19話 人形は考える

「それで。どうしようかねえ。キミの意思を聞きたい」

吹坂椿風紀委員長は私に告げる。

「さあ、長年お人形をしていたもので、意志が欠けてしまいまして。演じる役をくだされば光栄です」

私はわたしの役を求めている。

「ところで、キミはお姉さんを殺しかけていないだろうね?」

ピタリと、手が止まる。

、とはあの階段から落下した事件である。とはいえ、は関係ない話なはずだ。

「当時1年生でもない私がそんなことが出来ますか?無理だと思いますが?」

椿さんが苦い顔をする。

「そうか、風紀はキミを推さない。立候補も勝手にしたまえ」

しまった。アタシに変われば強力な後ろ盾を得られたかもしれないのに。

「今までお世話になりました。また協力していただけると、嬉しいです」

なんて私は笑顔で風紀委員室のドアを閉める。


脚本通りに物事が進めばよいのに。舞台に囚われひとつの駒になれれば、私は幸せなのに。

私はなぜ今なのか。私は、私の役でいなければいけない。全てはそう、脚本の通りにーー。

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