第11話 彼と彼女の3本勝負
「ワンチャンある! イケルよ、これマジで!」
「やっぱ? べーわ。マジ弱キャラでここまで戦えるのスゴクね?」
ガヤガヤドンドン。
メダルがじゃらつく音や太鼓をたたく音。それに女子たちの騒ぎ声や男共の煽り声。さっきまでいた公園とは打って変わって騒がしい。一言で言うならカオス。
あと、そこの金髪。メイクイーンは弱キャラじゃないから!
ちゃんと使えばつよ、平均はあるから。技の多様さならあのゲームイチだぞ。
かーっ、ああいう
ここはお灸をすえてやりたいところだが……
「どうしたの。勝負、するんでしょ」
今はそれどころじゃない。
これから運命の対決が始まるのだから。
「もちろん。でもいいの? 制服を着るかどうか、勝負で決めちゃって」
俺はガンコンを手に取りながら隣にいる
「いいよ。二言はないから」
まるで何でもないかのように言い切ったあと、画面の説明をジッと見る。
この姿を見るにガンシューティングゲーム「モンスターフォー」をやるのは初めてみたいだ。
オーソドックスなゲームだけど、初見殺しが多い。つまりはだ、これをプレイしたことがある俺は有利!
「まぁ、このゲームで負けても次があるからね」
俺は好青年のような笑みを浮かべる。
だが、内心では、すみませんねぇ、白月さん! このゲームは勝たせてもらいますよ。とゲスな笑みを浮かべていた。
「そうだね。次のゲームを考えておいたほうがいいよ、お兄さん」
白月は普段と変わらない、いや不敵な笑みをこぼしながらそう言う。
なんだ、この自信。もしかしてやったことがあるのか。
不安が一瞬だけ胸を通り過ぎるが、
「ははは。じゃあ準備も済んだしやろうか」
サラッと流す。気のせいだろう。
「私はいつでもいいよ」
その言葉を聞き俺は赤いスタートボタンを押す。
すると――
「なにこれ、いきなりダメージが減ったんだけど」
――敵が開始早々に攻撃を始めたのだ。
その攻撃をくらった白月のライフは残り四つになる。
「あー運が悪かったね。どんまい」
「……お兄さんはライフ減ってないんだね」
ジトっと睨みつけながらそう言う。
その目線は「お前この攻撃知っとったな、ワレェ」って感じだ。
「たまたまさ」
知ってましたよ、それのなにが悪い! このゲームにプロローグはない!
俺はトリガーを引きながら
そう思うと余裕が生まれてきた。ここは一つアドバイスをしてあげよう。
「ガンコントローラーを画面外に向けて撃つと、リロードするよ!」
「そう」
白月は無言でガンコンを外に向けて撃つ。
バァーン!
リロード音が大きなゲームセンター内に響く。
なんだろう雰囲気が変わったような気がする。流石に大人気なかったか。
俺は頬を指で掻きながら、少女の
――その後は黙々とゲームを続け、分岐点までもう少しというところまで来た。
それまでにお互いライフを一つ削られたものの、実に順調だ。この分なら俺の方が長く生き残れるだろう。勝ったな。
「おっと、危ない」
ゾンビの攻撃を避けながら、俺は勝った後の未来を想像した。
大人びた格好をしている白月が赤と白のコントラストが美しいワックの制服を着る。
それを想像しただけでテンションがあがるね。うーむこれで技の痛みすら楽しめるかもな。あっそれと帽子も被ってもらおう。あれは意外にポイントが高い。
出てくるゾンビを撃ち倒しつつ、桃色未来に期待をはずませる。
「ここに出てくる敵って人間か虫だけなんだね」
今まで沈黙を保っていた白月が話しかけてきた。
お怒りは収まったらしい。というかそもそも怒っていなかったのかもしれないが。
「そうそう。次の章になると動物がメイン、その次は恐竜、だったかな」
まぁ虫にしろ、動物にしろ真っ当なやつじゃない。
よくわからんウイルスで体が変異しているものばかりだ。結構グロイ。
「恐竜が出てくるって、どういう話なの。これ。――あ、なにか出てきたよ」
そう言うと小首を傾げながら、二つの選択肢を眺める。
確か選択肢によってボスキャラが変わるはず。
