第14話 ほっこり
『ほっこり』
彼女がよく使う言葉。
癒されるとか安心するとか、まぁ安らぐということなのだろう。
彼女が求めているものは、彼氏とかではないのだろう。
きっと、自分が安心できる場所…それを約束できる人。
彼女が求めているものを僕は与えられているのだろうか…。
肉体的な関係を持たずに彼女を想い続けるということだ。
正直に言えば…2ヶ月以上SEXはしていない。
それもツライのだが…なによりツライのは彼女が僕とのSEXを求めていないということがツライ。
彼女が僕に求めているのは、そういうことではない。
できれば、彼女の理想に近づきたい…だけど僕には、やはり彼女と繋がりたいという気持ちがある。
4コマ漫画なら…。
「お帰り」
「食事は?」
「外で済ませてきた」
「シャワーは?」
「外で済ませてきた」
「SEXは?」
「外で済ませてきた」
そんな関係を続けるということ。
彼女にとってSEXとはお金が発生する行為。
そう言ってしまえば言い過ぎだが…そこが職業柄という事実も飲み込まねばならない。
理解が出来ないわけではないし…彼女にとって僕は、そこまでの相手ではない。
僕の好意は嬉しい…けれど、それに応えることはできない。
これは現実…これが現実。
LikeとLoveの間。
彼女にとって居心地のいい場所はソコにある。
僕も同じ位置で足踏みしていれば良かったのだろう。
でも…今は…。
もし、お金があれば…彼女とは、もどかしい恋愛を愉しんで、SEXは他の嬢で済ませばいい。
それが一番うまくいく。
それが出来ないのは…お金がないから…いや、たぶんお金があってもしないだろう。
きっと同じように空しくなるだけ…。
彼女の特別になれない…それが薄々解っているから僕は空虚感に包まれていく。
送らされているだけ…メシを奢っているだけ…そんな思いが湧いてくる。
事情を知る友人の意見が正しい。
使われているんだよ…。
想いを心に沈めたままで逢えるなら…そもそも、なぜ逢おうとするのだろう。
別に何があるわけでもない。
それでも…彼女といると笑っている自分に気づく。
彼女といるとき以外に笑うことなどない。
昨夜もハンバーグカレーを頼んでおけと言われてフードコートで待っていれば、自分で買ってきた蕎麦を食べ始めた。
具は食べない、蕎麦だけ全部食べて具はカレーに入れようとした。
かまぼこ・油揚げ・大根おろしをだ。
しかも本人はソレを食べる気はないのだ。
そもそも、めんたいこ好きか?と聞いてくる、本人はめんたいこ蕎麦だと思ったというのだが…赤い大根おろしを、めんたいこだと思っていたようだ。
なんだと思っていてもいいのだが…他人に食わせるカレーに入れる具材ではない。
食事は独特。
考え方も世間一般とはズレている。
彼女が好きになる男というのは、どういう男なのか想像できない。
過去の恋人は彼女と、どういう付き合い方をしていたのだろう。
僕は…抱きたい、抱かせたくない、その気持ちを抑えなければ彼女と逢うことすらできない。
彼女はどうなのだろう…どんな気持ちで僕に接しているのだろう。
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