23話 声


「危ないですよ、こんなの。酷すぎますよ」

静かにして、というように御石を睨みつける。ここは選挙管理委員会室。あの情報屋に劣らないデータが揃う部屋。

「お嬢、だってあの蜂谷と喜多の喧嘩ですよ」

関係ない。もし立候補者を狙うなら問題だけれども、立候補者は一人もいないのだから。

けれども、もし。そんなことになってしまっても蜂谷と喜多とかいう不良より、御石みいし ゆき。私は私のお世話係のあなたの強さを信じている。

「お嬢。言わなきゃ伝わらないっすよ。アタシはお嬢の声、好きだったのに悲しいっす」

ぐすん、と悲しんで見せる御石の頭を撫でる。人形のような私にこんな声は相応しくないと君のお兄様は言った。私は今でも声を出せずにいる。

君のお兄様が私のお姉様と結婚してもこの思いは捨てられない。私は自分の声が憎い。

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