「分岐点だな。画面に出てるどっちかの絵に赤いポインターを当てて、トリガーで引けば……」
俺が説明をしていると途中で白月は「ふぅん、なるほどね」と言いながら、トリガーを引いた。
「ちょいちょい、俺に相談の一つぐらいあっても」
どういうボスと戦うのかを見たかった。
久々にやるからボスキャラなんて覚えていないんだよな。
「いいでしょ。お兄さんの方が体力多いんだし」
ふてぶてしく言う白月の顔を見て確信した。さっきのことをまだ根に持っているなと。
ストーリーを順調に進めてついにボス戦。
体力は俺が一つリード。本来ならここで勝利を確信している場面だ。
けれど、俺はこの勝負に負けることを覚悟した。画面にいる敵を見て。
「白月、お前……」
「どうしたの、お兄さん。そんな青ざめた顔をして」
白月は得意気な表情をしながら、俺を嘲笑う。
勝利を確信した顔だ。
「わかっててこっちを選んだな!」
「なんのこと? “たまたま”じゃないかな」
意趣返しと言わんばかりの言葉。そして白月のこの素敵すぎる笑顔。
やられた! わざわざ煽るんじゃなかった、くぅ。
「ほら、始まるよ。がんばれ」
小馬鹿にするような声。
でもがんばれ、という言葉に不覚にもキュンとした。
だが、現実はつらい。
「いやぁぁぁぁぁあ!」
目の前にデカデカと存在するクモ!
全長三十メートルはくだらないクモが、地下道の中を猛然と走ってくる。逃げるプレイヤー二人。逃げる俺のココロ。
おかしいだろっ。なんでクモが走るんだよ! ゲームなんだし糸を使ってスタイリッシュに移動しろや、してくださいお願いします。ああ、でもそれはそれでこわい。
「お兄さんゲームの中でもクモが苦手なんだね」
「ゲームも現実も関係ない! クモはクモ! しかもこっちのはデカすぎる」
「あ、小さいのもいっぱいでてきたね」
異様な数のクモたちがボスを守るようにしてわき出てくる。
もはや悪夢だ。これが現実の出来事なら気絶は間違いなかっただろう。
俺は目をつむりながらひたすらにトリガーを引き続ける。もう勝負なんてどうてもいい。早く終わってくれ……。
「お兄さん、意味ないから。もう弾なくなっちゃってるよ。リロードしなきゃ」
「リロ○ンドスティッチ……? そんなのもあったね……あいつ好きだったなぁ」
就職するまで月一で行ってた気がする。あはは……楽しかったな……。
二人して恥ずかし気もなく耳飾りしたな……。
「なに言ってるの。ってほら、もう死んじゃうよ」
「へっ、俺はここまでだ。白月ィ、あとは頼んだ」
俺はそう言いプレイ中に三回しか使えないボムを全て投げ込む。
ボン! ボン! ボン! 楽しい仲間がポポポポーン。
「クモ公、見たか……これが俺の
「……お兄さん」
これで俺のプライドは白月に引き継がれた。
思い残すことはなにもない。満たされた気持ちを感じつつ、そっとガンコンを置く。そしてダンディな顔をしながら白月を儚げに見る。
「わかってると思うけど、効いてないから」
「はい」
そう、ボスクモはプレイヤーから離れた位置にいる。
なので射程の短いボムでは効果がないのだ! というわけでボスクモの体力はまだマックスに近い。
あと投げた場所が悪かったせいか小さいクモすら倒せていない。うーんこの役立たず。
あっいま俺のキャラが死んだ。
「はぁ、まぁこれで私の勝ちだし、もう止めてもいいんだけど」
「そんな!」
ガンコンを置こうとする手を止める。
「ちょっと……」
「カタキを! どうかカタキを取ってください! 村の皆が困るんです」
「村の皆ってだれ。それよりさ、手を離して」
その言葉を聞き、白月の目を見る。そして手を――離さなかった。
ガンコンを握る左手の上に自分の手を置き続ける。
「手を離してもいい。だが、条件がある」
威圧的に言った。
不利な状況の時こそ強気であるべし。これが交渉の鉄則だ。
「……なに」
「どうかクモを……! 村のためにクモを倒してください……!」
今度は頭をペコペコさせながら頼み込む。
キャラがもうブレブレだ。これも確実にトラウマスイッチを踏んだせいだろう。これもあれもクモが悪い!
と言っても結構楽しんでるんだけどね! 俺の一人ロールプレイに巻き込まれた白月は……
「わかった、わかったよ。ちゃんと倒すから」
「ひゃっふー!」
俺は手を上げて喜ぶ。
逆に白月は疲れきった表情が印象的だ。
あとでちゃんと謝ろう。見た目よりも付き合いがいいから、ついふざけてしまった。
「ま、私も思ったより楽しめてるから。カタキ、とってあげるよ」
白月はそう言いガンコンを素早く画面に向け、トリガーを引く――
「これで終わりかな」
その言葉の通りボスクモは死んだ。
なぜか糸を吹き出しながら。どうして最後だけゲーム的な演出なのか。
ってクモのことはどうでもいいな。それよりも白月のシューゲーの上手さだ。
結局ノーコンティニューでクリアしちゃったよ。俺にとってボス戦はワンコンティニュー前提なのに。
上手さの秘訣はあの回避能力と弾の正確さだろうか。見ていて素直に感心した。俺も真似してみるかな。反射神経は真似できそうにもないけど、射撃なら。あーでも銃はぶっぱなしてこそな気がするし。
おっと、そんなことよりも……
「ありがとう! これで村の皆が救われます!」
「まだそれ続いてたんだ」
白月は苦笑いをしたあと「どういたしまして」と返事をした。
やっぱり付き合いがいい。だけどそれとこれとは別だな。
「さっきは無理やりプレイさせちゃってごめん」
それに手も触っちゃったしと目を見ながら謝る。
「ああ、もう気にしてないけど。でも手を触ったりするのはやりすぎ」
天井を見上げたあと、思い出したように喋り始めた。
この様子を見るかぎりもう忘れていたみたいだ。さっぱりとした性格だな。男らしい、なんて言ったら失礼か。
俺はゲーセンの暖房で乾燥した髪を触りながら、弁解をする。
「わるかったな。けど目を見て本気で嫌がってないなと思ったんだ」
警察に通報されないレベルでは、と心の中で呟く。
通報されない範囲で攻めるのがプロだ!
「……そんなのわかるの? 確かに結構イヤってぐらいだったけど」
け、けっこうイヤ……思ったよりシビアな意見。
少しだけ傷つきながら、
「なんとなくね。仕事の関係でこういうのは
ちょっと自慢気に言う。俺ってば人の変化を見抜くの得意だからね。
この得意分野のおかげで社内の闘争を生き抜いてきたと自負してる。
「へぇ、そのわりにそんな格好をしてるんだね」
俺の
もうやだこの子。人の急所を突くの得意すぎるでしょ。思わず顔を隠す。どちらが大人なのかわかったもんじゃない。
「これからどうする?」
「研究所へ行くしかない」
「あ、まだ続くんだ」
ゲームのキャラクターの声と白月の声が聞こえた。
言葉から察するに、おそらく二章のストーリーパートが始まったんだろう。
「どうしようかな」
迷いを感じる声。その声を聞き俺は顔から手を離す。
あら、ライオンさん。こんにちは。目を開けるとゲームのライオンがプレイヤーを威嚇していた。俺の記憶の限りだともうそろそろ戦闘が始まる。
「…………」
横にいる白月を見る。
眉を下に落としながら、ガンコンの下部にあるヒモを握ってブラブラさせていた。推測するにこのゲームを続けるか迷っているのだろう。
迷っているのならやらなきゃもったいない!
その思いと共に俺はスーツを脱ぐ。
スーツを脱いだのは決してさっきの言葉を気にしたからではない。ない!
「ほらっ、そろそろ始まるよ」
俺はコインを投入しながら元気に話しかける。
「お兄さん?」
「なんか白月のプレイを見てたらやりたくなっちゃってさ。付き合ってくれよ」
勝負は抜きにしてと言葉を続ける。
まだ制服のことは諦めていないけど、それはまたあとでいいだろう。
「……いいけど」
戸惑った声におせっかいだったか、という考えが一瞬だけ浮かぶが――
「きたきた。せっかくだしエンディングまで行こう」
――自分の世渡り処世術を信じた。
でもこんなことをする必要はあるのだろうか。相手は取引相手でも、友達でもない。利益に繋がるわけでも、おせっかいを焼く相手でもない。
だけど、いま確かに楽しんで欲しいと思った。だからこれでいいんだろう。
「そうだね、うん。私も恐竜のシーンとか気になるし」
「よしっ、きた。それに敵も来た!」
あっ。
「お兄さんって芸人みたいだよね」
白月が俺のライフゲージを見ながらそう言った。
自分の顔をペチリと叩く。しまらねぇ……
「白月、ボム使って!」
ライオンにうさぎ、それとゾウ。
うじゃうじゃいる動物達を一気に倒すにはそれしかない。
「や、私もう使い切っちゃてるから。お兄さんが使ってよ」
「えっ俺も使い終わっちゃったよ」
「どこで使ったの……? さっきも私が使ってあげたのに」
と話しいる内に白月のキャラがやられた。
ボムを使えなかったせいだろう。
「もう、お兄さんのせいでやられちゃったよ」
「いやいやおれ関係ないから」
へいシュー! って言いながら意味なくバスケットゴールにボムをぶち込んだのは黙っておこう。臭い物には蓋である。
「げっ俺の体力もヤバイ」
残りライフがいつの間にか五つから二つになっている。
クリアをするまでは終われん。攻撃を回避しつつ財布の中を見ると、コインは一枚もなかった。両替しなくちゃ。でも俺は離れられないし……
「白月、両替してきて欲しいんだけどっ」
ガンコンのトリガーを引きながら頼み込む。
ますい、気を抜くとやられそう。
「いいけど」
その言葉を聞き、画面を見たまま長財布を渡す。
「頼んだ! なるべく早く」
「わかったよ。でも、いいの」
「なにが!」
俺はサイの角から放たれるレーザーを避ける。
色々とツッコミたい世界観だが、ツッコム余裕なんてない。
俺のライフはもう二つしかないんだよっ。
「だって財布ごとだよ」
なるほど。
俺は質問の意図を理解したあと、手早く返事をする。
「信じてる」
今までの付き合いを見るかぎり、お金を盗んだり免許証を悪用したりはしないだろう。
えんこーなんてしているけど、誠実な人間なのは充分にわかっている。
財布の一つや二つを渡したぐらいなんの問題もない。
「……そっか」
白月は淡白に答えたあと、財布をそっと受け取った。
そして小走りで両替機に向かっていく。
「転ぶなよー!」
俺は白月に向かって叫ぶ。
返事はなかった。だが、まるで返事をするかのように髪が上下に揺れる。
見慣れた黒い髪――ではない。ゲームセンターの照明が薄暗いせいだろうか。少女の長い髪は茶髪――チョコレートブラウンの色をしていた。
明るさで髪の色が変わるなんて面白いよな。学生時代にそんなカラーリング剤を知っていたら俺も染めていたに違いない。
……それにしても久々に見たな。あの髪色。いつぶりだろう、最初に会ったとき以来か? 懐かしいな。
最初といえば、騙されたなぁ。えっちできると思ったら関節技。いい子だと思ったら小悪魔。一瞬だが恨んだりもした。
だけど出会えてよかったと思う。白月と出会えてから不思議と物事がうまく回っているような気がする。仕事の調子とかめっちゃいいからな。これもひとえに土日に
「願掛け、か」
なぜだろう。俺の呟きは妙に薄っぺらく聞こえた。
願掛けのために――バイト中に声をかけて――挙句の果てにはにわざわざゲーセンで勝負。いや、遊んでいる。
たかが願掛け程度だと思っている行為ににここまで労力を費やすか……? 貴重な土日だけでなく、祝日まで消費して。
モヤモヤとする。
ぬぅぅ。生活がこれからも順調にいきますように、と思って二回、三回と白月の元に訪れたのは事実、だと思う。
だけど、これは、今日のこれは度を越している。願掛けにしてはオーバーな行為。
じゃあなんで今日あっているんだろう。考えられる理由としては、俺は運が悪い。だから幸運の女神様である白月様にたくさん会おう……的な。
バカバカしい。ないない。それなら白月に恋してるとかの方がよっぽど理解できる。
…………
「恋ね」
チョコレートのように甘く、コーヒーのように苦い感情が胸に広がる。
そして小さくぼやけた彼女の姿が頭の隅に浮かんだ。
「ないな」
両替をしているであろう白月を思い出す。
容姿は抜群に良い、性格も好みな気がする。彼女とは正反対だが。
まぁそんな白月と付き合えるなら多くの男が諸手を上げるだろう。それほどに魅力的な子だ。
だけどそんなのは関係ない。
誰であろうと今の俺は付き合えないだろう。
この胸に広がる苦さが、全て甘さに変わるまで。
「んーロマンティッスト」
我ながらオシャレな表現。
正直わからないんだよォ! 恋がどうとか知らん!
モヤモヤすることはあるけど、今は白月に恋してないのだけはわかるね! えっちさせてくれるって言ったら恋するかもだけどね!
あーもうダメ。考えすぎてただのスケベ野郎に。
俺に十秒以上も考えさせたのは誰だ! 俺だァ!
「オラァ!」
モヤモヤを吹き飛ばすためにトリガーを引き続ける。
カカカカカッ。
「あっ」
そりゃこんだけ考え込んでいたら弾も切れてますよねー。
コンティニュー!
テン!
ナイン!
エイト!
・
・
……白月、すまん。転んでもいいから急いでくれ。
「よしっ、これでクリアだな」
ラスボスである宇宙人がやっと倒せた。
こいつにいったい何枚のコインが捕食されたことか。
「なんでラスボスだけこんなに強いの」
うんざりした声で白月が文句を言う。
「だな。俺なんてこいつだけに十回コンティニューしたぞ」
「それはやられすぎだよ。あんな適当に弾を撃つから」
俺の泣ける言葉に白月はガンコンで口元を隠しながら笑った。
「笑うほどじゃあないだろ。なら白月は何回コンティニューしたんだ?」
「三回だよ。ラスボスだけじゃなくて、このゲームに使ったお金の合計ね」
「……聞かなければよかった」
「これが現実だよ。お兄さん」
ガンコンを颯爽としまう白月、力なくしまう俺。どうしてここまで差が……歳か?
い、いやそんなことより、白月があまりお金を使わなくてよかった。
俺が白月の分もお金を払おうとしたら断られたからな。「勝負じゃなくて遊びだから」と言って。
あっそうだ。あれをやっていなかった。
「白月!」
「ん、なにその手」
「ハイタッチだよ、ハイタッチ」
ゲームをクリアしたあとはこれをやらなきゃだ。
ハイタッチ……
はっ!
そういえばさっき白月が結構イヤって言ってたよな。手が触れ合うの。
学習しないバカな俺。急いで手を引っ込めようとして、
「はい。結構おもしろかったよ」
「あ、うん。それは良かった」
あれ、ハイタッチしてくれた。
てっきりダメかと思ったんだが……やってくれたなら良しとしよう。
さて、そろそろ話を本題に戻さなくては。俺は脱いだスーツを手に取ったあと、
「ふふふ、お遊びはこれまでだ。二回戦といこうじゃないか」
怪しげな笑みを浮かべる。
気分は魔王だ。
「そういえば勝負してたんだっけ、忘れてた。三本先取だよね」
「そうだ……! そしてルールとして負けた人間が次のゲームの選択権を持つ!」
今回は運悪く負けたが次は容赦しない。
これもワックの、きっとワックの制服のためだ。とにかく勝つ!
「ついてこい!」
俺は昔やり込んでいたゲームの元へ向かった――
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