第15話 愛したい…愛せない
寂しい思いさせてごめんね。
彼女からメールが届いた。
いいんだ。客でも、恋人でもないんだから…当たり前なんだよ。
自分で書くと、嫌になる。
今日も独りで、彼女の思い出巡り。
アメリカのドライブインを彷彿とさせる店。
店主のアメリカ人なのだろうか…とりあえず外国人の女性だ。
以前、彼女と来た時には、パンケーキを食べたのだが、ステーキやハンバーガーを食べてみたかった。
ランチにしては量が多い300gのステーキセットとカプレーゼ。
僕にしては贅沢な昼食だ。
カプレーゼが美味しい。
(彼女トマト嫌いだったな…)
15:00過ぎ、ランチタイムは終わり、ディナーには早い空いた店内。
僕の他には、女性2人の楽しそうな会話が聴こえてくる。
(彼女も声が大きいんだよ)
食べ終わる頃、若いカップルが入ってきた。
「おしゃれなお店」
男性の声がする。
きっと初デートなのだろう…会話がぎこちない、男性が相当に無理している様子が声のトーンで良く解る。
女性は冷めた感じで、適当に相槌を打つ。
(ダメっぽいな…)
店内を後にして思ったのだが…独りのランチに随分と慣れてきた。
彼女と逢うのはいつも夜。
昼食は摂らないことが多い。
気を遣わなくて楽なはずなんだけど…好きなものを食べれるし…だけど…。
楽しくはない。
彼女が居たのでは、カプレーゼなど食べれない。
トマト・モッツァレラチーズにオリーブオイル、少し強めのバジルが僕の好みだった。
ステーキも美味しかった。
ポイントカードもあるし、また来ようと思える店。
彼女が調べた店…。
彼女と来れば、甘いモノ中心で夕食って感じじゃなくなる。
彼女にしてみれば朝食なのだ。
そこからして僕と合うわけがない。
同じサイクルで生活している人ならば彼女と食事も楽しいのかもしれない。
よく風俗嬢はスタッフかドライバーとしか付き合えないと聞く。
それが良く解る。
『愛したい』のは僕の本音なのだろうか…。
ただ、見た目のいい女をタダで抱きたいだけではないのだろうか…。
『愛せない』のは彼女のほうなのだろうか…。
彼女が僕を愛せないのは、僕のせいなのではないだろうか…。
結局、僕は彼女に何を求めているのだろう。
たとえば、彼女が性を金に換算しているのだとしたら、僕も送迎だの食事代を金に換算しているのだろうか。
そう考えれば…納得できる。
割が合わないことで悩んでいるのだ。
そう思えれば…そう信じ込ませれば…彼女を嫌いになれるのに…。
僕は他人を嫌うことが下手だ…。
だから他人を寄せ付けないようにしている。
裏切られるのが怖いから。
恨みたくないから。
それでも…彼女の心に触れたくて指を伸ばしている…。
その指が、なぞるのは彼女の面影だけ…。
霞んだ記憶の残像だけ…。
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