第28話 家
と、言う事で連れてこられてのは町の南東地区で、この町1番の住宅街だ。
いきなり来て大丈夫なのかと思っていたら、スルトの方で事前に準備をしていた様だ。
紹介された家は、平屋のログハウスだ。
玄関を入ると半畳ほどのスペースがあり、左手側にドアが設置されていた。
左手側のドアを開けると、広いリビングダイニングキッチンとなっている。大体20畳程はあるだろうか? 野郎3人(内1人は子供サイズ)が生活するなら十分な大きさである。
また、この両隣にも部屋があるらしい。
まずキッチンを正面に見た時の左手側。こちらは10畳ほどの部屋が2部屋ある。
次に逆方向の右手側。こっちには1部屋しか無いが、トイレと風呂がある。トイレは普通のサイズだったが、風呂が大きい。何でも前の住人が風呂に拘っていたらしく、大人3人が悠々入れる大きさなのだと。まぁ大きいからと言って全員で入る事はないけどね。
「あと、井戸は裏口から出た所に供用のがあるから、それを使ってくれ。ある程度の家具や魔道具は揃っているから、自由に使ってくれて構わない」
スルトが説明を続けていく。
リビングダイニングには家具が残っていたが、個人用の部屋には家具が無かった。
また、魔道具と呼ばれる魔石を用いた道具、照明器具やキッチンで使うコンロなどはひと通り揃っていた。
「買い足すとしたらタンスやベッドか」
「それでも全部買い揃えるよりはマシだよね」
「そうだな、後は家賃か?」
僕達はすでにここに住む気満々だ。
家賃はスルトに確認したところ、ひと月800Gで、町からの援助が半分の400G出ると言う。
因みに、キャンプ中に狩ったウサギを売った代金は1人200Gとなっていた。つまり、毎月ウサギを3羽狩れば家賃分は稼げるのである。
「どうする? 一応ここよりも大きい所も有るには有るが……」
スルトが質問をしてくるが、僕達はこの家を借りる事にした。
スルトに、ここにする旨を伝えると、笑顔で鍵を渡してくれた。
さて、家が決まれば次は部屋割りだ。
「どうする?」
「僕トイレ側がいい!」
こう言ったものは早い者勝ちだ。僕は素早く手を挙げる。
「そうなると、こっち側を俺とたけぞーか……」
「オレ左側で良いよ」
「じゃあ俺が右側だな」
あっさりと決まっていく。部屋割りってもっと揉めるもんじゃ無いの?
まぁ楽でいいけど。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
お次は必要な家具と言う事で、スルトに家具屋に案内してもらう。今日1日ずっと僕達の案内をしてくれているが、スルトは暇なのだろうか?
「さて、ここが家具屋だ」
「これはこれは、スルト様! 今日はどう言った御用で?」
なんと、出てきた家具屋の亭主がスルトを見ると急にペコペコし始めた。
やはり町長と言うのは偉いんだなぁ。
「おお、亭主息災か? 今日はこの町の専属冒険者を案内して来たんだ。悪いが、ツケで売ってくれないか?」
「かしこまりました。この町の専属冒険者様となれば喜んでお引き受けいたします。どうぞ、ご自由にご覧ください」
「と言うことだ。あまり高い物を選ぶと後の支払いが大変だぞ」
ここは出してくれないんだ。まぁツケ払いにしてくれただけでもありがたいか。
店内を見回った僕は、ベッドとタンス、ラグに作業用のテーブルと椅子のセットなどを購入した。
「それでは、こちらが総額になります。お届けは明日になりますのでご了承ください」
家具屋のオッチャンから受取った紙には、購入した家具と総額が記載されていた。
全部で1500G、日本円で15万にもなった。家具を一式揃えた経験がないので高いのか判断がつかない。
搬入が明日と言う事で、念の為にファッカスの部屋を抑えといて良かった。まぁこの気温なら床に何か敷けば寝れない事はないのだが。
その後、チヨ婆の店で雑貨を、魔道具店でスタンドなど生活に必要な物を買い込んで行った。
気が付けば周りは薄暗くなっており、アイテムポーチも小物でいっぱいになっていた。
「よし、必要な物は買えたな? それじゃ今日はこの辺りで解散だ」
「ファッカスに行かないんですか?」
