monthly ghost [すぴんおふぅ]

櫛木 亮

特別篇 バレンタイン大作戦

 朝は甘い香りで目が覚めた。

 

 どこか懐かしくて、子供の頃にこの香りで幸せな時間を過ごした記憶は甘く切なく。そして、儚い夢だと気がつくんだ。あの頃の、無邪気な時間を…… いつだって、ほんの少しの夢を見て揺れていたいんだ。そう思うんだよ。我儘だよな?



 


 なーにが、バレンタインデーだって?

 

 クリスマスが終わって、ニューイヤーイベントが終わって…… 各所が騒ぎ出すイベント盛りだくさんだな。もう、勘弁してくれよ。


 窓にだらしなくもたれ掛かるニールが呆れ顔で街を見下げるようにしてホットココアを飲む。


「ニール…… ココアに惚けてないで仕事してくれない?」

「誰が惚けてるって? 甘ったるい匂いで腹いっぱいなんだよ!」

「文句言ってるわりに、しっかり二杯もおかわりしてたじゃないの……」

「ティノ様……もう少し言葉を選んで…」

「聞こえてるよ……もういい……ほっとけよ」

 今日は依頼もなく、のんびりとした午後となりそうでニールはとてもつまらなそうにテーブルにマグカップをそっと置いた。

「ニール! おかわりいる? まだあるよ~?」

「もう…… けっこう……」

 部屋からひょっこりと顔を出すニアは何か忙しそうに準備している。朝からそわそわするニアの姿にシモンは微笑ましげに見ていた。


「ウィリアムさんが帰ってくるのが待ちきれないみたいだね」

「みたいですね、プレゼントをどう渡すかで眠れなかったそうですよ…… 羨ましいくらいですね」

「へえ~…… ガブリエルさんもバレンタインデーとか興味のあるんだ~ ……へーっ!」

「わざとらしいねえ…… お嬢さん!」

「うっさいわね!」

「ニール! デリカシーがないよ…… 言葉に気をつけて」

「半笑いで言うオマエも有罪だぞ!」

「有罪って…… 僕は何もしてないし、何も言ってないでしょ!」

 ニヤつくニールは、さっきよりは楽しそうにソファーに腰をかけて暇つぶしをするかのようにティノとシモンをからかう。


「ぬわあああ〜!」

 ニアの部屋から大きな音が響き、悲痛な叫び声が聞こえる。だいたいの想像は付く。ムシしよう! ムシムシ! って……ガブリエルは行くよな…… うん。


「ニア様……」

「呆れた! オマエはやっぱりか!」

「お小言は後でしょ! 心配はしてくれないの?」

 案の定、棚から落ちてきた荷物に埋もれたニアが騒いでいた。目を丸くしたニアは手を伸ばし助けを求める。呆れた顔のふたりに、ニアは微笑する。


「プレゼントの箱……壊れちゃった……」

「ニア……まだ間に合うよ! 一緒に行くから買いに行こう!」

「……ホント? シモンちゃん!」

「渡したいんでしょ? ウィリアムさんに」

「うん!」

「アタシもついて行くわ!」

 壊れたプレゼントBOXを手に、しょんぼりとするニアに腰を屈めて優しく微笑むとシモンはニアの頭を優しく撫でる。ニアは満面に喜悦の色を浮かべた。ティノは呆れた顔で溜息を漏らし「しょうがないわね」 と、言いたげな表情で賛成する。すると、一斉にニールをみんなが見た。


「なんだよ? どうしてみんな…… そんな目で俺を見るんだよ! 俺は行かねえからな? 今日はのんびりとした休日を俺は過ごすんだよ!」


「希少種」


「絶滅種」


「ネフィリム」


「シモン、それは俺も同じだろうが!」

「へへへ~」

「はあ~……」

「いってらっしゃいませ!」

「あら? ガブリエルさんも一緒に出掛けるのよ」

「……ワタクシもですか?」

「あからさまな程にオマエは顔に出すなよ? な?」

「じゃ、とびきりのオシャレして行こうよ!」

「それはダメだよ! いつもの格好でね?」

「ちぇっ…… 服もついでに見に行きたかったのにい~ケチ!」

「ケチって…… それは今度行こう? ニア、僕が約束をするから!」

「絶対だからね? ニール!」

「……どうして俺なんだよ? ふたりの話に俺を巻き込むなよ!」

 シモンまでが期待の目をこちらに向け、子供のような素振りを見せ、ニアとティノと何かを楽しそうに話している。言いたい放題のコイツらに今回も休みは潰されてしまうのかと、ニールは眉間に手をやり瞼を閉じ溜息を深く吐く。


