娼館にて 二

 俺はアシアンに「服を脱いでもらってくれ。俺じゃあ、脱がせられない」と囁いた。

 アシアンが微かに頷く。

「服を脱いでくれ」

 なかなか女の子に言える台詞じゃないね。服を脱げなんてよ。

「まあ、せっかちね。どこを見たいのかしら?」

 ショワナがアシアンを誘うように、ゆっくりと服を脱いで行く。一枚、また一枚と。

「ふふ、脱いだけど」

 天鵞絨(ビロード)のベッドカバーの上に横たわったショワナ。白い体を赤い天鵞絨(ビロード)のベッドカバーの上に投げ出して、思いっきりくねらせる。ショワナが動く度に胸が揺れて。

「この犬が君を舐めている所が見たい」

 ショワナが、一瞬、えっという顔をしたが、そこはベテランの娼婦。すぐに婉然と笑って俺達を見上げた。

「まあ、変わった注文ね。いいわよ。いらっしゃい、チビちゃん」

 やったー。俺はアシアンの腕から飛び降り、寝台に飛び上がった。女の胸にしゃぶりつく。

 ああ、柔らかい。肉球にあたる胸の膨らみ。

 極楽!

 と思った瞬間! 

 え?

 あれ?

 手から毛が抜けた?

 ていうか、人の手だ。

 ええええ、なんで?

「きゃあああああ、犬が! 犬が!」

 ショワナが思いっきり悲鳴を上げて気を失った。

 振り返るとアシアンが驚いた顔で俺を見ている。

 俺は壁に掛けられていた鏡を見た。

 俺だ。人に戻ったんだ。

「おい、どうした?」

 部屋の外から用心棒の声がした。どんどんと扉を叩く。

「今の悲鳴はなんだ? 開けろ! ここを開けないか!」

「早く隠れて」

 俺は急いで寝台の陰に身をひそめた。アシアンが扉を開ける。

「すまない、俺の犬が女のケツを噛んでよ。わかるだろう。それでびっくりしたのさ」

「それにしちゃあ、すごい悲鳴だったぜ。お客さん、悪いが中をあらためさせてもらうぜ」

 アシアンは扉に手をかけ「それは無粋ってもんだろう」と用心棒を押し止める。

「女の子に何もないんだったら中をみたって構わないだろうが」

 アシアンは仕方なく扉をあけ、用心棒を通した。

 用心棒が寝台に近づいくる気配がする。俺は見つかると思って身を縮めた。

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