第2話

 封筒を開けると、たくさんの詩が便箋の中に収められていた。初めて読むものばかりだったからオリジナルのものだろう、どこか優しさを感じる詩。誰が、作ったんだろう。

 最後の一枚の便箋は、詩ではなく手紙だった。


藤田くんへ。

私の言葉、本気にはしてくれなかったと思う。

そうだよね、信じてくれなくて当たり前だよね。

けど、あなたにだから言えたんだよ。

机上詩同好会を作ったのも、最後にあなたと一緒にいたかったから。

きっとこの手紙を読んでいる時には、私はもう死んでると思うけど

最後に言うよ。私はあなたが好きです。

だから私のクラリネットの音色を聴いて、

いつまでも、覚えていて。


平川 琴美  


 コトミ。聞き覚えのある名前。それは先輩が「恋し恋された少女」として前、話してくれた名前。亡くなってしまった一人の少女の名前。

 見てはいけないものを見てしまった気がした。この、おそらく最後であろう手紙を持ち歩くくらい、先輩はまだ、彼女への想いを持ち続けているってことではないか。

 つまり──失恋。

「いや、本人に直接聞いたわけじゃないし! たまたま持ち歩いているだけかもしれないし!」

 ひとりごと。誤魔化し? もちろん、自覚している。

「それでも好きって、ダメかなぁ……。それでも好きになってくれないかなぁ……」

 贅沢だってことは解ってる。けども、諦めたくはない。

「そっか、クラリネットかぁ……」

 途中で辞めた中学の吹奏楽部以来吹いていなかったそれをもう一回練習してみようかな、と思ったのは気の迷いだろうか。

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