第10話 1ヶ月
「おはよ~」
どんな顔して車に乗るのか…僕はどんな顔して逢えばいいのか…そんなことを考えながら待っていたのだが、普通にというか、いつも通りに車に乗ってきた。
相変わらずの大荷物を持って。
本当に何が入っているのだか…僕の車は一応3ナンバーで助手席のスペースは広いはずなのだが、狭く感じるほどの大荷物。
コンビニで食べきれないほどの食べ物を買い、駐車場で食べる。
変わってない。
アレ食べて、コレも食べてとパンやら、おにぎりを食べさせようとする。
彼女の顔を見るまで、なんともなかったのに…今は身体を揺するのも辛いくらいに腹が痛い。
極度のストレスだろうか…。
食欲が無い。
彼女が不機嫌になっているのが解る。
「一緒に食べようと思ってた…半分だけでも食べて…なんで食べれないの」
責める様に言う彼女。
実際、彼女はしつこい性格をしているし自覚もしている。
決めたことを曲げない。ましてや他人の都合で自分の予定を変更などしない。
僕の腹痛など、些末な事であり…僕と一緒に食事をする(同じものを半分ずつ食べる)ことが重要なのだ。
なんだかんだで彼女は普段より食べただろうと思う。
僕に食べさせるために、後これだけだから食べてと僕に差し出す。
やっとの思いで食べて、いよいよケーキだ。
彼女の為に用意したケーキ。
気に入って貰えたようで安心した。
僕にしてみれば、彼女がケーキを喜んでくれれば、それで満足だった。
「今日、ケーキ好きな子も出勤してるから、ちょっとあげるの」
「あぁ…そうしな、食べきれないでしょ1人じゃ」
きっと友達を作ることも下手くそな彼女…僕も人のことは言えないが…、友達とは言えないまでも彼女の味方になってくれるような嬢であれば仲よくしてあげてほしい。
「どうすればいい…あんまり送ってばかり言いにくいし…アタシから連絡しないほうがいい?」
僕も悩んでいた。
彼女の逢いたいというのは、きっと言葉そのままの意味だと思う。
ただ逢いたいのだ。
僕の逢いたいは…デートしたいという意味だろう。
そういう時間を作ってもらいたい…でもそれが難しいことも解っている。
僕が送れるときに連絡するという曖昧な感じで彼女を事務所へ届けた。
軽く唇を1度、重ねただけで、1ヶ月振りの送迎は終わった。
空しいと言えば空しい…。
きっと、風俗嬢と付き合いたいなんて妄想しているだけの人には理解し難い現実というものがある。
きっとお互いに目をつぶらなければならない現実というものが彼女達と付き合えば多くあるように思う。
1ヶ月振りの口づけは…そんな感じがした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます