぁ…。」

「さっきまでの威勢はどうしたのよ〜」

「あれは、なんとゆうかここについてテンション上がってたとゆうか…」

灯の顔がやれやれみたいな感じになりスタスタと扉を開けて中に入って行った。

「おい、灯!待ってくれよ!」

中に入るとなんとゆうか、城の中そのものだった。

中学校の修学旅行で大阪城に行ったけど俺が覚えている範囲では中の風景が全く一緒だった。

「現世の大阪城と同じ作りになってるのよこの城」

まるで俺の思っていたことを読んだかのように灯は言った。

「なんでなんだ?」

「そこまではわかんないけど。閻魔様の趣味かもね。」

ふーんと俺は頷き灯の後をついて行った。

「まぁ、ひとつ違うとしたらエレベーターがあることかな。」

そこを妥協するのか。せっかく同じものを作るならエレベーターなんてつけちゃダメだろ…。

一階に降りて来たエレベーターに乗り灯最上階の59階を押した。

「59階ってまたえらく中途半端だな。」

「地獄の獄の字をとって59階までにしたらしいよ。」

語呂合わせかよ!




「59階です。」

エレベーターアナウンスがそう言いドアが開いた。

「地獄行き!!!!」

鼓膜が破けそうな勢いのとてつもない声が正面から響いた。

目の前には10メートルくらいの大男がこれまた大きな椅子に座っていた。

「一様聞くけどあれが閻魔様?」

「そうよ。想像どうりでしょ?」

「想像どうりってゆうか何とゆうか…。」

俺の想像をはるかに超えていた。

まず顔。鬼のような顔とはまさにこのことを言うのだと思えるほど怖い顔をしている。

眉毛も髭もぼーぼーで逆にそれがまた怖さを増していた。

体も横幅がでかく筋肉質な体つきだ。

「次の者!!前へ来い!!」

「君のことだよ。」

「ついた瞬間いきなり俺かよ!もっとこう…ドラゴンボールの地獄みたいに行列とかできてないのか?」

「あれは漫画の中のお話で今は現実世界のことだからね。さ、はやく行かないと閻魔様また怒鳴るよ。」

俺はまたあんな声を聞きたくなかったので急いで閻魔様の前まで行った。

「……。」

目の前で見るともっと高くて威圧感があった。

少しでも反論すれば殺されそうだな…いや、もう死ん出るんだった。

「貴様、名前は?」

「はい、ええと…。」

「どうした、自分の名前すらも言えぬのか!」

「はい!!すいません、なんか自分の名前だけ思い出せなくて…その…」

「名前が思い出せないだと?」

「はい………すいません。」

閻魔様は少し考えてから灯を呼んだ。

「灯、この者の話は本当か?」

「はい、私が聞いた時も同じことを言っていましたので。」

「だとすると…いや、まさかな」

「あの〜、」

「なんだ、名前を思い出せたのか?」

「あ、そうじゃなくて、僕ってどうなるんですかね〜」

「お前の刑はもう決まっておる。」

閻魔様はそう言い木槌をカンカンと二回叩き

「判決を言いわたす!!貴様は、地獄生じごくせいとして無期懲役だ!!!!!」





判決が終わり街をブラブラと歩いていた。

一見したら都会の街並みだが生活している人たちがまるで違う。

まず、人間がちらほらとしかいないことだ。大半は人間以外の生物が生活している。

それでも、それぞれ家庭を築き子供もいたりしている。とても幸せそうだ。

「地獄生……か…。」

言われた時はどんな酷い刑なのだろうと泣きそうになったが、実際は俺みたいなヘルヘブンから離れたところで見つかる奴は珍しいらしい。

大概死んだ人間はヘルヘブンの中で目を覚まし自分の足で獄城まで向かうもんだと後から灯に言われた。

そんな灯も俺と同じく離れたところで発見された。

そうゆう人達のことをここでは -アウトヘル- と言うらしい。

特徴としてはいくつかあって、特殊な能力を持っていたり、体の一部が変わっていたり、年齢が若くなっていたり、俺のように何か大事なことを忘れていたりと色々ある。

地獄生は、そう言ったここにアウトヘルとして来る人達を保護し無事にヘルヘブンまで連れてくるための訓練や授業などをするところなのだと閻魔様から聞いた。

「死んでもまた勉強かよ…。」

人間とゆうものは何かを学ぶことから逃げられない運命なんだな。

そして、俺の名前についてだが閻魔様が勝手に決めた。





「あとは、貴様の名前を考えるだけだな。」

「え、名前つけられるんですか!?」

「あたりまえだ、呼ぶのにめんどくさいからな」

知らない人に名前をつけられるなんて…どんなプレイだよこれ。

「灯、なにか良い名前はないか?」

「そうですね〜、う〜ん…ポチとか?」

「俺は犬か!」

「だめ〜?いいと思ったんだけどなぁ。」

「では、獄死って名前はどうだ?」

この地獄オタクめ、何でもかんでも獄入れやがって。

「いや〜、それもちょっと〜。」

「よし、決めたぞ。お前の名前は今日から一真かずまだ。異論は受け付けない。」

なんだって…。

「意味も説明しといてやろう。一つの真実を見つけ出せと言う意味でつけた。自分自身にしか持っていない世界で一つ。真実の名前を見つけろと意味だ。」







「一真…か。」

皮肉なもんだなお前と一緒の名前つけられたよ。これが本当の罰なのかもな。お前を助けられなかった俺への…。

一真…地獄にいんのかな?いや、あいつならきっと天国だろうな。俺みたいなやつが地獄でいいんだ。また会えるもんだったら会いたい。今度こそ謝りたい。首を吊っていないお前に。


「一真!」

「灯…。」

「明日から早速授業だけど遅刻したらダメだよ?」

「わかってるよ。今日はもう帰って寝るよ。」

「学校の場所わかるよね?」

「おう、さっき見て来た。」

「なら安心だね!じゃぁ、また明日学校でね!」

「灯」

飛び立とうとしていた灯を俺は呼び止めた。どうしても言わなければならないことがあった。

「俺を見つけて、ここまで連れて来てくれてありがとうな。」

「それをするのが私達の刑だからね!」

「そうだな。」

「それじゃぁ、また明日ね〜!」


「私達の刑……か。」

なんとなくだが、灯の言ったその言葉に重みを感じた。

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