 

 大きなショッピング・モールに足を一歩踏み入れて、人の多さに田舎育ちのシモンは眩暈を起こしそうになった。ニールはウイスキーの試飲で嬉しそうにキャンペーンガールのお姉さんと照れ笑いをしつつ高いウイスキーを手に上機嫌で談笑する。それを見たニアとティノは珍しく同じ事を思ったようで溜息を漏らす。


「あらら…… いっちょまえに女の人に鼻の下伸ばしてるよ」

「あーヤダヤダ! すんごく気持ち悪い! 売りたいから笑ってくれてるって気が付かないのかしらね~」

 ニアは、一応こう見えても、中身の年齢はニールよりも年上で女性に興味がない訳ではない。この見た目の所為で恋愛事は全て諦めているのだろう。呆れてはいても理解できない訳ではなかった。そんな中、ティノはあからさまに嫌悪感を顕にする。シモンとガブリエルは、そんな二人の会話を聞き苦笑いをして二人の後をゆっくりと着いていく。


「あっ! あの猫ちゃんのお人形カワイイ!」

「……自分だって子供じゃんか!」

「あ……ティノ様!」

「ティノ!」

 店頭に並べられている黒猫のぬいぐるみに気がついたティノは嬉しいそうに両手を上げて笑う。ニアは笑い、その後ろ姿が可愛くて軽い嫌味を言いつつも片手を口にそえ吹き出した。ティノが駆け寄ろうとして前に出た瞬間に影が見え、歩いていた人にぶつかって勢いよく倒れてしまった。


「いたたたた……」

「大丈夫?」

 ティノが優しいその声に顔を上げると、手を差し伸べる女性が見える。太陽の光で眩しくて目を一瞬伏せティノは躊躇う。


「ごめんなさい……どこかケガしてない?」

「大丈夫よ……アタシも前しか見ていなかったから、そっちはケガしてない?」

 もう一度注がれる声と差し出された手にティノ答え、立ち上がり素直に謝る。


「ティノ! 大丈夫?」

「お姉さん! うちの連れが迷惑かけたね?」

「……いえ! 私も色々と見ていて気がつかなかったから」

「大丈夫ですか!」

「お怪我はされていませんか?」

 次々に出てくる人々に囲まれ、彼女は少し困った顔をした。


「綺麗な黒髪! もしかして……侍や忍者の国の人?」

「あ! はい!」

「わあ! ボク初めてだ! やっぱりアレなの? お姉さんは『クノイチ』ってアレなの? 刀とか脇差しとかって持ってるの? あと手裏剣とかクナイとか!」

 ニアは小声で彼女に囁くと、期待と希望に胸を膨らませ、ワクワク感を募らせて目の奥に光を灯した。


「ん~……」

 彼女は笑いをこらえ、返答に困った顔で空を見つめ何かを思う。


「んな訳ねえだろうが! そういうのは架空の生き物だろ? 映画とかそういうものだ!」

 買い物を終えたニールがニアのフードを掴み、肩に顔を置き楽しそうに笑った。


「あ~ どうでしょうね〜 ……見たことないから何とも言い難いですね〜」

「な?」

「な? じゃないの! ニールはそうやって夢壊すようなこと言わなくったっていいじゃないか!」

「もう~ また空気の読めないこと言うのね……」

「お姉さん…… ケガしてねえか?」

「あ~ ……それは大丈夫そうです!」

「ん? それはって?」

「実は…… プレゼントを探しに来たんですがなかなか良い物がみつからなくって……」

「あ~! なるほど! 一緒に探そう! ぶつかったお詫びだよ」

「いいんですか?」

「いいに決まってるじゃない! で? 何を送りたいの?」

「チョコレートを……」

「チョコレート?」

「バレンタインが近いですよね、だから……」

「バレンタインにチョコレート?」

 彼女の国では、バレンタインに大事な人にチョコレートを送り想いを伝えるという習わしがあるそうだ。しかも、女性から想いを伝える日だという。ニール達は住む場所が違うとイベント事も違うのかと感心をした。


「へえ~ ……キクさんの国では大切な人にチョコレートを贈るのか!」

「どうしてチョコレートなのかしらね?」

「美味しいからいいんじゃない? ボクはチョコレート好きだよ! 甘くてどこかホッとしない?」

「単純ね、本当にお子ちゃま!」

「……いや、ニアは中身はおっさ……」

「ニールっっ!」

「ホントの事だろうが!」

「夢壊さないで!」

「チョコレートのキットあったよ! ただ……ハートのチョコの型あったにはあったけど、コレあからさまじゃない? ラヴとか書いてあるよ? これでいいのかな?」

 皆は口々に言いたい事を言い、本来の目的を少し逸れていく。そんな中、シモンがチョコレート菓子の手作りキットを手に持って、キクさんに見せて苦笑いをする。


「俺はそういうのに興味ねえなあ、チョコバーで良くないか? ヌガーのアレ美味いだろ!」

「ニールさん……」

 ニールは悪ぶれたつもりはなかったのだろう。ニールの素直なセリフにキクさんは眉間に軽くシワを寄せ、困った顔で笑う。


「キクさんごめんね? ……ニール! 謝ってよ!」

「……なんか俺だけ悪者じゃねえか?」

「正解! ニールわるものおお~」

「……悪者っていうか、余計なことを言い過ぎっていうか、デリカシーがないのよ……本当にごめんね?」

「ああ、気にしてませんから、手作りチョコレートは気持ちがこもっているから、作ってみようって思っただけですから、気にしないでください」

「じゃ! このマッシュルームの型は?」

 次にシモンが選んだ型は、可愛らしいマッシュルームの形をかたどった物だった。


「お前マッシュルームって……愛を告白するのにマッシュルームって……さすがに形良くないだろ? あからさまに……なあ?」

「……ニール、それ以上言ったら殺すわよ?」

「おい! そういうのじゃねえからな?」

 ニールの言葉にティノは眉間にシワを寄せ睨みつけると、すぐに異変に気がついた、ニールは訂正の言葉を入れた。


「そういうのって?」

「いや~! シモンちゃんがそういうの言わないでよ!」

「だから……そういうのって?」

「なんでもな~い!」

 シモンの首を傾げるのを見たティノが両手で大きくバツにして、数回シモンを遮るかたちでジャンプする。


「あの…… 大丈夫ですよ! それもカワイイと思いますよ!」

「キクさん、気を使わなくていいですよ」

「シモンさん……」

 気を使うキクさんに、自分の不甲斐なさに気がつき、シモンはしょんぼりとし、力なく返事をする。


「ボクはシモンちゃんが選んだのキライじゃないよ~? 色を変えたりするとカワイイって思ったんだけどなあ~赤ベースに白のドットとかってカワイイでしょ?」

「食べたら昇天しそうね」

「違法マッシュルーム! ……ってそれ毒キノコじゃん!」

「シンプルにトリュフとか……生チョコレートってのはどうですか?」

「無難だな〜……」

「もう…… 僕は黙ってますから…… どうせ、センスないですから」

「シモンちゃん拗ねなくても……」

 シモンは精一杯の思いで色々と物色して色々と提案をするが、ことごとく批判されて疲れたのか、とうとう仏頂面になり、棚に今まで持ってきた型を片していく。そんなシモンを見て、さすがのニアも苦笑いをした。


「おお! いいの見つけたぞ! この鳥の形とかって良くないか? 鳩は幸せの象徴だ! 俺はこれがいいな!」

「わあ! 鳩ですね! カワイイです!」

「お気に召しましたか?」

「ええ! とても!」

 ニールが鳩の型を手に嬉しそうな顔をしてキクさんの手のひらの上にそっと乗せてみせ下からキクさんの表情を覗き見た。キクさんは今まで持ってきた型の中で一番気に入ってくれたのか、目が輝いているように見えた。


「あとは…… どのチョコレートを買えばいいのかしら? こうやって見るとたくさんあるのね!」

「そうですね〜! 私の国のチョコレートとは甘さも風味も少し違うんですよ!」

 ティノの質問にキクさんは優しく微笑んで教えてくれる。まるでお姉ちゃんが出来たみたいでティノは少し照れくさくて、わざとらしく視線を外した。


「味も風味もか? へえ~ ……ちょっと気になるな!」

「そうですね…… お国によっては全く違うんです。ベネズエラ産のコレは少し酸味も合ってフルーティーです、ベルギー産が有名でまったりとした濃くもあり美味しいですよ。もちろん食べる人によって好みは様々ですし、味わった時の感じ方も違うはずですよ?」

