27話 秘密


、何か知ってて入ろうとしてないよね。美東さん」

声のした方向を見上げると、会長の妹ー安倍真理がいた。正しくは安倍真理だけでなく、後ろに5人人影が見えた。そのうちの一人は先日助けて貰った蜂谷とかいう人だった。

「会長が珍しく役員を帰りたがらせるものだから、気になってつけたの」

安倍真理は嫌そうな顔をして悩んでいた。

「いいじゃんマリー。僕がいればこの子もキミも守れるし。」

蜂谷さんはベタベタと安倍真理にまとわりついては愛しそうな目で見ている。なにをしたかは知らないけれど、安倍真理は深みにきっと浸かりかけているのだろう。


「美東さん。あなたや渡利さんみたいな綺麗な人には私は穢れなき偶像アイドルになって欲しかった。はじめて見た時からずっとそう思っていた。あなたは本当にお節介だったのを忘れていた。」

悲しそうな顔で安倍真理は私に微笑む。その顔が一瞬、千冬と被って見えた

「今から選挙に立候補しない裏派閥の上位二人には軽傷を負ってもらうんだ。はやく帰って、私のアイドル。」

そう告げる安倍真理の顔が今にも泣きそうに見えた。私は堪らず抱きしめた。

「馬鹿ね。本当に馬鹿だわ。今そんなことしなくてもいいじゃない。いつか実力行使をしても私はあなたを拒絶しないわよ。」

思わず涙が溢れた。いつからか私は安倍真理に奇妙な友情を覚えていた。

「でも、約束したから、」

「そうそう、は、はやく帰ってくれないかにゃあ?なーんつって」

ゲラゲラと笑うその声は風紀委員会の補佐官、杜若かきつばた あきらだった。風紀委員会の中でも珍しい武力派の3年だ。

「杜若先輩、今日は私、美東さんを連れて帰ります。勝手になさって結構です。選挙管理委員会にはお気を付けて」

「あらららら、楽しみだったのにぃ……じゃあ残りでやるかな」

ニヤニヤと不気味な笑みを杜若先輩は浮かべていた。明日はきっと大荒れだろう。

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