第4話 北海道空知郡沼田町 沼田町化石館

 秋が深まる時期に、空知郡沼田町に行ってきた(秋に旅してばっかりだな)。


 沼田町は、石狩平野が終わるところ。そんなイメージがある。広い広い北海道。一番広い平野が石狩平野。石狩川の湿地帯を魔改造して、人々は稲作ができる大地に造り変えた。その行き着くところ。沼田町。


 札幌から目指せば、当別、月形、浦臼、新十津川、雨竜、北竜。寄り道すれば滝川、深川、妹背牛、秩父別。いわゆるロードサイド文化というものだ。札幌から旭川へ抜ける幹線道路。ひたすら道の駅とガソリンスタンドが連続する。

 ひたすら稲作! そしてトマト! その他野菜! この辺りの道の駅は、なんだか同じような品目が並ぶ。当たり前だ。同じ平野で同じように産業が成り立っている。

 沼田町の先、北側はもう、山だ。

 一大河川石狩川は東にある深川市から上川盆地を貫く。

 収穫の終わった水田や、農協の巨大な貯蔵施設が続く。沼田の街の中に化石館の古い建物がある。昔ここに来たことがある。今回はここが目的地ではない。

 沼田町の北側を目指す。次第に山が近づいてくる。それでも付近には水田が続く。しばらくすると山の中に入る。その向こう側に、沼田町化石館「化石体験館」がある。町中にあった古い建物は研究棟として使われ、山中にある新しい建物が展示や体験をする場所になったようだ。


 平野が終わり、山が始まる場所。土地に規定された大きな産業のあり方が一区切りするところ。続いてきた広大な営みが、終わる。ついえる。


 実際には、石狩川のさらに上流の上川盆地でも稲作はやっているし同じような産業はある。けれど、山にぶつかる沼田町は石狩平野の種々の都市のうちでも、特別な場所と感じる。ちょっとだけ切ないと感ずる場所だ。


 沼田町ではカイギュウの化石がでる。他にびっくりするのがタカハシホタテという今ではもう見られない、絶滅したホタテの化石だ。とにかく大きい。アホみたいに大きなホタテだ。沼田町の川底には、タカハシホタテの化石が眠っている。アホみたいに埋まっている。夏に実施された子供たちの化石発掘会の様子を撮影した写真がある。

 タカハシホタテは身体を大きくし、殻を厚く堅牢にすることで身を守ったという。一方、現在生きているホタテは、CMとかで見たことがあるけれど、水中をピョンピョン逃げる。静か動か。生き残ったのは後者た。動けないと、捕食者にいつかは食べられてしまうのだという。それでの何百万年も生きていたのだから、ヤワなホタテじゃなかったはずだ。そう信じたい。

 大きなホタテ。美味しいんだろうか。化石館の向かいの温泉に入りながら考えた。


 海の生き物がいる山の化石館から出てきて、いつも暮らしている石狩平野に戻る。暗くなってから札幌にたどり着いた。

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