21話 猫と犬


「すごい顔」

頬を撫でる手の体温にそっと頬ずりをする。

「猫みたい」

クスッと笑って声の主を私は見つめた。

気をつけないと手を噛んじゃうよ、なんて私が返すと声の主は、更に笑った。

「出来るものなら、していいよ。ボクには生憎飼い犬がいてね。ほら、そこ」

指先には陸上部エースの海名うみな るいが、運動場を走り回っていた。部活連合の中で現在まともに活動しているのは少数しかいない。それは裏派閥の薬問題があるからだ。汚染された運動競技は楽しくない。

「うみが何を言おうがボクはクスリがないのは困るよ。あれは息抜きなんだ。にゃんこちゃん」

陸上部部長、湘南しょうなん 三途さんずは笑う。


仕方ないですね、部活連合は武道部に纏めて貰いましょうか、なんてヘラヘラ笑うと湘南先輩は顔をしかめはじめた。

「随分えげつないねえ、安倍真理さん」

苦い顔で笑う陸上部の部長は1年の時にいけないお薬にハマりネジが飛んでしまった被害者だ。

「自室でヤるなら処分対象じゃないなら半年くらい我慢できるでしょう、部長さん」

「オーケー、オーケー。キミに勝利をささげよう。ところで物騒な懐刀ちゃん達は今日はいないんだねえ」

「脇役に刀なんていらないでしょう、主役部長さん」

彼女らは懐刀なんかではなく、ただの私の新しい友達だ。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る