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「やっぱり自分で入れるコーヒーとは違うね」
そんな冗談を言いながらまたパソコンに使う泉さんといるこの時間は、どうしてかすごく心地が良かった。
どうしてだろう。
つい最近まで、近寄りがたいって思ってたはずなのに。
「あの、何か私にできることありませんか?」
体は疲れていたけど、もう少しだけこの時間を過ごしていたかった。
「気にしなくていいよ」
女の子なんだから早く帰らないと危ないよ?
そう言われて、邪魔をしてしまったかな、とはっとする。
「すいません、邪魔しちゃって‥お疲れ様です」
急に恥ずかしくなって、俯きながら背を向けると、椅子から立ち上がる音がした。
「あー‥本当は猫の手も借りたい」
引き止めてくれたことがすごく嬉しくて、思わず口角が上がった。
「猫の手じゃないですけど」
カバンを下ろしてジャケットを脱ぐ。
椅子の背もたれにかけると、泉さんから紙が渡された。
「これをリスト状にしてほしい」
「顧客の一覧ですね、わかりました」
シャツを捲って気合いを入れると、2人だけのオフィスにパソコンが打つ音だけが響いた。
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