「ガブリエルさん物知り!」

「失敗しないようにするなら…… 大きな塊で買うよりも…… そうですね、粉になったタイプやタブレットのタイプがオススメですよ!」

「どうして? 塊じゃダメなの? たくさん入ってて値段も安いよ?」

「大きな塊の場合は刻んだりするのが面倒だったり、時間も掛かってしまいますからね」

「なるほど~」

「今回はそうですね…… このタブレットにしましょう!」

「なんだか本格的なんですね~」

「慣れればそんなに大変じゃないんですよ?」

 柔らかい笑顔でガブリエルはキクさんに答え、スイートとビターの袋をひとつずつ選びニアに手渡した。


「キクさん! もしよかったら…… ウチに来て作ればいいじゃない!」

「私が行っても良いのですか?」

「ウィリアムに怒られないか?」

「ああ、ですよね〜 私は大丈夫ですよ……家で作ります! 皆さんにそこまで甘えるわけには……」

「ニール!」

「やっぱり、俺は悪者かよ……」

 騒ぎながらも楽しい時間を過ごし各々が買いたい物を購入して事務所にキクさんを連れて帰ってきた。


「わあ~ 綺麗な部屋ですね〜」

「ふふふ~ キクさんかわいい~♪」

 部屋を見渡し目を輝かせるキクさんにティノが手を添えて笑う。


「女性がひとり居るだけで部屋がぱっと明るくなるな~」

「……アタシだって居るじゃないの」

「オマエは論外だ! 俺はオマエを女だとは認めてねえよ!」

「なんですって! ってなんでニールにそんなこと言われなきゃならないのよ!」

「あ~ はいはい! そこまで~! とにかくゆっくりとしてから、どんな物を送るか考えよう! ね?」

「はあ~ いい香り~」

「お? キクさんは分かる人みたいですね〜! 本日はチョコレートとに合うように少し濃いめのミルクティーをご用意しましたよ〜! ほら! シモンちゃんとニールもお手伝いして! お客様が居るんだから!」

 その声に仕方なく立ち上がるニールはティーセットをひとつひとつ並べ、シモンはガブリエルとアフタヌーンの用意をする。二段のケーキ台の一段目には焼き菓子とサンドイッチが数種類。二段目にはプチ・フールが並べられていた。銀食器にトリュフチョコレートが市松模様に飾られ甘い香りが薫った。ティノとキクさんはテーブルの上に並べられた数々の品物にうっとりする。やはり女性はこういうモノが可愛く目に映り恍惚の表情になる。


 ひとり掛けのソファーに重く座るニールは満更でもないご様子でふたりを頬杖をつき眺めていた。シモンはその隣にゆっくりと立ち口元がほころんだ。


「なんだろうな……この光景は」

「誰かの為に気持ちを込めて何かを作るって素敵じゃない」

「ああ、そうだな……」

 何気ないこういう事が幸せでふたりはゆったりとした時間を満喫する。


 タブレットをボールに袋の2/3入れて湯せんし、50℃まで温める。ゆっくりと木のスプーンで混ぜ3人は薫りを楽しむ。

「はあ~ いいにおい~!」

「湯気や水蒸気が入らないようにして……」

「もう湯せんから外して!」

 丁寧にキクさんがボールを湯せんから外して底を拭く。次に残りの1/3のチョコレートを加え空気を含ませないようにティノが恐る恐る丁寧にゆっくりと混ぜる。


「ダマにならないように…… 混ぜる混ぜる!」

「チョコレートの温度が32℃になったらOKよ!」

 それをキクさんがパレットナイフで、そっと掬ってみる。しばらくすると固まりだし綺麗なチョコレートの輝きに3人はうっとりした。

「テンパリングしっかり出来ていますね! ブルームも見当たりません……はい、合格です!」

 ガブリエルがそっと声をかけて微笑む。その優しい声にティノが振り返り、本当に嬉しかったのか言葉よりも先に思わずガブリエルに抱きついてしまう。ニアとキクさんは手を口に添えて顔を見合わせて笑った。鳥の型に流し込み、後は待つだけ。


