17話 見学
現在、この学校で多大なる権力を持つのは生徒会だが、他にもいくつかの派閥がある。
ひとつは、禁忌を犯す裏派閥。
ひとつは、吹坂双子が率いる風紀委員会。
ひとつは、人形のような選挙管理委員長が率いる委員会連合。
そして最後がまとまりのない部活動連合。
この有象無象の派閥から大多数の票を取った者が生徒会長として上に立つ訳である。
「今、部活動連合は揉めてるんだったっけ」
「そうですね、裏派閥と兼任している人が主で薬物問題が蔓延しています」
荒れ果てた部室棟の端には相変わらず小さな部室があった。そこが私のこの学校で唯一所属する声楽部。
「相変わらず殺風景。でもなんか綺麗だな」
「部員がいるからでしょうよ」
呆れた顔でタマはこっちを向く。私の知らない部員だろうな。
ソファーに座りその辺の練習中らしき楽典を見た。懐かしさと共に部活動連合の荒れ果てた環境下でまだ活動を続けていた部員が少しだけ気になった。
「練習、しに来たんじゃないんですか」
「真面目に部活やってる人をからかいに来ただけ。」
私が会長になった時に使ったのは、部活動連合だ。部活の成績別に部活動費を出すことと、部活動費の増額を組み込んだのだ。懐かしさに負け、歌を口ずさむ。
「急に歌わないでくださいよ」なんて困り顔のタマは放置しておいて、歌うのを続けた。歌は全てを忘れさせてくれる。
嫌なことも、思い出も、私という存在すら、忘れさせてくれる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます