第5話 神奈川県中郡大磯町 国道一号線
何か縁のある土地がある。この大礒と言う場所もその一つだ。
始まりは、札幌のどこかで見かけたチラシだった。大磯の郷土資料館のチラシ。どうも気になって東京に出張の後立ち寄ることにした。旅を終えた後、親戚が大磯にいることが解ったり、大磯の人と一緒に仕事をすることができたり。
梅雨明けの時期だったと思う。天気が良かった。駅に降り立つ。歩いて坂を下りて国道へ出る。大磯町は湘南地域に属する。大磯ロングビーチがある。ビーチには行かなかったけれど。国道一号線を西へ。東海道。
こういう、古代以来の由緒ある道路を一度歩いてみたかったのだ。江戸時代などは、ふんどし姿の飛脚とかも走ったことだろう。どこか遠くへ行く車も、この辺りに住む人も、なんだか同じように息づいているような感じを覚える。
途中、交差点の向こう側に
国道一号線はせまい。私が北海道出身だからいけないのだけれど、国道一号線っていうのは、もっと、こう、パッとするべきだ。航空機が着陸できるくらいの、幅も広くてまっすぐなのが国道一号線だろう! 片側8車線くらいの!! 違うかね!! 違うな! うん。
実際には国道一号線はそんな実利なんかよりも歴史の重さで一号線たり得ているのだ。なんせ東海道だ。それにぶっとくてまっすぐなのは、高速道路やバイパスや新幹線が代替している。国道一号はもう、「名誉道路」だ。
せまいからこそ、住宅なり商店なりが近くにあり、街路樹で彩られ生活に身近な道路で、人々の息遣いを感じる。効率重視の高速道路の味気なさ(これはこれで楽しいのだが)はみじんもない。道路として「日常的に使われている」感じがする。良かったね一号線。そのたたずまいが良い。
そんなところを、歩く。
郷土資料館は小さな施設で、ちょうど関東大震災の展示をやっていた。地曳網の展示もあった気がする。近くの小山に上る。公園の様になっている。遠く西の方を望む。晴れているけれど、霞んでいる。でもずっと続いているんだろう。なにせ一号線だからだ。ブランドとしては第一級。信頼のある道路だ。きっと大阪まで続いているという、そんな確信がある。
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