第13話 信じられるということ

 僕は自分が信じられない。

 けれど…僕を信じる彼女を信じることが出来るなら…。


 理屈を捏ねるなら、そんなところだろう…。


 朝起きると眩暈めまいがする。

 時折、こんな日がある、子供の頃から目の動きに神経が付いて行かないような、視覚に脳の情報が追い付いてこないような、映像が遅れるような感覚で気分が悪い。


 僕の目は光に弱い、雪に照り返す日の光が痛いと感じる。

 痛むのだ、ズキズキと目の奥が。


 今日は送迎する約束をした。

 まだ、そんなことをやっているのか…そう思う人が多いだろう。

 イライラする人も多いと思うが、彼女との関係は変わっていない。

 僕が、どうしたいのか解らないから…なんの変化もないのは当然だ。


 変わらない…僕の彼女への気持ちも変わらない。

 ただ愛おしい。


 昨夜は久しぶりに何度もメールをやりとりした。

「手術イヤ…」

 彼女の陰部の周辺に腫物が繰り返しできるらしい。

 あまり繰り返すので手術をするらしい。

 同じことを繰り返しメールで送ってくる。

 不安な証拠だ。

 嫌なのだ…決心したものの出来ればやりたくない、そんな心理の表れだ。

 嘘であってほしい…現実を見れない。

 面倒くさい…仕事は出来るのか…など不安なのは仕方ない。


 いろんな事情で行きたくない…。

 僕にメールしたところで、何が変わるわけではない。

 でも…誰かに自分の不安を話したい。

 同じ内容を繰り返したメールが途切れた…。


 彼女は、きっといつもの客に呼ばれていった…。

 彼女が毛嫌いするストーカー客だろう。


 深夜3時過ぎ…「明日待ってるね」

 そんなメールが届いた。


 気になることがある。

 漢字に変換された文章のときは、打つ余裕があるとき…つまり待機中。

 ひらがなだけのときは…呼ばれている最中なのだろうか。


 子供の頃から、つまらないことが気になる性格だ。


 だから、何でもないことを深く勘繰る癖がある。

 深い意味は無い、けれど…。


 どちらが幸せか…いつも考える。

 金で彼女を抱ける客が幸せか、あるいは…。


 くだらないこと…幸せは個人の尺度では計れない、というか比較対象にならない。

 自分が幸せと感じれば、感じていれば、それが幸せなんだ。

 解っている。


 幸せ?


 それが僕には解らない…いつもそうだ…別れてから振り返ると、幸せだったと思うのだ。


 彼女は幸せなんだろうか…。


 それも僕には解らない…。


 彼女の行動や言動に、僕の脳は付いて行かない。


 嫌われてはいない。

 愛されているか…は解らない。


 たぶん…解るまで、僕は、こんなことを続けるのかもしれない。


 小説なら…結末をどう退く…。

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