第3話 ナビちゃん登場

 気がつくと僕は何もない真っ白な空間に立っていた。

 真っ裸で。


 真っ裸でっ!?


 え? 何で? 何で真っ裸!? これはハンティングアクションゲームじゃなくてR18の大人のお兄さんが好きなジャンルのゲームだったって事!?

 どうしよう……そう言うゲームも嫌いじゃない!!


「落ち着けデブ、その醜いボディを揺らすな」


 一通りのパターンを想像していたら、聞き覚えのある声で罵られた。

 基本的に罵られているから今は何にも思わないけどねって、


「ひなぞー?」


「俺だけじゃない、たけぞーも居るぞ」


 ひなぞーに言われて後ろを振り向くとそこにはもう1人の友人が腕組んで立っていた。


「よ!」


「仁王立ちで言う事がそれかい? 武さん」


 しかし、みんな真っ裸かよ……いったい何なんだこの空間は……?


 待てよ……真っ裸の男が3人……。

 はっ! ここはもしかしかして大人のお兄さんが喜ぶゲームじゃなくて大人のが喜ぶゲームだったのか!?


 オワタ……こんなアルバイト受けなきゃよかった……。


「勝手な妄想を楽しまれているところ申し訳ありませんが話しをしてもよろしいでしょうか?」


 1人で軽く絶望を味わっていると何とも抑揚のない声がかけられる。

 何事かと思い、声のした方を向くと1人の少女が立っていた。


「初めまして私は今回皆様のチュートリアルのお世話をさせていただきますナビゲーションドールNo.001です。気軽にナビとお呼び下さい」


 ナビゲーションドールと名乗った少女は深々とお辞儀をしている。

 流れるような金髪に抑揚のない声、表情の乏しい整った顔立ちが合わさってまさに人形と表現するのが1番正しいだろう。

 それにしてもナビゲーションドールって何ぞ?

 疑問に思う事が多々あるが、とりあえず質問をしなければ始まらないだろう。


「えっとナビさん?」

「ナビとお呼び下さい」


 早っ! っていうかほぼノータイムで訂正を求めて来たんですけど!?


「バカだなぁ和泉さんは、女の子の扱いっていうのはこうやるんだよ。

 よろしくナビちゃ「ナビとお呼び下さい」……」


 武さんがなにやら言おうとしたが、僕以上の早さでしかもかぶり気味に訂正された。

 あまりの行動に武さんは項垂れている。


「まったく……おいナビとやらここは何なんだ?」


「ここはご自身の設定を行う場所です陽向様。

 設定の関係上洋服は邪魔になる為消させていただきましたが陰部は直視出来ない様処理させていただいております」


 ひなぞーの名前を言ったことにも驚きだが、確かに僕達の股間部分は不思議な光が輝いており、見ることができない。

 言われるまで気がつかない僕もあれだけどね。


「名前を知っている事はこの際置いておいて、オレ達の設定ってどういう事?」


「そのままの意味です涼様。これから皆様はイッグドラジルとい言う世界にあるムスペルという国のレビストフと言う町に行ってもらいそこで冒険者として活躍してもらいます」


「イッグドラジル?」


「ムスペル?」


「レビストフ?」


 何やら聞いたことがある様な無いような言葉が出て来た。そういうサーバーの設定なのだろうか?


「まぁいいや、その設定とやらをさっさとやろうぜ」


「了解しました。ではこちらを2回引いて下さい」


 そうナビちゃんが右手を動かすと1台のガチャが現れた。

 一体どう言う原理なのかさっぱりわからない。


「涼様からどうぞ」


 ナビちゃんが言うとガチャが独りでに動き武さんの前で止まった。

 少しためらう様な素ぶりをしたが、武さんはガチャのレバーを回し始めた。

 ガコッガコッと音がなり2個の玉がガチャより吐き出される。


「よっしゃ金玉だぜ金玉! しかも2つとも!! これは当たりだろう!」


 武さんは金色のカプセルを両手に握りしめ小躍りを始めた。

 てか武さんよ、真っ裸で金玉、金玉言うのはちょっと……。


「お、俺も2個とも金色だな」


 どうやら武さんが浮かれている間にひなぞーも引いた様だ。手にした金色のカプセルを武さんに見せると、武さんはあからさまにガッカリとしている。自分だけが当たりだと思っていたんだなぁ。