「そうだな、行きたいのは山々なのだが、仕事が残っているのでな……今日は飲めないのだ。
自分が飲めないのに、周りが飲んでいるのを見るなんて拷問は受けたくないのでな、今日は大人しく帰る事にする」
気持ちはわからないでもないが……。
「それでは、明日から頼むぞ。っと忘れていた。君たちのパーティ名を決めといてくれ。専属冒険者のパーティ名が無いんじゃ格好がつかないからな」
スルトはそう言うと、歩いて行ってしまった。
なんて言うか……元気な人だ……。
「パーティ名だって……」
「とりあえず、腹を満たしてから考えよう。空腹の時は何やってもダメだ」
「ひなぞーの意見に賛成だ」
僕達は、ファッカス目指して歩き始めた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ファッカスは、今日も満員御礼状態だ。
さすが、町長が推薦する店だけのことはある。
「……おかえり、部屋は昨日と同じ所だ」
店に入ると直ぐに、アフロックが声をかけてくれる。部屋も昨日と同じらしい。
さすがに夜の店内には、ルノンの姿は無かった。余計なトラブルを避ける為だとはわかっているけど、彼女の力ならそこら辺の冒険者にも勝てるのでは? と思ってしまう。
夕飯はひなぞーが魚料理を、僕と武さんが肉料理を注文した。僕には飲み物のサービス付きで。
出された肉料理は、豚に近い味がするステーキだった。絶妙な焼き加減にクセになるソース。3食このステーキでもいい位である。
さて、お腹も膨らんだところで、パーティ名の話しになった。と言っても直ぐに名案が出てくるわけもなく、僕達はただ駄弁るだけで時間を潰してしまった。
結局、各自候補を立てて後日決める事でこの場は解散となった。結局何がしたいんだって話しだよね?
部屋へ戻ってくると、取りあえずベッドにダイブしておく。なんだかわからないが、昔からベッドを見ると飛び込みたくなる。病気かな?
このファッカス、とてもいい宿なのだが、客用の風呂が無いんだ。代わりに各部屋にタライが置いてあり、1杯までは無料でお湯が貰える。そのお湯を使い体を拭くのだ。
サッパリとしたところで、今日はお休みなさい。
翌朝、昨日と同じ様に? ひなぞーと一緒に朝食をとる。昨日は満足に食べれた記憶がないのだけれども。
今日もパンとスープ、そして卵と野菜の炒め物だ。
ごはん党だった僕でも、ここのパンは美味しいし、毎日食べても飽きない。
「おはようございます、イズミさん」
「あ~おはよう、ルノン。今日も早いね」
朝から元気な挨拶をしてくれるルノン。
昨日とは打って変わり、輝く様な笑顔だ。しかし、どこか固い。敬語だからかな?
「ねぇルノン」
「はい、何ですか? イズミさん」
うん、やっぱり。敬語と言うのはちょっと距離を感じる。
ならば、答えは簡単だ。敬語を止めさせればいい。
「これからは敬語じゃなくていいよ。シルノに話す様に話してよ、呼び捨てでいいし」
「え? でも……いいんですか?」
「いいよ~僕からのお願い」
僕はフォークを置き、ルノンに向かって頭を下げた。この子とは、お店とお客さんと言う関係よりも友達になりたいと思ったんだ。
「それじゃ……イ……イズミ?」
「うん、ルノン。これからもよろしく」
この世界で2番目の友人が出来た。
その後、武さんがのそのそと降りて来たので一緒に朝食を食べることにした。
今日の予定だが、午前中に家具屋が大きい物を運んでくれる事になっているが、午後は暇だったな。
ふむ……。
「ねぇルノン。今日の午後は暇?」
「今日? 特に用事は無かったけど……」
「服を買いに行きたいんだけど、案内してくれない?」
昨日買いそびれた服を買おうと思ったのだ。
それに洋服関係ならばスルトよりもルノンに聞いた方が正解だろう。
「服を? いいわよ、とっておきのお店に案内してあげる!」
ルノンは笑顔で了承してくれた。
お昼に食べに来た後、そのままお店に案内してもらう約束を取り付け、僕達は家へと帰るのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます