第10話 生まれ変わる
生まれ変わる
初陣の敗戦から1週間。
「こんちは。勝美さん。今日から練習再開しますからよろしくお願いします。それと会長。次の試合早めに組んで下さい。よろしくお願いします」「おいおい。千里ちゃんどうしちゃったの。まだ試合終わったばっかりじゃん」「えー。とにかく早く結果を出したいんです。もう悔しくて夜も眠れませんでした」「まーそう焦るなよ」「千里。疲れは十分取れた」「もうバッチリです。トレーニングよろしくお願いします」「まーとにかくいつもの基本トレーニングから入って」「わかりました。それと勝美さん。色んなタイプの選手とスパーリングやりたいんでそっちの方もよろしくお願いします」「ふーん。随分張り切ってるわね。会長。色んなジム当たっといて下さい」「OK!了解!なんか千里ちゃん変わったね。よっしゃ今日も永ちゃんかけてノリノリで行こう」
「澤美香。いつか必ずリベンジしてやる。待ってろよ」千里は初陣の敗戦から何かスイッチが入った様だ。
人間面白いものでこの敗戦を境に千里は見る見る上達していった。
「おーい。千里ちゃん。試合が決まったぞ。今年ももう終わりだから年内は無理だったけど年明け1月23日(金)だ。これが最短だ。場所は新宿FACEだ」「よし。勝美さん。バンバンスパーリング入れて下さい」「この子どうしちゃったの」勝美も驚くほど千里は変わった。
「ねー成田さん。最近千里が人が変わった様にボクシングに熱中してるのよ。なんだか顔付きまで変わってきた」「やっぱりね。俺の思った通りだ。勝美の話を聞いてて千里ちゃんは絶対にものになると思ってたんだ。きっと化けるよ」「まーでもまだ1勝もしてないけど」「それは勝美次第だよ。本人はやる気出してるんだからさ。今度勝ったらきっともっと変わるよ」「実は私もそんな気がする」「そうだろう。なんだか段々楽しくなってきたな。俺のプロモーターの仕事もいよいよかー」「あのねー。だからまだ1勝もしてないって言ってるでしょう。気が早い」
千里は徹底的にトレーニングした。体幹も見違えるほど強くなった。それにつれパンチ力も上がった。スピードも毎日の50mダッシュのお陰でかなりついた。「継続は力なりとはよく言ったもんだわ。この子本当に良くなってきた。本当にもしかすると」勝美はほくそ笑んだ。
そして試合前日を迎えた計量。48・99㎏。リミットぴったりだ。「よし。勝美さん。お昼食べに行きましょう」「そうね。行きましょう」この子は本当に変わった。「勝美さん。今日はラーメンにしましょう」「いいけど何で」「前回はパスタでダメでしたから今日はラーメンを食べて伸びない様にします」「面白い。こんな冗談言う子じゃなかった」
試合当日。「どう。昨日はよく眠れた」「今回はバッチリです。夕飯はカツ丼にしました。お昼はカツカレーです」「あんまり体重増えると逆に動きが鈍くなるよ」「大丈夫です。今日は前回より体も軽い感じです」「そう。じゃー気合入れて行きましょう」
千里は控室で試合を待っていた。「何だろう。今回は早く試合がしたくてしょうがない。早くリングに上がって戦いたい」「よし。千里ちゃん。時間だ。行くぞ」会長が来た。今日のセコンドも会長と勝美だ。「千里ちゃん。やっぱりテーマソングは永ちゃんのラストシーンにしたから。よろしく」「もう好きにして下さい」「よっしゃ!これでずっとこの曲で行くぞ。ラストシーンはKO勝ちだ」
千里はリングに上がった。「何だろうこの感じは。何か気持ちいい。あー早くゴング鳴らないかな」「おい。勝美。なんか千里の顔。昔のおまえみたいだな」「そうですか」「あーなんかウキウキしてる顔だ。こりゃ期待出来るぞ」
「カーン」ラウンド1。
始まった。序盤から千里は積極的に前に出た。「ジャブ、ジャブ、ワンツー、ボディ」
このボディがきいた。相手の体が海老の様にうずくまる。ガードが下がった所に渾身の右ストレート。「ダウン」レフリーがカウントを数え始める。レフリーが手を振る。千里のKO勝ちだ。時間は1ラウンド1分28秒。「よし。なにこれ。超気持ちいい」千里は震え上がった。「よっしゃ。どうだ言った通りだろう勝美。これは化けるかも知んねーな。パールハーバー勝美の再来だ」
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