「では最後に和泉様どうぞ」


 僕は目の前の前に来たガチャをゆっくりと回していく。

 ガチャなんて久しぶりにやったけど、この瞬間が何とも言えず好きだ。


 ガコッと音がなり最初に出て来た玉は2人と違い金色では無かった。

 一瞬金色では無い事にガッカリしかけたが、その玉を持ち上げた瞬間そんな気持ちは霧散した。何故ならその玉は……、


「虹色ですね。おめでとうございます和泉様大当たりですよ」


「「何だって!!」」


 僕の手には7色に輝く虹色のカプセルが握られていた。

 ついでに2個目は金色でした。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「何だよ~オレ達が当たりだと思ったのに」


 武さんは自分の金色のカプセルを見ながらあからさまなため息をつく。


「涼様金色のカプセルもハズレではありませんよ。それでは各色の説明をさせて頂きます」


 ナビちゃんはそう言うと淡々と説明を始めた。

 今回引いたカプセルは僕達の武器とそれ用のスキルを選別するものだった様だ。


 金色が近接武器で、片手剣、大剣、ハンマー、ランスの4種類。


 銀色が遠距離武器である弓の1種類。


 赤色が非戦闘系スキルの料理、被服、鍛治、医療の4種類


 そして虹色の特殊武器1種類。

 の全部で10種類の内容だったとの事。


「何故非戦闘系のスキルが?」


「戦いたくない人もいるかと思いまして。ですが皆様無事に戦闘系スキルを当てられた様でなによりです」


 なるほど、MMORPVの様なゲームでも生産系に力を入れている人も多いものな。

 さて、それじゃ早速何が当たったのか確認しようかね~。

 一通り納得した僕達は出て来たカプセルを次々と割っていった。


 開けたカプセルの中には1枚の紙が入っているだけだった。


「スキルってこれ?」


 紙を持ち上げたナビちゃんに確認を取る。


「そうです。正確に言うとその紙に書かれている武器用のスキルが4つ手に入ります。よって必然的にその武器が皆様の得意武器になります」


 なるほどね~じゃ僕の武器はなんでしょうね~。

 僕は2つ折られた紙を静かに開いた。中に書いてあった武器は……



 魔砲



 これは楽しくなりそうだ。

 僕は書かれていた文字を読むと静かに笑みを浮かべた。


「お、オレは片手剣だってさ」


 まず武さんが自分の紙を読み上げた。

 片手剣か、なんかオーソドックスな武器を当てたなぁ。


「まぁオレってばナイト的な存在だし? ぴったりと言えばぴったりだな」


 何か妄言を吐き出した武さんは無視して、今度はひなぞーのを確認しようかね。


「ひなぞーは?」


「俺か? 俺は大剣だな」


 大剣って……両手持ちの剣って事かいな?


「あの……オレの話し聞いてる? ねぇ……」


「いずんちゅは?」


「僕は魔砲だって。字面から鉄砲か大砲的なモノだと思うけど……」


「流石虹色。俺らとはひと味違うな」


「ねぇ……話し……」


 何かブツブツとうるさい奴がいるけど、放置だな。


「皆様確認が終わりましたね。では次に参りましょう」


 なんとナビちゃんまで無視し始めた。哀れ武さん。


「それでは2個目のカプセルも開けてください。そちらが皆様の第2武器となります」


「第2武器?」


「サブウェポンの事か?」


「オレ……ナイトなのに……」


 若干1名がウジウジとしているが、全員が無視をしているのでこのまま進めよう。

 あと武さん、君はナイトじゃないよ。


 ナビちゃんの話しではこれからやるゲームではサブウェポンまで装備できるようで、今回はそのサブウェポン用のスキルまでくれるのだという。

 なんという太っ腹な会社なんだろう。まぁこれもテストの一環なんだろうけどね。


 ナビちゃんの説明を受けた僕達は残りのカプセルを開けていく。そして出た紙には、


 陽向:ハンマー

 涼  :ランス

 僕  :片手剣


 といった内容になった。


「げー武さんとかぶった……」


「なんでそこで『げー』なんだよ。俺とかぶって、うれしいんだろう? うれしいって言えよ」


 お互いの紙を見合っていると、ナビちゃんが声をかけてくる。


「さぁ次は皆様の設定になりますよ。準備はいいですか」


 ナビちゃんが取り出したのは3台のタブレットPCだった。

 設定はいいんだけど……僕達はいつまで裸なんでしょう?

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