6話 取引


押し倒される強い力に姉に征服される恐怖を感じる。″愛″という言葉を盾に姉は私の口をキスで封じた。

私は床に押し倒されたまま固まり動けない。胸を這う手が気持ち悪くて、助けを求める声もなにもでない。やめて。お姉ちゃんはこんなことしないでしょ。

チャイムの音と共にふと、視線をあげるとそこには生徒会副会長職、喜多きた 凜華りんかと生徒会役員、美東みとう 愛美あみが動じずに立っていた。

「やあ晴香はるか。君はついに妹にまで手を出すような節操なしになってしまったのかい。僕は悲しいよ」、と恰好いい喜多さんは表情を変えずに語りかけた。

「妹ちゃんの表情を見るに同意じゃないよねえ。愛美、妹ちゃんを頼んだよ」

「ええ副会長。」


美東愛美が私に近づいてくる。ー、笑顔が邪悪そのものに見える。仕切りで区切られた自室区域につくなり、彼女は矢継ぎ早に言い放った。

「会長の妹、なんてことを隠していたのね。貴女。勿論前回のこと会長に内緒にしていなかったのよね。だから私はー。あ、」?姉は一体なにをしているのだろうか。

「まあいいわ、今回は借りね。渡利わたり 千冬ちふゆを私に取り次いでくれたらチャラでいいわよ」ふふん、と楽しそうに彼女は笑う。

「借り、もう一つ作る。わたしの姉は、安倍晴香生徒会長は、何を裏でしてるの。教えて。3組だから知らないじゃ済まないの。」

「冗談じゃないわよ!教える義理なんてー」

「渡利千冬と連絡を取れるようにして、さらにデートさせればいいんでしょう?」

目を丸くした美東愛美は首を激しく振った。そうして、「不便でしょ」と告げ私の携帯に連絡先を入れて姉の部屋に戻っていった。

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