第3話 逢える日まで…

 2日…3日、僕は彼女からのメールを無視した。

「ごめんね」を繰り返す彼女に返す言葉もない。


 逢えば、僕は彼女を抱きしめ、同じことを繰り返すだけだと解っているから…。

 また送迎をするだけの関係に…。


 彼女が僕に何を望んでいるのか…正直に言えば解らないわけではない。

 ただ言葉の通り、逢いたいのだ、彼女は…。

 僕は普通に逢いたい。

 普通に食事をして…買い物をして…たまに遊びに出かけて…そんな関係を望んだ。

 彼女は、夜に出勤して朝に帰り、再び出勤するまで眠る…。

 僕と逢う時間は必然的に送迎時間だけになる。

 基本的に毎日出勤するのだから…。

 デリヘルに出ない日はコンパニオンとして、どこかに派遣されている。


 彼女は怖いと言う。

 仕事をしていないと…お金が入らないと…不安なのだと言う。

 僕のような低所得者に比べれば、それなりの収入はあると思うのだが…不安なのだと言う。

「いつ稼げなくなるか解らないから…」

 そういう仕事なんだろう、理解は出来る。


 結局のところ、彼女の不安も…僕の不安も…突き詰めれば「お金」に行きつくのだ。

 以前の半分の収入も稼げない今の僕と…年齢と共に稼げなくなる彼女。

 宝くじでも当たらない限り、安心など得られないのかもしれないと思うと未来など、とても描けない。


「きちんと逢えるとき連絡するね、連絡先変えないで」


 そんな日は来るのだろうか…。

 僕には…僕は…どうすればいいのだろうか…。

「愛してる」だけでは、不安を打ち消せない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る