25話 神のみぞ知る


「真理ちゃんを見なくなってから、立候補が予想される安倍晴香も、渡利千冬も見ないですよね。偶然でしょうか?」

偶然だったらよかったのかもしれない。真理ちゃんは何かしらの妨害を私にしてきた、と考えるのが普通だ。考えながら歩いていると、曲がり角で誰かとぶつかる。やけに雰囲気の違うその人は不機嫌そうだ。

「渡利……に、情報屋か」

「もしかして喜多副会長か、頬腫れてるよ」

「うるせえ、お前ら会長の妹を見なかったか」

真理ちゃんのことか。何故喜多が執着しているかは分からないが、やはりなにかしら暗躍しているのか。

「最近見ないの、こっちが聞きたいくらい」

「そうかよ、なら一つ忠告しとくぜ。アレには近づくな。下手したら殺されるぞ」

あの喜多がここまでいうなんて不思議だ。喜多は保健室にむかう廊下を歩いていった。


ふと、逆方向に目をやると廊下の先には妹が歩いていた。

千冬、と名を呼び近寄ると妹は醜いものを見るような目で私をみた。

「何の用事でしょうか、今から用事があるので失礼します。」

妹は役に従順だ。まるで奴隷のようなまでに役に囚われている。当然私は今の妹は何の役をしているかすら分からない。もちろん、脚本家もわからない。

「千冬、アンタはそれでいいのね」

ポツリと呟いた言葉に妹は何も返さず歩いて消えていった。その道はどこに繋がっているのだろうか。神だけが知っている

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る