第6話 右に左に

 気が付いたら、膝の上に、無垢な少女の裸身をそのまま抱いていた。

「そ、その、つまりだ。緊急事態だったから……ごめん」

「……いいえ」

 少女ははにかんだように微笑んだ。

「ありがとうございます。あの……」

「俺はルロイだ。あんたは」

 少女は困ったように小首をかしげる。名を聞いたつもりだったのだが、そこは聞き取れなかったらしい。

 まあ、名前なんて、後でもう一回、訊き直せばすむことだ。ルロイはそう思って気を取り直した。

 まずは、この狭い横穴から出て、密着した状態を何とかしなければならない。


 ふと、少女が声を上げた。もじもじと恥ずかしげに身体を揺らす。

「ごめんなさい。何か、棒みたいなものが……つっかい棒みたいになってて動けませんわ。これは何かしら」

 少女がもじもじと恥ずかしげに身体を揺らす。

「は!?」

 腰の上で揺れ動く身体。ルロイはたちまち赤面した。そ、そ、そう言えば。

 もしかして。いや、まさか。

 ……と言い逃れするには、あまりにも自分自身の身に覚えがありすぎる。まずい。


「ごめん、すぐ引っ込める」

 と言っても、すぐに収まるような荒ぶりではないのが困りものだ。

 少女はおっとりと、少し困り顔をしながらも微笑んだ。

「大丈夫ですわ。少し横に倒せば」

「横!?」

 きゅっ、と。

 服越しとはいえ、直接、少女にその”棒”なるものを握られて。

 ルロイは、びくん、と身体を反らした。

「はう!?」

 ルロイは眼を白黒させる。

「う、う、うわわ、いいよ、触らなくても、その……わあっ!」


 自分が何を握ったのか、どうやら少女は気づいていないらしかった。おどおどと顔を赤らめながら、身体のどこかにひっかかったというを、何とかして抜きはずそうとして、右に左にと動かしている。

「もう少しで外れますわ。あら、うまくいかない……ごめんなさい……」

「あう、あう、はうう!?」

「もう少しですわ。お待ちになって」

「うううううう!」

 こともあろうに密着した全裸の少女に、大切なところを右に左に弄ばれて、ルロイは煩悶する。

「も、もういいから。俺が、さ、先に、外に出るから……!」

「分かりましたわ。ではお願いいたしま……あら」

「わわわわ!」

「あら、まあ、大変ですわ」

 ルロイが身体の位置をずらしたせいで、下半身がちょうど少女の顔の真横に移動している。

「さっきの棒が、お洋服のポケットから飛び出しそうになっていますわ」

 少女はそう言うと、ルロイの服の隙間から、直接下半身に手を入れた。まさぐるようにして触れる。

「あら?」

 ごそごそとしながら困惑の声を上げる。

「困りましたわ」

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