朝のひと時

にゃあ…にゃあ、にゃあ…


吸い寄せられるかのように、声のする方へ誘われる。

姿を見せずに私を誘惑するその声。たった一言で私を虜にするその声。

何の用事で外に出たのか、そんな事はとうに忘れた。

私の心が、あの声の主を、私を魅了するあの声の源を、僅かでも目に焼きつけたいという想いに染まってゆく。


にゃあ、にゃあ…にゃあ…


どんな音楽よりも心地よく、この世の何よりも美しいその声が、身体を支配する。最早私に自由は無く、ただ誘われるままに声の後を追っていく。

恐らく、ほんの刹那だったのだろうが、私はまるで永劫の時を、その声の主を求めてさまよったように感じた。私の目に映る、貴方の美しい姿を求めて。


にゃあ、にゃあ…うふ…ふふふ。


貴方のしなやかな身体が、細い手足が、大きな瞳が、私を蕩けさせる。

私の全てが貴方に蹂躙され、溶かされ、貴方と交わりあってゆく。

もう私という存在は世界から消え去り、貴方の大きな瞳に全てが吸い込まれてゆく。

そして貴方は、軽い朝食を済ませるように、


「ごちそうさま」




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