地下道 二
しかし、佐百合が俺を突き飛ばした。
「いや、いやよ。良ちゃんのバカ! いつもいつも、私が思い通りになるなんて思わないで!」
しまった、やり方を間違えたか。
走り去る佐百合を俺は追いかけた。
「ごめん、佐百合、待ってくれ」
俺は佐百合の腕を掴んだ。
「いや、離して。私、良ちゃんと別れる。別れるんだから!」
佐百合が俺の手を振り払おうとする。俺は腕に力をこめた。
「ようよう、痴話げんかかい? お二人さんよ」
チンピラだ。しかも三人。背の高いリーダー格の男、愚鈍そうだが相撲体型のデカい男、パンチパーマをかけた凶悪な顔をした男の三人だった。一人ならなんとかなりそうだが、こいつはちっと分が悪そうだ。背の高いリーダー格のが言った。
「あんた、趣味悪いな。これが女かよ」
「失礼な事を言うな!」
俺は叫んだ。たとえチンピラ達のいう通りだとしても、たとえ結婚詐欺師のカモであっても、今は俺の女だ。俺が佐百合を守るんだ。
「ようよう、兄ちゃんよう。あんた、ホストかなんかだろ。そうでなきゃ、こんな女をあんたみたいな男が相手にするわけないよな、へっへっへ」
「きさまら、何の用だ!」
「良ちゃん、行きましょう。相手にしちゃダメよ」
佐百合が俺の袖を引っ張る。
「けっ! ブスは引っ込んでな。おい、金だよ、金! 金だしたら、見逃してやるぜ」
パンチパーマをかけた男が凄んでナイフをちらつかせた。
「さっさと財布を出せよ」
相撲体型のチンピラが佐百合のバックに手を伸ばす。次の瞬間、俺はその男を殴っていた。
「いてぇ! きさま、何するんだ!」
俺は佐百合の腕を掴んで走った。
「きさまら、まてぇ!」
チンピラが追いかけてくる。人の多い所に行かなければ。俺は佐百合の手を引っ張って地下道を走った。地下道の角を曲がった先に強い灯りが見えた。ありがたい。誰かいる。車のライトか?
「こらー! 待ちやがれ!」
追いつかれそうだ。俺は佐百合を引きずるようにして走った。長い。この地下道、こんなに長かったか?
出口だ。
え? なんだ、この光は? まぶしい!
俺と佐百合は光の中に飛びだした。
「うわぁ!」
突然の浮遊感。地面がない。
落ちる! 落ちる! 落ちる!
気が付いたら見知らぬ男達が俺を覗き込んでいた。
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