第4話
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とりあえず太郎は手持ちを確認した。
釣竿を模した、そう地球上でもあまりないであろう硬度の伸縮棒。
そして2種類の糸。一つはセルロース複合体。言わば蜘蛛の糸を太糸並みにしたリール。これも、地球上にはまだないはず。いや、ここにあるからあるのか。
あとはこれは、太郎も忘れていたがおそらく何かの粒子でできたらしいテグスだ。細いがしなり、忘れるほど前に意のままにつかっていたように思える。
ウエストに格納された道具で、連れてかれるところと。充分遊べるかしら。
カメが見透かしたようにいう。
「太郎さん、悪いようにはしませんよ」
そいいう言葉を吐くやつにロクなもんはいないがな。心うちだけで太郎は突っ込んだ。
「さて、参りましょう。」
とカメが言うと、面倒なのでタコにしておくがそいつの触手が複合して袋状になった。それは、太郎の半身を包み込むほどになり。太郎の頭の上に来た。それで上半身をいい方に言えば保護。悪い風に言えば拉致だ。腰元からふわっと浮く。カメがその下に滑り込む。
言葉もなく、着水、浸水した。特にこんなことをしなくても太郎には関係ないと思ったが、これが『おもてなし』と言うものか。
タコのアタマ並みの袋は臭う。
そして、今度は触手から体液を抜かれた。
「しばらくのご辛抱です、少し遠く、深いものですから。お休みください。」
「カメさん、後悔はしないんだね。」
太郎が意識を失いそうになりながら言うと、カメはとっさに返す。
「上のオーダーは絶対なのです。あなたにとっても運命を変えることになるでしょう。」
どれぐらい経ったか。
「起きられましたか?」
カメが問いかけると、また今度は首に触手が少し体液を補充した。
「よく、生き残られました。
お連れした方は、ここまでで多くがペシャンコに変わり、液がもれ、今まで生きてお連れできなかったものですから。」
「お礼と言いつつ、なかなかハードだな。」
太郎はまだ意識の薄い中で、少しかえした。
あそこですよ。竜宮と言います。
海底遺跡とも、なんともつかない不思議な建造物だった。移動するようで、足元の柱が細い。
「さて、お上がお待ちです。」
太郎は、意識をなんとか集中した。
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