第8話 滋賀県高島市安曇川町上小川 藤樹書院
琵琶湖の西側をのんびり旅した。
湖西線を途中下車しまくる感じで一日を費やし、夜に福井県福井市に抜ければ、次の日の用事に間に合う。旅のペースはそんな感じだった。天気は最高に良かった。
堅田、近江高島ときて、安曇川という場所に降り立つ。事前情報一切なし。駅で周辺の観光情報を見てから、自転車を借りる。返却時間を確認(何時だったか、もう忘れてしまったけれど)。
琵琶湖を見たかったので、一路安曇川の街を東へ。田園地帯を抜けて、琵琶湖に到着する。住宅地や、簡単な工場が続く場所が途切れ、砂浜と、いくばくか護岸された沿岸が眼に入る。内海の波はたいへん穏やかだ。浜辺の砂は多少の粗さを持っている。海のような広さなのに、明確にオリジナリティのあるたたずまい。これが琵琶湖。
遠く、旅してきた大津市方面を見遣る。あちらのほうは都市が琵琶湖に接近しているのでがっちり護岸されている。それと同じ水面で繋がって、ここでは砂浜に静かに打ち付けている。古代の人々が淡海と呼んだ場所を堪能する。あたしゃー北海道生まれだからこういうところは堪らない。北海道には、摩周湖とか阿寒湖とかトーヤレイクなど栄えある湖がたくさんあるんだけど、自然に密着しすぎている。人々の営みに最接近する湖ってのはなかなか体験できない。
しばらくたたずんでから、一路、街中へ。先程駅で確認したところ、安曇川という街は中江藤樹という学者のゆかりの地であるのだ。
中江藤樹。陽明学者だ。日本史Bで出てきた人物! 江戸初期、元禄文化のあたりで出てくる学者だ。江戸時代の文化史は大変煩わしく、内実を知りもしない(教わりもしない)学問の学派と主要人物を延々覚えなくてはならない。そんななかの、一人。中江藤樹は400年ほど前に、この安曇川で生まれたのだという。
藤樹神社という社がある。参拝する。仕事や勉学が上手くいきますように。
隣にある中江藤樹記念館は休館日だった。残念。
しかし、中江藤樹の私塾である藤樹書院は開いているとのこと。そこへ行く。建物自体は明治の再建だ。中を見学する。受付の女性がおり、会話する。これがとてもよかった。中江藤樹のことや、書院に残されるものの由来を熱心に教えてくれる。現在でも藤樹にちなんだイベントがあるのだそうだ。熱のこもった話ぶりに藤樹への敬愛の念があることを感じる。
藤樹書院の隣には良知館という休憩所がある。お土産なんかも買える。ここで、偶然先ほどの女性と参会。少し会話したことを覚えている。
藤樹の来歴もじっくり学べたし、地元にしっかり息づいていると思えるような、そんな出会いがあった。
こういう風に、江戸時代の思想史や文化史にでてくるいろんな人物の故郷を訪ねれば、もし試験に出てきてもばっちり答えられるだろう、などと思った。
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