「出来た!」

「わあ~!」

「思っていたよりも、ずっと綺麗……」

「何? ティノ……なんか泣いてない?」

「ばっ! 馬鹿ね! 泣くわけないでしょ!」

「みなさん、ありがとうございます! これ向こうに届けに行ってきます! ちゃんと想いを伝えて来ます!」

「うん! キクさん! 素敵なバレンタインにしてね!」

 出来上がったチョコレートを箱に丁寧に入れ、リボンとカードを付け想いを込めた。それを見てティノは胸の奥が熱くなる。鼻の奥がツンとする。思わず鼻を鳴らすと、ニアが肘でティノを突きながら笑う。キクさんは満足そうに箱を手にみんなにお礼を言う。微笑むとしっかりと箱を持ち照れたように肩を竦めると、彼女の黒髪がさらさら揺れた。


「これ……みなさんにももらってほしくて……本当にありがとうございました! じゃあ、私行きますね!」

 鞄を肩にかけ、キクさんは嬉しそうな顔で微笑むと、事務所の扉を静かに閉じると帰っていった。しんと静まる部屋に柔らかな風が吹き甘い香りを残す。

 片付けに動き出すティノとニアが器に残ったチョコレートを見て何かを思いつきガブリエルを呼び耳打ちする。ガブリエルは優しく微笑むと、手際よくキッチンに道具を運び出し、その後を続くようにティノとニアがそそくさと小走りで行ってしまった。


 窓際からキクさんの走っていく姿を見届けると、ニールとシモンは残った書類に手をかける。

 しばらくすると、ティノとニアが照れ笑いをして残ったチョコレートを使ったミルフィーユをふたつ持ってきた。お店で出されるほどのカッコイイ物ではないが、ぶっ格好でも気持ちがこもっている素敵なミルフィーユだった。カスタードとホイップクリームを二重に重ね、砕いたチョコレートが散りばめられている。パイ生地に粉砂糖が雪のように振りかけられ、ハート型に飾られた赤い苺がアクセントになっているのだろう。気持ちがこもった素敵な素敵なミルフィーユだった。


「ボク達からのバレンタインの贈り物だよ!」

「ちょっとした気持ちよ……それ以上でもないし、それ以下でもないわ! 別に無理して食べなくてもいいけど……」


「わあ~可愛い贈り物だよ! ありがとう」

「なんか急に小腹が騒ぎ出した…… ちょうど甘い物を食べたいと思ってたんだよ! ありがとな!」

 ふたりは書類を机に置くと、ニアとティノに、ふんわりと柔らかく微笑んだ。



 窓の外の二月の冬の空は、春の準備を急ぐように何処からか桃色の花びらが舞う。やわらかな窓からの差し込む光が白く輝く。テーブルにキクさんがみんなにも作って置いていった鳩のチョコレートが6枚。『Happy Valentine』のカードと共に置いてあった。そのカードを手にシモンはニールに「いい季節だね」と、微笑んだ。






 **********

 はい、みなさん。おはこんばんちわ。

 櫛木でございます。


 お客様企画第二弾。バレンタインをベースにグダグダ会話劇を書かせていただきました。

 今回のゲストのキクさんはホントにアメリカに留学中の素敵な女性です。架空のアメリカを設定の地としている『monthly ghost』として、とても楽しく書くことが出来ました。(面白かったと言っても素敵な物語が書けたかとは別の話です)


 本当はクリスマス企画のお話を書く予定だったのですが、馬鹿な僕は予定を上手に入れる事が出来ずに二月になってしまいました。切腹ものですね……


 ですが、とても楽しく書けたことは本当です。本編とは関係の無いストーリーとは言え、彼等の物語にそっと入ってみたいと思っていただけた事は作者としても幸せになれる瞬間でした。本当にありがとうございました! これから本編はとんでもなく辛い話に突入しますが、またこうやって楽しいお話も書かせてくださいね?


 ※チョコレートの作り方はテンパリングを中心に書きましたが、本当はもうちょっと手間かかります。この事に関しては苦情等は受け付けません。あしからず。


 また企画を考えています! その時はまた……お声をおかけ下さいね(´ω`)

 では、素敵なバレンタインを過ごして下さいませ。

『★happy Valentine★』


 櫛木 駒

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