第2話 目を開けると…
中学生の頃仲が良かった友達が不良に絡まれていた。
俺は目があったのにも関わらずその場を後にした不良がただ怖くて自分の中で言い訳をしていた。
「俺が助けに入ったところで一緒にやられるだけだ…いや、もっと酷いことをされるかもしれない」
本当にただの自分を守るだけの言い訳…。
次の日からその友達は不登校になり俺は罪悪感でいっぱいになった。
もちろん俺が助けたところで一緒にやられるだけだから助けにはならなかったかもしれないが、彼にとっては俺が割って入ったこと自体が助けてくれたってことになったのかもしれない。
今日の学校終わりにあいつの家に行ってちゃんと謝ろ
う。
その友達の家に着きインターホンを鳴らしても返事はなかった。
「すいませーん」
………。
「電気ついてんのになぁ」
ここで日を改めることもできたがどうしても、今、この瞬間に誠心誠意を込めて謝りたかった。
助けてあげれなくてごめん…と。
「すいませーん!……入りますよー?」
ドアは開いていたとゆうより開いていることがわかっていた。
こいつの家には何度も来たことがある。
この家は基本的に鍵をかけない習慣らしい今の世の中では考えられない物騒なことをしていた。
家の中に入り部屋の前まで来た。
内心ビビっていた。
キレられたらどうしよう、泣かれたらどうしよう、無視されたらどうしよう、絶好なんて言われたらどうしよう…。
色々なことを思いながらドアノブに手をかけ扉を開いた。
「嘘……だろ……。」
目にした光景は首を吊って宙にブラブラと揺れている友達の姿だった。
目は半開きで口からは苦しそうに舌を出し下は失禁していた。
「な、なんで…こんな………なんで!!!」
俺のせいか?
あの時俺が助けなかったから…少しでも声をかけなかったからか?
その場でいろんな葛藤をし、俺はその場で意識を失ってしまった。
それがあって以来俺は助けること、つまり誰にとってもヒーローになろうと思った。
それに、あいつへの償いの意味でもあった。
二度と同じ過ちは繰り返さない。
俺の目の前で人が死んでるのは見たくない…。
ま、もう俺が見ることもないだろう、あの小学生トラウマになってなきゃいいけど。
せっかく俺が命かけて助けてやったんだからしっかりと生きて欲しいもんだ。
「…………。」
ん?誰か俺のこと呼んでるのか?
「………きて」
「お……きて!」
誰だ俺は今人生を振り返ってるんだよ。
そっとしておいてくれ…。
「お〜い!起きて!」
目を開けると空が赤く黒色の雲が漂っていた。
「やっと目を覚ましたね。」
「ここは……」
さっきいた場所とは全く違っていた。
「ここ?ここはねー、地獄よ!」
「………へ?」
意味がわからなかった。
「どうしたの?鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして」
「そんなもん言われて信じるわけないだろ」
「まぁ、無理もないよね。自分が死んだことを認めたくないのはわかるがこれが現実よ。」
「俺が死んだことは誰よりも俺が一番知ってる……あぁ、そうかこれは夢か!そうに違いない!」
「うんうん、私も最初はそんな風に現実逃避したんだけどね〜、残念ながら本当のことだよ!」
嘘だろ…確かに俺は小学生を助けるためにトラックの下敷きになった…それで死んだのもわかる。
けどどうしてだ?空気も吸えるし、手足もちゃんと動く…なにより、心臓が動いてる…。
「まぁ、とりあえずここで立ち話もあれだからー詳しいことは街に行って話そう!」
「街?」
「そう!街よこの地獄で一番の大きな街!そこで死者の地獄行きか天国行きかを決めるのよ〜」
頭がおかしくなりそうだ。
「わかったよ、じゃぁその大きな街について行ったらここがどこでなんで俺が生きているのか教えてくれんだな?」
「あー、その辺は向かう途中で話してあげるよ」
「で、その町に着いたら何するんだ?」
「それを向こうで話すのよ〜」
なんだかわからんがここはこの子について行くとしよう。どっちみち何もわからないままじゃこの先どうしようもない。
「わかった。それじゃぁ、ついて行くよ。」
「うん!自己紹介まだだったね!私の名前は、
伊藤 灯…ついさっきまで気にしていなかったけどよく見るとすごく可愛い。
髪はロングで肩まである綺麗な黒髪だ。体型も細くもなく太くもなく丁度いいし何と言っても顔が整っている。
ぱっちり二重の目にスラっと鼻がなっているし肌も綺麗だ。
けど、ひとつ残念なことに胸が足りない…おしいなぁこの子。いや、これから成長して行くかもしれないその過程を是非見て見たいものだ。
「あれ〜、さっきからまじまじとどこ見てんのかなー?」
「え?いや、そのー……焦らなくても胸はちゃんと成長するよ!」
瞬間に頭が大きく右に向いた。強烈な平手打ちだった。俺の体が宙に浮いたんだから…。
「次胸のことに対して少しでも触れたら…ね!」
「はい…すいませんでした。もう二度と言いません」
「それでいいのよ。で、君の名前は?」
「俺の名前は………なんだっけ?」
「え?どうゆうことよ」
あれ、おかしい…自分の名前が思い出せない。一番忘れないであろう自分の名前を忘れてしまっている。
「……まさか、君……」
「いや、本当に!嘘はついてないって!神に誓って!」
「…いや、なんでもないわ。ふふっそれに神ってここは地獄よ?神様になんて誓っても届かないわよ。」
「あ、それもそうか (まだ信じてないけど)」
「とりあえずあなたの名前は街についてから考えましょ」
「そうだね」
「じゃぁ、出発するわよ。ちゃんとはぐれないようについてきてね。」
「わかったよ灯」
「ちゃん付けでもいいのよー?」
「いや、俺は人に君とか、さんとか、ちゃんって付けるの苦手なんだよ」
「変わってるね君」
「ははっ、よく言われるよ」
俺たちはまだしらなかったこれから待ち起こる戦いの日々を…。この時は俺も灯も予想だにしていなかった。
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