37話 紫煙をくゆらす


朱に染まれば紅くなる。

しかし、どんな色でも黒が混じれば濁る。

「本当にやられたわ」

屋上で1人煙草を吸う。

「煙草は禁止ですって、未成年でしょう」

くっくっと意地悪そうに笑う安倍真理は眼鏡をかけていた。

「似合わねーの」

ふう、と吐き出した煙が陽の光に混じり空へ消えてゆく。胃にしみる煙の味が心地いい。

「よかったですね、めでたく悪役のまま会長を降りれて」

「まあそりゃバレるよな」

彼女にも見透かされていたくらいバレバレな望みを達成できた。生徒会選挙に改めて負けるという、望み。

「役員決めてんの」

「もちろんですよ、でもいろいろ教えてくださいね!先輩!」

先輩、なんて久しぶりに呼ばれた。笑顔の眩しさが眼鏡の反射と重なってさらに眩しくキラキラと光り輝いている。

悪役はようやく役職から解き放たれたのだ。そして次の悪役はーー。

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