それが当然だと思っていた僕は、きっととても愚かなのだから

@niboshiikiiki

第1話

拝啓、寿司酢さん。

お元気ですか、なんていまの僕が尋ねるのが、酷く図々しいことは百も承知です。

君がいなくなってから、こんなことを言うのは卑怯だと思う。でも、戻ってきて欲しいんだ。掛け替えのない君に。

君のこと、僕は全然分かって無かったんだ。いつだって僕を輝かせる為、お客様の口の中で、脂の弾けるあの瞬間を引き立たせる為、全力を尽くしてくれていたこと、馬鹿な僕は、ちっとも気づかなかったんだ。

本当に申し訳ないと思ってる。

でも、もし、君が、許してくれるのなら……

もう一度、君と寿司を演じたいんだ。

お客様が口に入れたその瞬間、ふわって、笑顔になってくれるような、完璧な寿司を目指したい。

君がいなきゃダメなんだ。

どうか、僕に、もう一度だけチャンスをください。

マグロより。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

それが当然だと思っていた僕は、きっととても愚かなのだから @niboshiikiiki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