第3話 地獄都市

俺は小学生の頃好きだった女の子がいた。その子は少しませていてそれでもやはり子供だったのでそのギャップに当時の俺は惚れていた。

小学六年生の時、その子を放課後の教室に呼び出して告白をしたが結果はフラれた。理由は簡単なものだった。

「顔もタイプじゃないし性格もそこまで好きじゃない。」

はっきり言われた。

さらに彼女は去り際にこう言った。

「あ、あと私のことちゃんづけで呼ばないでくれる?

なんか気持ち悪いから。」

あの頃の俺にはハートブレイクショットをくらったような感覚だった。

その事があってから俺は少し女性恐怖症になったが、中学三年生の頃に初めて告白されその症状は治ったものの…未だに誰かの名前にちゃんとか付けるのが苦手だ。

まぁ、こんな話もう過去のことだからどうでもいいんだけど…じゃぁ、最初から思い出すなよって言われてしまうとなんとも言えない。





「なぁ、その街ってどれくらいでかいんだ?」

「そうねー、都市だから地獄では一番大きい街よ。」

「てことは、そこの他にも村とかあるってことか?」

「そうゆうこと。村ではないけどね。」

「…で、ここは一体どこで俺はなんで生きてるんだ?」

「そういえば話すって言ってたね。最初にも言ったとうりここは地獄よ。」

「だから、それが信じられないんだよ。」

「う〜ん…そうだね〜、周りを見渡したらわかるかな?」

そう、俺も薄々は気づいている。周りを見ると見たこともない生物がちらほらいる。さっきなんて人の骨みたいなの落ちてたし…。

「まぁ、百歩譲ってここが地獄なのは分かったけどなんで俺は生きてるんだ?」

「生きてる?ううん、君はもうすでに死んでるよ?」

「何言ってんだよ、今こうして地面に足つけて歩いてるし、心臓も動いてる。」

そう、死んだのならこんなことはできない。ただ冷たく固まって土に還されるだけ。

「何回も言うけどここは地獄だよ?死んだらみーんな地獄に来るのよ。」

「………。」

確かにテレビや本で見たことがある。

人は死ぬと必ず一度は地獄に行きそこで閻魔様に生きていた時のことを調べられてそのまま地獄行きか天国行きになるって。

あ、あと閻魔様に舌を取られるって聞いたこともあるな。

「俺はどうなるんだ?」

「それは私にもわからないよ〜、死んだ者の全ての権限を持つのは閻魔様だけなんだから。」

俺は自分で言うのもなんだがこの17年間真っ当に純粋に生きてきたつもりだ。勿論、犯罪なんて犯したこともない。確実に俺は天国行きだろうな。

「全ては閻魔様次第ってことか…。」

「そうゆうことよ。」

「で、あとどのくらいで着くんだ?」

「この森を抜ければ見えるよ………ほら!」

森を抜けた目の前にはニューヨークの街を想像させるようなビルがズラッと並んでいた。

真ん中には大阪城のような立派なお城があり、多分そこに閻魔様がいるんだろう。

ここからでも聞こえる人の声 声 声 まだ街までは2キロほど離れているのにここまで聞こえるなんてニューヨークもびっくりだろうな。(ニューヨーク行ったことないけど。)

「ふふっ、すごいでしょ?あそこで暮らしている人たちの声。」

「あぁ、まさか地獄がこんなに賑やかだなんて思わなかったよ。」

「現世での地獄のイメージは酷いからね〜、本当はそこまで犯罪を犯していない人の刑なんてそこまで重くはないのよ。」

「どんな刑があるんだ?」

「それは行ってからのお楽しみよ。」と、灯はクスッと不敵な笑みを浮かべた。

そこから俺たちは町の入り口で審査を受け中に入った。

「すげぇ…」

さっきは外側から見ても凄かったが中に入るともっとすごかった。

本当に巨大都市だった。

スーツを着たサラリーマンの人がいたり、子供やお年寄りまでいる。もちろん、想像してたとうり鬼や悪魔や妖怪みたいな奴らもいた。

(事前に心の準備しといて良かったー。)

初見で見たら発狂するレベルの奴もいたので尚更だ。

スッと灯が俺の前に立ち両手を大きく広げて行った。

「ようこそ!地獄都市! -ヘルヘブン- へ!!」

「ヘルヘブン?」

「そう、ここの町の名前よ。」

「地獄と天国…か。」

「どっちに行くのかは君次第。天国に行く人もいれば地獄に行く人もいる。全ては今まで生きてきた君への最後の試練。」

「わかった。じゃぁ、早速閻魔様のところに案内頼むよ。」

普通の人なら怖がったり、怖気ついたりするもんなんだろうが正直俺は少しこの置かれている状況に楽しさを覚えている。目の前には現実ではありえない物が動いたり生活したりしているのだから。

「覚悟はとっくにできてるようだね。」

「もちろん。」

「じゃぁ、君を今から閻魔様のところに連れて行くよ!」

「おう、どっちに向かって歩くんだ?」

「歩かないよ。」

「へ?」

『バサッ!』

音と同時に灯の背中から白い翼が生えた。肉眼でも認識できるくらい繊細に一本一本羽がしっかりと見え、灯の姿と合わせるとまるで天使だった。

「綺麗だ…。」

思わず声に出てしまうほどの姿だった。

「ふふっ、ありがとう。この翼、私の自慢の翼なの。これで閻魔様のところまでひとっ飛びよ。」

「なるほど〜、ってここに来るまでもその翼で来たら良かったんじゃないのか?」

「ダイエットよ。たまには歩かなきゃ。女の子は体重維持が難しいのよ。」

そんなもんなのか…。と思ってる時に灯はいつの間にか俺の後ろに回り、脇に手を回し俺を抱きかかえた。

「じゃぁ、行くよ!落とされないように私の手もちゃんと掴んでてね!」

「え、ちょっと待って!それに関してはまだ心の準備が…ってうわぁぁぁぁぁ!!!」

こうして、俺は灯の翼で閻魔様のところに向かった。

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