24話 あと、


生徒会選挙まであと一週間を切った。

時間は刻一刻と迫り来る。

誰が立候補者で誰が立候補していないのかも、当日の演説までわからないのだろう。


「ねえ、タマ。真理ちゃん最近見かけないよね。からかおうと思ったのにつまんない」

真理、そういえばあの泣いた日以降見ていない。

「しかもさあ、部活の部長に一人も会えないなんておかしくない?」

勝手に溜まり場にした声楽部の部室のソファーで渡利千春はいじけている。するとキィ、という音と共に小柄な女の子が部屋に入ってきた。

「え、あっ、あのすみません!帰ります!」

「部員?なら私たちが帰ろうか」

荷物をまとめ部屋から出ようとすると、小柄なその子は声を振り絞った

「あっ、あの……?渡利千春さん、ですよね、よければサインをください!」

千春さんは淡々とサインを書く。私はそれを待っている。

「えっと、名前。なんだっけ」

湘南しょうなん 樹里いつき です、渡利先輩の声が好きで私、声楽部に入ったんです」

湘南、陸上部部長の妹か。まったく似ていなくて逆に清々しい。姉とは違い、とても可愛らしい顔立ちをしている。

「じゃあ、部活がんばって樹里ちゃん」

サインを渡すと千春さんと私は声楽部の部室を後にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る